第7話(最終日)
歌内が取り憑いていたというこの少女は元々イルカらしい。話の全てを信じるわけではないが、そんな話があっても面白いと思い、とりあえず信じてみることにした。
「また遊びに行くか?」
「やー!!!」
やー、というこの声はこの子自身のものなのだろう。おそらく、あの歌声は歌内のものでこの子の声を借りただけと言ったところか。
「ややや!!!」
少女はいきなり海に向かって走り出し、そのままダイブした。俺は今まで見せなかった動きに少し驚いてしまう。
「……楽しいか?」
「やー!!!」
楽しそうに泳いでいる姿を見て、俺は昔の幼馴染を少し思い出した。
悲しみは風化する。だが、悲しみの塊が消えることは決してない。その錆が取れることも往々にしてあることだ。
それでも、生きていけるのはやはり楽しかった思い出は風化しないからだろう。
そんなことを思い、俺は砂浜に腰を落ち着ける。
少女はひとしきり遊んだ後、俺の横に座りやーという声で歌い始める。それに釣られて俺もお気に入りの曲を歌う。
「楽しいか?」
「やー!!!」
「そうか。よかった」
何故この子が幼馴染に似ているかは分からないが、おそらくこの子が人間になる時にモデルにしたんだろう。
「おまえ、元々イルカなんだってな。」
「???」
イルカという言葉が分からないのかまたもや困り顔をしていたので絵を描いてみたが、それでも伝わらなかった。どうやらイルカを知らないらしい。
最後の最後で嘘をついたのか?と思ったがあいつはよく冗談を言うやつだった。少し腹も立ったが懐かしいやりとりに少し心の重荷が降りた気がした。
「……はー!また騙されたかー!あはは!!」
「ややや!!!」
「おまえもいいように使われたな!かわいいやつだ!」
「やー!!!」
隕石が衝突するまで後3時間。
また投稿忘れてたよ、ごめんね。
最終日だけど、あともう一話だけあります。
エピローグというやつです。