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001. ここはどこ? 私は……
「ここは……船?」
磯の匂いと不安定な地面。
気が付くと俺は、帆船の上に居た。
とりあえず頬をつねってみる。
……とても痛い。夢じゃない。
直後――この身体の持ち主は『ラリー』という名前であり、ここは『アルジーヌ王国』の近海であることを思い出す。
いや、知っていた、と表現した方が近い。
自分はラリーであり、ラリーもまた自分である。不思議な感覚だ。
それにしても……意識を失う直前までは、地球の日本の関西の自宅のリビングに居たはずだが……。紙パックの安酒を十と七つ空けたところまでは記憶にある。
「……なるほど。誰かに憑依融合するタイプの異世界転生か」
どうやら神様は、自分を簡単に死なせてくれるつもりはないらしい。