○○年前の観劇感想文
かなり昔に姉に連れられて、多分東京の小劇場で現代劇に分類されるだろう何かを観ました。牢屋の中で革命家と、金持ちのゲイっぽい人の会話劇でした。金持ちが、革命家から情報を引き出そうとして逆に惹かれていくといった粗筋な気がしますが、定かではありません。覚えているのは、ベッドにかかったハンドタオルと、演劇終了後の金持ちの感極まった様子ばかりだからです。なぜなら…。
劇中、革命家はお腹を壊します。理由は忘れました。細部を見すぎて全体が把握できなくなるあれです。ともあれカッコいい俺が無様なっっという感じで盛り上がり、お金持ちが、何をお前も人間だろっと献身的にも、自分の光沢のあるカラフルなシャツを使って汚物を拭いてあげるのです。
えっっっ。
言い訳ですが、私は予習もないままに、ある時間を切り取った舞台をいきなり観たわけです。若かった私は全力で舞台の理解に取り組みました。前情報などなくても私なら理解できるはず。役柄の背景、比喩や隠された感情、伏線などを拾いきるべく、全身全霊で取り組みました。劇をほとんど観たことのない私は、現代劇のお約束の先にある、物語を感じ取れる自分を求めて前のめりになりすぎていたのだと思います。
でもいや、タオル使えや。
頭がぐるぐるしました。まず、あの服はどういう設定なのか。安っぽいツルツル化繊?高級な絹?金持ちの普段着?
高級な絹ならば献身を表すのかもしれません。しかし、水分を吸わず、押さえれば脇から広がり、結局塗り広げられるだけの作業。シワの間にたまった汚物が何かの拍子に思わぬ方向に流れて…。介護がかなり近い位置でされていたことを覚えています。
あの空間で最も貴重な布製品はタオルだった説も考えました。確か、金持ちは差し入れをしてもらえていましたが、タオルは薄汚れて見えました。閉鎖空間で長期に過ごすことを考えれば説得力があります。何枚もある服よりたった一枚の支給品タオル。そりゃそうだ。では献身度合いを低くするのは…!?
すわ伏線かっっ!!さあどこへつながる!?
待ち続けたら劇が終わってしまい、主演二人のハグです。特に金持ち、キラキラしてました。一瞬目があった気がしますが、若かったせいでしょう。そして私の鼻の奥には、下痢の臭いが残りました。
今思えば、金持ちが汚物を拭くのに適した布をとっさに判断できるわけもなく、訳知り顔でパニクりながらダメダメな介護を一生懸命した。という解釈で良いのではと思います。
恥ずかしながら、ここに辿り着くまで本当に長かったのです。ただ、すごいすっきりしたのでこの解釈で合っているのかどうか、もう一度あの劇を観てみたいと思っています。