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手紙(4)

高校生に上がったころ。

弓道部に入って、ピアノと歌の習い事をして、勉強……は最低限しかしてなかったけど。

あの状態でよくやってたなあ、なんて今更ながら思う。


それなりに頑張っていたつもりだけど、親からすると何でかお前は何にもしてない! なんて言われてしまっていて、関係がギスギスしていた。

まあ、母も仕事のストレスと、そして多分、わたしから感じ取るストレスで、いっぱいいっぱいだったんだろうと思う。


この頃に、いくつか物語を書いた。

大きな樹のそばにいて、傍らにある井戸から世界を覗いている女の子の物語。

フロッピーとかの時代だったからなあ。もうデータは残っていないや。

あれが昨年書いた物語の原型、かな。


そうそう、小さい頃からあったんだけど、いつも実家はミシミシいってた。

家鳴りってやつ?

新築で買った家だったのにね。親は建てつけがわるいんだ、なんて言って納得してくれていたけど。

最近実家に帰っても、一切ミシミシいわないんだよね、なんと。

つまりはわたしの所為だったってことなのかしら……申し訳ない、まじで。

どういう原理なのかしら。




あの時期のことは、言い表すのが難しい。

なので、簡潔に書いていくと。


忙しくしていたけど、ふと気がつくと、いつも同じ言葉が頭をよぎった。

痛い、苦しい、つらい、帰りたい、もう死にたい。

帰りたい、は支障がなかったから、学校でも口癖みたいになってたけど、それ以外は人前で漏らしたことはなかった。何かの形にしたことも。


これは高校生になってからというより、もっと昔からあったかな。でも、高校生の頃からより強く出てくるようになったように思う。

そんなことを考えてしまうことすら、いけないことだとも思っていた。

だから尚更、誰にも言えなかった。




自分の感情が、溶け落ちていくみたいに、ぼろぼろと欠けていった。

楽しい、ってやつは結構前から分からなくなっていたけど、好みにつづいて、嬉しいってのも感じることがなくなっていた。でも無表情に生きるのも感じが悪いしおかしいから、とりあえず笑っとくようにした。怒ることもなかった。悲しいってのはまだ、かろうじて残っていた。


それまでがそうだったように。

このまま生きていったら、いずれ何も感じなくなって、心が死んでしまう。

そう思った。

あれはどの季節だったかな、日本史で、ちょうど切腹の授業をやっていたことだけ覚えてる。

たぶん、高校二年生くらい。


そんな状態でこの先、生きていって何になるだろう。

そうなってしまう前に、腹かっさばいて死んでしまった方がいいんじゃないか。

真剣に考えた。一週間くらい、期日を決めて。


考えた末、結局それはしなかった。

家族も友だちも、すごく傷つくことは容易に想像がついた。

それに、今までそうしてきたように、この人生があと80年くらい続いたとしても、生きていけるだろう。

自分の我慢強さには、一定の信頼もあった。

ここで決めたら、この先ずっと曲げないとも思った。

まあ、曲げたくは何度もなってたけど……恥ずかしながら。


でも、奇妙な感覚もあった。ここで諦める方を選んでいたら、助けが来たのかも、という。

誰かに支えられ慰められながら生きるか、独りで立ち向かって克服するか。

ここは、いわゆる分岐ってやつだったのだと思う。

(ちょっと、こういうとこクソじじいって思う。正しいっちゃ正しいのかもしれないけど!)




どうして心がぼろぼろになっていくのか。

ある程度大きくなると、感覚も育つ。多少は理屈立てて考えることも、できるようになっていた。


もう高校生になるというのに、それに見合わず精神が幼い。まるで赤ん坊のようだった。

いろんなことを、敏感に感じ取りすぎるのだ。それに、つい人に触ったり抱きつきたくなったりもした。

もう少し精神が成長していたら、きっとこんなに他人の感情に敏感にならないはずだと思った。


原因として思い当たるのは、母親の願望。わたしは末っ子で、母は子どもがとても好きな人だった。

これは後になってから、本人の口からも聞いたことだけれど、母はわたしが「ずっと赤ちゃんのままでいてくれたらいいのに」と思っていたそうな。


一番身近な家族の願望。

わたしがそれを嫌だと思っても、やっぱり最も身近な人の分、影響は大きかった。

母のそばにいる内は、精神の成長は望めない。

だから、大学は実家から通えないところに。

それに、わずかな望みをかけていた。


受験で落ちたら働け、とか言われてたからそりゃもう必死でしたし。

すったもんだあったものの、志望校には割とすんなり合格した。

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