1/13
開店
「準備はいー?」
「ああ」
「いいよ」
「それじゃあいくよ、せーのっ!」
ぷわわわわわわわわん。
三つの喇叭を高らかに鳴らすのは、彩り豊かな着物姿のお三方。
何やら動物のお面を、銘々頭につけている。
淡い緑色の着物の、狸の面の幼い子どもが言う。
「ぼくは此処で、思いついたこと、片っ端からやってみよう」
そうして、すたこらさっさと駆け出して行った。
艶やかな紅色の着物の、狐面の中性的な大人が言う。
「私は此処で、のんびりしながら、好きなことをしよう」
そうして、いそいそと建物の中へ入っていった。
深い青色の着物の、兎面の若い娘が言う。
「あたしは此処で、この目を見開き耳を澄ませて、大事なものをさがそう」
そうして、そのままその場に立ち続けた。
駆け出して行った狸面の子どもが、入口に暖簾をかけた。
そこには三文字、こう書いてある。
『み せ や』
はてさて、この面々は、一体何の商売を始めることやら。
何はともあれ。
はじまり、はじまり。