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3、やっぱり偉い人達は顔が整っているものなのか

第3話です

「さぁ、我輩の膝の上に座るといい」


……いや、もうすでに座らされてますけど?

言い返す気にもならなくて、そのまま身体を預けると頭を撫でられた。

あの後、長い廊下を歩いて客室のような所に連れてこられた。


「先程、呼びかけたのでな。もう少ししたら来るであろう」


私をここに連れてくるまでに呼びかけた素振りは一切なかったのに、そんなことを言う。

そして、その言葉のとおりに数分後、客室の扉が開いた。


「遅くなり、申し訳ございません」

「いや、気にするなランディー」

「おぉー……」


謝罪とともに現れたランディーと呼ばれた人物は、思わず声が出てしまうほど綺麗だった。髪は金と銀が合わさった色をしておりこの部屋の証明に照らされキラキラと輝いている。瞳は赤いが血の色というよりもアル様のように宝石みたいだ。例えるならルビーかな。

容姿は中性的で、声さえ出さなければ女性と思うほど繊細な雰囲気を持っている。

ぽけーっと口を開けて眺めていると、目が合った。


「して、陛下。そちらの子どもは?」

「あぁ、皆が揃ったら話そう。腰をかけるといい」

「かしこまりました」


私を見ながらソファーに座る男性。

なんか、ちょっと居心地が悪い。

もぞもぞとアル様の膝の上で動くと「くすぐったいぞ」と頭を撫でられた。

……さっきから子ども扱い。いったい何歳に見えているのだろうか。

考えていると、バンッと扉が壊される勢いで開かれた。


「うははは、俺様参上!陛下!何のようだ!」

「騒々しいですよユクト!大人しくなさい」

「おぅふ……」


なんだかさっきとは別の意味で声が出た。

いや、ブサイクとかそういう訳ではなくて、顔はすごく整っている。アル様やランディーと呼ばれた男性にも負けていない。身長は190cmくらいだろうか。着崩された軍服のような服を着ており、捲られた袖からは鍛え抜かれた筋肉が見えている。そして、灰色の髪と同じ色の獣の耳、そして、尻尾が生えている。金色の瞳が獣のようにギラギラと輝いている。

そして、「俺様!」とか自分で言ってしまうほどの馬鹿さ加減。見た目はせっかくカッコイイのに、頭が小中学生並みだと思うと残念だ。

獣耳男がドサッとソファーに座るとそれを見計らってランディーと呼ばれた男性が話す。


「陛下、ナフィードとヴィラスティンは人間界に行っているためここには来れません」

「分かった。では、2人には先に話しておこう。アルト、自己紹介はできるか?」

「はい」


アル様に言われたので立ち上がろうとすると、腰をがっちりホールドされてて無理だった。見上げてみると、「ん?」と微笑むだけだ。このまま自己紹介しろってことか。

恥ずかしいが仕方ない。姿勢を正して、ひと呼吸したあと口を開ける。


「はじめまして、アルトといます。魔王アルグラッセ様に保護されました。今日から魔王城でお世話になります。ご迷惑をかけるかも知れませんが、よろしくお願いします」


一気に話したが、反応が一切ない。アル様もピタリと私を撫でていた手を止めている。

…何かまずいこと言った?

恐る恐る前の二人を見てみると、ぽかんと間の抜けた顔で私を見ている。


「あ、あのぅ…?」

「あぁ、いえ。アルト…さん、アルトと呼んでも?」

「えっと、はい」

「ではアルト、私はランディーです。ディーと呼んでも構いません。それで、質問ですが貴方は一体どこから来たんですか?」

「それ、は…」


アル様にも答えられなかったこと。勿論、この人にも答えられない。

私が悩んでいるのに気づいたのか、ランディーさん…ディー様は「やはりいいです」と言った。


「アルト、貴方にはあなたの訳があるのでしょう。貴方の心の整理がついた時にでも教えてください」

「……はい」


柔らかく微笑み、少し腰を浮かせて私の頭を撫でてくれた。

大人しく撫でられていると、獣耳男が空気も読まずに叫びだす。


「陛下!このガキはなんだ!?陛下に子どもでもできたのか!?」

「五月蝿いぞ。我輩の子どもなわけがないだろう。だいたい、お前はこのような特徴の女を魔王城で見たことでもあるのか?」

「あー、それはないけどよー」

「だったら大人しく話を聞け。アルトは我輩の部屋のベットの上に何者かによって転移されてきたのだ」


その言葉にディー様と獣耳男が息を呑む。


「おいおい、それは本当か!?」

「ひゃいっ!」


ガシッと私の方を掴んで揺さぶる獣耳男。すぐさまアル様に引き剥がされ、ディー様に頭を叩かれた。


「乱暴に扱うでない!」

「子どもになんてことしてるんですか!」

「だっ、だってよぉ」

「だっても何もありません!」


お、おぉ。美人が起こると迫力があって怖いものなんだ。

見ているこっちまでビビってしまう。


「大丈夫ですか?」


獣耳男に向けていた怒りとは反対に心配する様子で私を振り返るディー様。

驚いていた私はコクコクと頷くことしか出来ない。


「陛下。いったいどういうことかご説明して頂けますか?」

「説明したいのは山々なんだが、我輩にもわからんのだ。そして、それはこのアルトにも答えることが出来ぬのだ」

「そうですか。それなら仕方がありませんね。ナフィード達には後で私が報告しておきましょう」

「あぁ、頼む」


恭しく礼をするディー様。


「あの、アル様、ディー様。私ってどうしたらいいんでしょうか」

「自由にして良いぞ。幸い、我輩には妃も子もいないのでな。存分に甘やかしてやる。父親だと思って甘えるがいい」

「では、私も。独り身ですしね。このような可愛い子を陛下が独り占めなんて羨ましいですから」

「……」


うぁぁ、やばい。照れる。こんなカッコイイ人が私の親代わりだなんて…。

赤面してアル様の胸元に顔を隠すと、クスクスと2人に笑われてしまった。

そのまま顔を隠していると、獣耳男も騒ぎ出す。


「それならこの俺様は、お前を甘やかしてやろう!俺様はユクトリス!俺様のことはユクト様と呼ぶがいい!」

「よろしくお願いします、ユクトリスさん」

「なんで俺様だけ愛称じゃないんだ。しかもさん付けだと?」

「ユクトにはそれで十分だと思いますけど」

「あぁん?」


私そっちのけで喧嘩が始まる。それを眺めていると、アル様に抱えあげられる。


「では、話は終わったので我輩たちは昼食にする」

「え?」


思わずきょとんとすると

……ぐー。


「うぅぅ……」

「アルトも空腹だと言っている」

「…言ってません」

「言っただろう。あるとの腹の虫が空腹だと」


何も言い返せない。

ディー様とユクトリスさんに笑われながら、客室をあとにするのだった。

4話は明日か明後日の夜になると思います

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