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2、いきなり現れた童

第2話です

……はぁ。つまらぬ。最近は事務的な仕事ばかりをこなしている気がする。


「何か面白いことは起きないものか」


ひとりでに呟くが今現在、我輩のいるこの部屋には他に誰もいないため返事が返ってくることもない。

つまらん。

そして、カリカリと書類に目を通しサインすること30分。いきなり、我輩のベットの上に何か黒い物体が音を立てて落ちてきた。


「何事だ!?」


驚き、手に持っていたペンを投げ捨てそう叫ぶ。

危険なものの場合を考え、身体に結界を張り巡らせ、近くにあった護身用の剣に手を伸ばす。黒い物体は動く様子はない。

警戒しながらも近づくと…


「すぅ…すぅ……」


象牙の肌に黒い髪の童が無防備に眠っていた。


「なんだ。どうやって城の結界を抜けたのだ」


あまりにもこれまでの生の中で見たことがない容姿のためか、子どものためか、警戒を少しとき手を伸ばせば触れれる距離まで近づく。


「……んぅ」


顔に触れてみるが、くすぐったいとでも言うように身をよじるだけ。暗殺者とでも考えたが、違うようだ。いや、我輩の油断を誘っているのかもしれない。

ともあれ、無害にしろ有害にしろ起きなければどうしようもない。

どれ、少し観察でもしてみるか。我輩は仕事をほっぽりだし童の寝顔を観察するのだった。


◆◇◆◇◆◇


寝息をたて、幸せそうに眠っていた童は数分後、目を覚ました。閉じていた瞳は今は開いており、美しい黒曜石のように煌めいている。そして、やはり、我輩の知らない特徴の種族だ。

怖がらせぬようにと柔らかく微笑み、


「やぁ、坊ちゃん。気分は如何かな?我輩、周りからは魔王と呼ばれておる。名はアルグラッセという。気軽にアルとでも呼んでくれ」


驚いたように息を呑む童。

魔王という言葉に驚いたのだろうか。


「それで、坊ちゃんは一体どこの誰かな?」

「…分からない」

「分からないとは?」

「いえ……」


8つか9つ程の童としてはしっかりとした言葉に受け答え。

しかし、自分が誰なのかわからぬとは…不思議に思っていると、


「名前は、あると…です」


か細いながらもよく聞こえる澄んだ声でそう答える。

どうやら偽名ではないらしい。我輩の自慢の嘘を探知する魔法に反応がない。

少し安心し、頭を撫でる。


「そうかそうか、アルトというのか。我輩と似たような名前だな。これも何かの縁だ、よろしくな」

「えっと、はい。よろしくお願いします……アル様」

「おや、アルと呼び捨てで構わんぞ」

「それは…」


やはり魔王だからか、呼び捨てはできない模様。


「まぁ、別にどちらでもいいがな」

「あのぅ、すいませんがここって何処なんでしょうか」

「む?先程言ったであろう。我輩は魔王だと。つまりここは我輩の住処。魔王城じゃよ」


不思議なことを聞くものだ。魔王が住んでいるのだから魔界にある魔王城しかないだろう。


「そっ、それで私はどうしてここに……」

「さあなぁ。我輩にもわからんのだ。アルトはいきなり空中から現れたのだからな」

「えっ?」


やはり、ただの童か。しかし何故だ。例え高位の魔術師とて我輩の結界を破るのは難しいはず。しかも、魔界のどこかならいざ知らず、我輩のベットの上に落とすとは。

それに、理由も知らぬとは…何かに巻き込まれでもして偶発的に我輩の元に来たのか。

わからぬ。わからぬことが多すぎる。

童…アルトも不安な様子。


「私…死んだんじゃないの?」


考えていると、少し物騒な言葉が聞こえてきた。


「痛い」


そして、おもむろに自分の頬をつねっている。


「どうかしたか?死んだとは?なんでそんなに悲しそうなのだ?」

「そっ、れ…は」


一瞬、苦しそうな顔をするアルト。

これ以上聞いてしまえば、壊れてしまうかのような危うさがあった。

……仕方がない。


「まぁ、答えられんならそれはそれで構わん。気が向いた時でもいい」

「…はい」

「ではアルト。行くところはないのだろう?」

「そうですが」

「ならば此処に住むがよい」

「いいんですか?」

「よいよい、子どもが気を使うでない。我輩も自分に子ができたようで嬉しいのでな」


少しでも安心出来るように抱き寄せ、頭を撫でてやると、ほっとしたような、安心したような顔をした。

ひとまず、魔王城にいる幹部達に報告せねばな。やることがいっぱいだ。


「はいっ!」


元気のあるアルトの返事を聞き頷く。


「では、我輩の部下に紹介といこうか」

「はいっ!……って、えっ?」


一瞬、戸惑ったような声が聞こえたが今は時間が惜しいため、気にせず抱きかかえ歩き出す。


3話は頑張れば今日投稿できるかもしれませんが、明日になるかもしれません。

3話は主人公視点です。

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