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1、気がつくと目の前に魔王が一人

なんだか頭がふわふわする。夢かな?夢だろうな…だって、今、私の目の前には…


「やぁ、坊ちゃん。気分は如何かな?我輩、周りからは魔王と呼ばれておる。名はアルグラッセという。気軽にアルとでも呼んでくれ」


……魔王がいるのだから。


◆◇◆◇◆◇


「すーちゃん。明日は花火大会だね」

「ふふっ、うん。楽しみだね」


今日は高校の一学期の終業式があって、明日から夏休み。そして、ちょうど明日は町内で夏祭りが行われる。

私は、友達の菫ちゃんと一緒に祭りをまわる約束をしていた。


「待ち合わせは…いつものあの公園でいいよね?」

「うん。じゃあ、また明日。あっ、浴衣絶対に着てきてよ?」

「えぇー?私に浴衣なんて似合わないでしょ」

「もう、そんなふうに言わない!あっちゃんは可愛いんだよ?」


照れてそんな事を言うと、真面目な顔で「可愛い」と言われてしまった。

自分で言うのもなんだけど、私は可愛いとは思わない。どちらかと言うと男の子みたいと思う。

身長は150cmくらいだけど、声は女の子としては低めだし、髪はかろうじて女の子らしくしようと肩と腰の間くらいの長さに伸ばしてポニーテールにしてるけど、顔立ちも男の子っぽい。髪の長さだけが私を女の子として成り立たせていると言っても過言でもないかもしれない。


「あはは、女の子らしくないのは分かってるからお世辞なんていらないよー」

「まったく、私があっちゃんにお世辞いってどうするのよ?」

「どうするんだろうね?」

「はぁ。じゃあ、甚平でも構わないわ」


んー。甚平なら地味なものもあると思うし…。


「うーん。…それなら、まぁ、いいかな」

「じゃあ、決まりね!」


なんだか嵌められた気分。


「てことで、またねー!」

「はいはい。さようなら」


菫ちゃんと別れて帰路を急ぐ。

…あー。夕焼けが綺麗だな。

鮮やかな色の夕空を眺めていると、キキーッとブレーキを引く音が思ったよりも近くで聞こえた。顔を向けると、近くにトラックが…。

そして、身体に強烈な衝撃が当たり、そのまま私の意識はシャットアウトした。


◆◇◆◇◆◇


そして、目が覚めると冒頭に戻る。


「それで、坊ちゃんは一体どこの誰かな?」

「…分からない」

「分からないとは?」

「いえ……」


不思議そうに首を傾げる魔王。髪は深い青、瞳はアメジスト色で宝石の様な綺麗な輝きを秘めている。そして、額には2本角がはえている。

……やっぱり、夢だよね?だって、目の前に魔王がいるなんて現実ではありえないし。それに、この魔王の見た目はどう見ても人間ですらないし。……まぁ、魔王なら当たり前かもしれないけど。


「名前は、あると…です」


夢なら気にしないようにしようと、名前を答える。

すると、魔王はニコリと柔らかく微笑み私の頭を撫でた。


「そうかそうか、アルトというのか。我輩と似たような名前だな。これも何かの縁だ、よろしくな」

「えっと、はい。よろしくお願いします……アル様」

「おや、アルと呼び捨てで構わんぞ」

「それは…」


流石に、貴族のような物腰で私よりも年上で顔も整っているし、だいたい魔王に呼び捨ては気が引ける。


「まぁ、別にどちらでもいいがな」

「あのぅ、すいませんがここって何処なんでしょうか」

「む?先程言ったであろう。我輩は魔王だと。つまりここは我輩の住処。魔王城じゃよ」


おぅふ。まさかのラスボスの住処。


「そっ、それで私はどうしてここに……」

「さあなぁ。我輩にもわからんのだ。アルトはいきなり空中から現れたのだからな」

「えっ?」


……どういうこと?というか、さっきから夢にしてはリアル過ぎる。肌に感じる布の感触。時折、開いている窓から風にのって香る花の匂い。

もしかして、現実?でも、私はあの時確かにトラックにぶつかったはず。


「私…死んだんじゃないの?」


あの距離であの衝撃。あの痛みが嘘であるはずはない。


「痛い」


頬をつねると、痛みを感じる。やっぱり、夢じゃ…ない。ということは、現実。


「どうかしたか?死んだとは?なんでそんなに悲しそうなのだ?」

「そっ、れ…は」


言えない。死んで気がついたらここに居ましたなんて。口が裂けても言えない。


「まぁ、答えられんならそれはそれで構わん。気が向いた時でもいい」

「…はい」

「ではアルト。行くところはないのだろう?」

「そうですが」

「ならば此処に住むがよい」

「いいんですか?」

「よいよい、子どもが気を使うでない。我輩も自分に子ができたようで嬉しいのでな」


ぽんぽんと私の頭を撫で慰めるように抱き寄せる魔王…もとい、アル様。

見た目は20歳後半くらいなのに失礼かもしれないけど。お父さんみたいな安心感がある。


「はいっ!」

「では、我輩の部下に紹介といこうか」

「はいっ!……って、えっ?」


あまりにも唐突なことに頭がついてこず、抱き上げられても抵抗すらできなかった。

2話は魔王視点です。

今日か明日には投稿します。

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