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前世の記憶





   私の両親は「毒親」だった。



    

本当は本当は私が生まれていなければ父親と出会わず他の人と出会っていれば、少なくとも母親は普通のイイ母親だったのかも知れない。けれど、もしもなんてない。もうどうしようもない。


家族にさえ仕事の様に人を巧みに操り丸め込み、恐怖で支配してきた父親。


馬鹿みたいに父親に振り回されて私達に八つ当たりして泣き続ける母親。


母親の本性を私より早く見限って父親と母親と穏便に生活することを選んだ、綺麗で男の子好きで母親にそっくりで自分の事しか考えていない姉。



そしてあんな風になりたくないと思っていてもなってしまっていた私。



私は成績が良かった。最初は只褒められるのが単純に嬉しかった。大体の事は何だって出来た。どんどん周りの人たちの目が変わっていった。期待と嫉妬と尊敬の目は小学生の私が一人で背負うのは重すぎた。誰にも相談できなかった。期待と尊敬の、目は嬉しかった。嬉しくて頑張った。いつしかどんどん良い成績を取る度に苦しくなった。一度挫折したら誰も私の事なんかいなかった事にする気がした。怖くて怖くて皆があの3つの目でしか私を見ていなくて辛かった。


誰か私を見て欲しかった。もとのワタシを。



私は少しでも逃れるために好きだったピアノも下手なふりをしてやらなくなった。何も出来ない姉の為に母親が私のピアノの教室のレッスンを遅らせている事も知っていた。ニコニコ笑って気付かない振りをした。女の子らしい格好だってやめて体型だって変えて全て差し出した。

でも勉強だけは捨てたくなかった。周りの嫉妬の目はそれを許さなかった。追い抜かそうと睨みつけてくる。別に悪い事じゃない。そんな事知ってる。勿論知ってる。勉強が出来なくなったら皆私の事を忘れる。大丈夫。ちゃんと守った。それでも皆私に嫌なゾッとする目を向けてくる。

姉は私を憎み、努力だって最後まで認めてくれなかった。最初は褒めてくれていた母親も不憫な姉を気遣い私を突き飛ばした。父親と母親の喧嘩だって「勉強以外出来ない私」のせいになった。



誰も助けてくれずにそれどころか他人としか見ていない事も知った。

私が何をした?そんなに悪い事を私はしたのか?こんな風な扱いをするのなら産まないで欲しかった。

私は人間だ。

やめて。そんな怖い目で私を見ないで。誰か助けて。ワタシを見て。私を見ないで。

そう心の中で叫んだ。誰にも言えなかった。そう言っていれば私がもう少し上手く立ち回れていれば、少しでも私は…………考えても考えても今でも分からない。




私の中で何かが切れた。両親と姉を憎んだ。家族なんて言葉は口にもしなくなった。周りの奴らが嫌いでよく怒る様になった。人を馬鹿にするようになった。冗談が上手くなった。嘘が上手くなった。感情の起伏が激しくなった。人のせいに全てする様になった。

               本当の事が言えなくなった。


いつしか気付いた。私が憎くて堪らなかった両親や姉と同じになってしまっていたことに。


精一杯生きてきたつもりだ。常に戦ってきた。結局は何も変わりはしなかったけど。こんな自分から逃れたかったけれど無理ではないかと思う度に辛くなっていった。

後悔なんか無い。


頬にあたたかい何かが伝った。…………何これ?手でそっと拭うと透明でペろっと舐めるとしょっぱい。私は泣いていた。寒空の下で冷たいコンクリートの上で私は立っていた。靴はドアの前に並べられていた。大勢の人が私を見上げている。ゆっくりと手すりを離した。私は何をしているんだろう?変に落ち着いた気持ちといつの間にか屋上まできてしまった自分がいる。

もうこのまま楽になりたい。そっと自分の中で声がした。私の人生はこれで締めくくられていた。


少しずつ傾いてきた上半身が風に乗るように手すりにくっついた。

本気で何してんの?私?今まで精いっぱい生きてきたのに、なに終わらせようとしてんの?私。

でも何も変わらなかった。でしょ?もういいじゃない。本当は心の整理だってついているでしょう?

自棄になった様にばっさりとホントウノワタシが言う。

ああ、そうだ。そうだった。何も上手くいかなかった。もう疲れた。



ふっと全てのしがらみが解かれた様に私は手すりを離した。重心を前に乗せる。




でも私は何で、どうして、泣いていたんだろう?もしかして私は…………




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読了お疲れ様です!そしてながらくお待たせいたしました!


…………これはちょっと暗いお話になってしまいましたね…………

次からはもとに戻ります!…………新キャラ出せるかな?って感じですが頑張ります!

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