村人Aで未来を変える!?
『そして、お姫様は王子様に想いを伝え安らかに眠っていった…』
「なんだよこれぇ!…ッめちゃくちゃ悲しいじゃねぇかよ…!」
俺の名前は森田来。就職もろくに出来ず絶賛ニートnowだ。そんな俺は、とあるゲームをやっていて、その話が悲しすぎて号泣していた。
「なんでお姫様死んじゃうんだよー!こんな物語おかしいだろ!」
このゲームに対して、感動の思いと同時に悲しすぎる終わりを告げたことに怒りの気持ちも出ている。
「こんなのダメだ!俺がいればこの物語は必ずハッピーエンドだ!」
そう言った途端、画面が光り始めた。
「……っ!?」
俺は眩しさのあまり手で目を隠した。
光が収まり、俺は目を開けた。
「ようこそ森田来様。まずはキャラクター設定を行ってください」
俺は何が起きているのか分からず、何も言わずに周りを見た。そこは真っ暗で、自分の前にゲームのキャラクター設定でよく見る【男・女】が表示されている。
「森田来様。キャラクター設定を行ってください」
妖精のような女がそう言う。
「キャラクター設定って。まずここはどこなんだよ!?」
俺の焦りとは逆に、女は無表情で答える。
「ここはあなたが先程行っていたゲームのキャラクター設定画面です」
「な、何言ってんだよ…!」
「あなたが望んだことをやったのです」
「望んだ…こと?」
「はい。あなたは先程、自分がいればゲームを変えられる。とおっしゃりました。それを実際にやってもらおうということです」
「た、たしかにそうは言ったが、あんなの本気で言ったわけじゃない!今すぐ元に戻してくれ!」
「それは不可能です。この世界に入ってしまったらもう戻ることはできません。しかし、」
女は一度話を止めて、俺の前に来て言った。
「このゲームをハッピーエンドで終わらすことができれば、あなたは元の世界に帰ることができます」
女はそう告げて定位置に戻った。そして、キャラクター設定を行うようにともう一度言った。
俺はどうすればいいか分からずに、その場で固まった。
ここで立ち止まってても意味ないんだよな…。なら、やるしかないのか…?
俺が判断に悩んでいると女が告げる。
「こんな所で長い間いるとゲームのハッピーエンドは不可能になります。つまり、あなたが元の世界に戻ることはできなくなります」
「はぁっ!?」
くそっ…。やるしかねぇのかよ…。
「やればいいんだろ!」
俺は【男】のボタンを押して、キャラクター設定を始めた。
「名前はライでいいかな…」
無事にキャラクター設定を終え、職業選択の画面になった。普通のゲームは、騎士や魔法使いなど様々な職業が表示される。しかし、今俺の前に表示されている職業はただ一つ。農民だ。
「おいお前。これバグってるぞ。なんで農民しかねぇんだ?主人公と言ったら普通王国兵士をやるだろ?」
女は俺のほうを向いて答える。
「このゲームにバグは存在しません」
「じゃあなんで農民しかねぇんだよ。俺は王国兵士がやりたいんだ。主人公が農民っておかしいだろ」
「いつからあなたは主人公になったんでしょうか?」
「は?何言って…」
俺が言い切る前に、女は続けて言う。
「あなたは主人公ではありません。あなたは、村人Aとして、この世界を変えてもらいます」
「はぁ!?村人!?そんなんじゃこの世界を変えることなんて出来ねぇだろ」
村人A。特に何も特殊能力を持たない人。人狼で言う市民だ。
「そんな簡単に未来を変えられるゲームなどありません。ですからあなたにはこの村人という職業でこの世界を変えてもらいます。それではあなたのことをサポートするために妖精の「ミク」をお供させましょう。それでは…」
女は勝手に話を進めて暗闇へ消えていった。
『セーブするファイルを選んでください』
「うわっ!びっくりした…」
「ライ様。セーブするファイルをお選びください。セーブすることによってそのセーブ地点からリスタートすることができます」
ミクがそう言う。
俺は、とりあえずファイル1を押した。
『それではゲームを始めます』
そう表示されて、またしても光に包まれる。
光が収まり、俺は目を開ける。
俺は知らない家の知らないベッドに横になっている。
「どこだ?ここは」
「ここは宿です。ここで寝ることによって体力を全回復させることができます」
俺は起き上がり部屋のドアを開ける。
「おぉ、起きたね」
宿のカウンターにいるおばちゃんが言う。
「体力も無事に回復しているね。よかったよ」
「体力?」
「ご説明が遅れました。体力は自身から見て左上にあります。緑ゲージがHP、青ゲージがSPです。緑ゲージがゼロになることで死んでしまいます。死んでしまった場合、ファイルからロードして、その地点からスタートとなります」
「なるほど…」
「もし、そこで生き返りたい場合は、生命の泉を消費して復活することができます。最初に生命の泉を10個お渡ししておきます」
自分の前に
『生命の泉を貰いました』と出た。
「アイテムを使う場合は、右側にあるバックの絵をタップして、アイテム欄から、使用を押してください」
俺はたくさんの説明を受けたあと、宿をあとにした。
宿の外に出た後俺は今いる村を歩くことにした。そして、数分歩いてあることに気づく。
「ってここ!主人公が最初にいる村じゃねぇか!」
俺はその事を思い出し、主人公が最初にいるであろう場所に向かった。そこにはこの物語の主人公である「フォグナ」がいた。
フォグナはストーリーを進めているのか、村をウロウロとしている。俺はそのフォグナの後を追った。最初のチュートリアル的なものをクリアし、フォグナは村を出た。
ここからは敵が普通にいる場所だ。俺は周りを警戒しながらフォグナのあとをつける。数分後、フォグナは最初の敵であるスライムとの交戦を始めた。
「こんくらいの敵はすぐに倒してくれるだろ」と俺は思っていた。しかし、フォグナはいきなりピンチに追いやられ、死んでしまった。
「は…え…?」
ぴょこっとミクが出てきた。
「言い忘れていました。この世界のキャラクターは全て弱く設定されており敵は強く設定されております。なので弱いはずの敵でも負けてしまう可能性が高いのです」
「なんだそのクソ設定…」
「簡単に未来を変えられると思わないでください」
ミクはそう言ってまた消えていった。
俺はここからどうすればいいか分からず、周りを警戒しつつメニューを確認した。
「くっそ…ここからどうすればいいんだよ」
俺は必死に解決策を探した。
「おい、ミク。どうすれば過去に戻れるんだ?」
ミクがひょこっと出てきた。
「はい。まず、右上のメニューを開いてください。そしたら、【ロード】という項目があると思うので、そこを押してください。そして、自分が戻りたいセーブデータを押してください。それで、その時間と場所まで戻ることができます」
ミクは説明を終えるとすぐに消えていった。
俺は先ほど言われた通りの手順を行い、元いた街まで戻った。