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1:それはいつもの月曜日、になるはずだった。


 いつもと同じ「ちょっと憂鬱(ゆううつ)な月曜日」が始まるはずだった。

 休み明けってだけでも気持ちが重くなるのに、月曜日は体育と数学がある。さらに今日は日直。黒板を綺麗にしたり、日付を変えたり、学級日誌を職員室まで取りに行ったりしなければいけないのだ。あと宿題のノートの回収とかプリントの配布とか。はぁ、憂鬱。


 そんな気持ちのまま、あたし、こと横倉(よこくら)彩乃(あやの)は教室のドアを開ける。すると……。


「遅いぞ彩乃ぉ~」

祐奈(ゆうな)ちゃん! と、春花(はるか)ちゃん」


 窓際の席から手を振っているのは瀬尾(せお)祐奈ちゃんと山本春花ちゃん。

 祐奈ちゃんとは幼稚園からの付き合いで、春花ちゃんは2年になって最初の席順で隣同士だったことから意気投合した。親友って言葉はどこか嘘っぽいけれど、そんな、友達以上に仲良しな関係でいられたらいいな、って思ったり。

 ただ、この間の席替えであの2人が窓際、あたし1人が廊下側、と離されて……3人の輪からあたしだけ抜け落ちかけているような、そんな気もする。体育の授業で2人1組のペアを組まされる時なんか、絶対に祐奈ちゃんと春花ちゃんで組んでいる。最近の体育が憂鬱なのはそのせい。


「早いねー」


 でもそんなモヤモヤは顔には出さない。

 そんなことを思っているなんて知られたら、きっと2人とも離れて行ってしまう。


「うん、春花ちゃんと本読んでた」


 あたしに向けて、祐奈ちゃんが本の表紙を見せる。

 本を読むためだけに早く来る? どうにも他に用があるようにしか見えないけれど、本人が明かさないのに根掘り葉掘り聞くのも……と中途半端に開けた口を閉じ、あたしは本に目を向ける。

 『学校の七不思議』。うわ、それってホラーじゃん?


「うちの学校にも七不思議ってあるんだよ、って」

「あったっけ」


 生返事を返しながら、あたしは黒板消しを2つ持って窓際で(はた)く。日直の仕事は待ってくれない。朝は1分1秒が貴重なのよ。

 そんな気合いのこもった一打は、白いチョークの粉を煙みたいに舞い上がらせた。あろうことか顔に向かって飛んでくる。


「知らない? 誰もいない図書室で聞こえる話し声とか、歩き出す人体模型とか」

「開かずの門とか果てのない廊下とか」

「校内をさまようウサギのモクジィの霊とか!」


 2人は顔をつき合わせて笑っている。いいな。すっごく仲良さそう。

 あたしは綺麗になった黒板消しで黒板を拭き直し、端に今日の日付と日直の名前を書き入れる。


「あれ? そう言えば大輝(だいき)は?」


 日直は2人1組。

 もうひとりの日直である佐々木大輝の姿はどこにも見えない。


「朝練」


 祐奈が意味ありげに(あご)をしゃくる。

 窓の外に目を向ければ、校庭でボールを蹴っているサッカー部の姿。新入生だろうか、とんでもないほうに飛んで行くボールもちらほら。

 うん、朝練は大事よ。ちょっと早く来すぎちゃったあたしにも非はちょこっとくらいあるわよ。

 でもなんで延長してるのよ。朝練って言えば日直が免除されると思ったら大間違い。放課の黒板消しは全部あいつにやらせてやるんだから!


「……日誌取ってくる」


 意味ありげに顔を見合わせる2人に不審なものを感じながらも、あたしは職員室に向かうべくドアに手をかけた。


 その時だ。


 ドーン! と大きな音がした。床が揺れた。エレベーターに乗った時みたいにフワッと浮いて、ギュウッと押し(つぶ)される。


「地震!?」


 あたしは思わずその場にしゃがみこむ。

 まさか蹴りそこなったサッカーボールが校舎に激突! って、その程度で揺れるようなヤワな校舎だったらそっちのほうが怖いけれど。


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