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彼が世界を救うまで  作者: 愛坂歩夢
第2章「僕らの世界」
14/14

14.危険な能力者?

「それで、情報屋によるとその能力者ってどんなやつなの?」


茜はまるで戦闘を心待ちにしているかのように生き生きとした顔で聞いた。


「ええ。どうやらその能力者もこの街に住んでいるみたいなんだけど、あんまりいい噂は聞かないみたいよ。」


「というと?」


要は真剣な顔で聞いた。


「街のヤンキーやガラの悪い奴らを片っ端からボコボコにしてるとか、女の子を思いのままに連れ歩いてるだとか、どんな外見かはわからないけどとんだ野蛮人ね。」


カエデははぁ、とため息をつく。


「才賀さんも情報屋のとこ一緒に行ったんだよね?他に何か有力な情報はなかったの?そいつが出没するところとか!」


茜が興味津々に聞くと、健の方も怪訝そうな顔をする。


「うーん、それがね。出没するところっていうか、、情報屋さん、家を教えてくれちゃったんだよね。」


「「・・・は?いえー?!」」


健の言葉を聞いて、みんなは口を揃えた。


「その、危険な能力者の家ってことですか?!」


要が咳払いして健に聞き直すと健は頷いて言う。


「ああ。そうなんだ。全く情報屋さん、いつもは大雑把なのに、今回はこんな情報量が多いとは思わなかったよ。」


「ともあれ、そこまで情報をもらったからには行かないわけにはいかないわ。情報屋も私たちが能力者を調査してその情報との対価として、いつも情報をくれるんだから。」


「おおっまじっすか!!じゃ、今から行っちゃいますか?オノデラもいることだし!」


「えっ?!今からですか?」


なぜか総司と茜は顔をキラキラと輝かせている。


「うーん、確かに小野寺くんがいるのは何かと都合がいいかもしれないわ。もし本当に危なくなっても、こちらに分があるしね。」


「やっりぃ!!じゃあ早速行こうぜ!」


「でも大人数で家に押しかけるのは流石に目につくから、できれば3人くらいがいいわよね。」


「えー!あたし行きたい!!」


「オレも!オレも!」


茜と総司は2人して手を挙げてカエデにアピールしたが、カエデは2人の顔を見て少し呆れた顔をした。


「ちょっと、2人とも?戦いに行くわけじゃないのよ?これはあくまでも調査なんだからね。」


「えー!でもカエデさん、そいつ危険なんですよね?やらないとこっちがやられますよ!?」


茜が念押しするように言うと、見兼ねた健がある提案をした。


「わかったわかった。じゃあこうしよう。前衛と後衛に分かれて行こう。」


「前衛と後衛?」


「ああ。場所を知ってるのは俺とカエデだけだから絶対どちらかは行かなければならないし、要くんにもきて欲しい。そうなると、アカネと総司のどちらかってことになるだろう?」


「ええっ!あたしが!!」


「ああん?そこはオレだろ!!」


2人のいがみ合いを余所目に健は話を続ける。


「そこでだ!みんなで行くとして、家の前まで様子を見に行く3人と、後ろの見張りとして3人に分かれて行く。現実的に考えて1番良いのは、俺と要くん、そしてアカネの3人で前衛を。カエデ、総司、ケイの3人に後衛を任せようかな。」


「え〜なんでオレが後衛なんだよ!!」


「総司はすぐ手がでるからな。危険なもの同士を直接的に合わせるわけには行かないだろう。」


「なんだと!才賀コラァ!!」


「あーもー!総司くんうるさいわよ。みんな、健くんの案で行くことにしましょう!前衛は頼んだわよ、健くん。」


カエデの目線に健は力強く頷いた。

こうして、探偵事務所の一行と要は、例の危険な能力者の家に行くこととなった。





「こ、こ、こ、ここーー?!」


茜は口をあんぐりと開ける。前衛を務める3人の前に現れたのは、明らかにお金持ちの家ということがわかる豪邸だった。


「ああ。確かに住所は合っている。情報屋も行けばすぐにわかるって言ってたから、おそらくこの家が・・・」


「それにしても大きいですね。、、というか、ここまで来てどうするんですか?都合よく出てくるわけでもないだろうし。」


「そんなの!この門を叩いて呼び出すに決まってるじゃない!」


「はぁ?そんなことしたら他の家族とか出てくるかもしれないだろ?」


「じゃあどうするってのよ?何かいい案でもあるっていうの?え?小野寺!」


「いや、それは・・・」


茜に問いただされて要は言葉を詰まらせた。確かに家の前まで来たからといって都合よく能力者が出てくるはずもない。そんな作戦すら立てていなかった自分たちに、みんな少し呆れているようだ。


「アカネの言う通りだな。何も策を立てずに来てしまったのが行けなかった。とにかく今日は場所がわかっただけで収穫じゃないか?」


「それもそうですね。じゃあ今日は諦めて帰りますか。」


「え〜門破らないの〜?闘わないの〜?」


茜は駄々をこねたが、健も要ももう帰ろうという気持ちになっていた。健が少し離れた場所にいるカエデたちに戻るという合図を送る。そして、門を後にしようと来た時、要はあるものを見て固まった。


「・・・え」


「小野寺?どうしたの?行くわよ。」


茜の問いかけが聞こえないほど要は固まってしまった。要が見たもの、それは表札だ。


「桐崎、、って、、いや、まさかな」


その立派な表札には、"桐崎"という文字が彫られていた。それを見て要が思い出したのは、紛れもなく"桐崎海斗"のことであった。彼もまた能力者であり、要が思う印象はとても危険なものだ。それもあって、どう考えても危険な能力者が彼のことを言っているようにしか思えない。


「おい、誰か来るみたいだぞ!」


健の声で要は我に返った。どうやら門の向こうから、人の気配がしたらしい。その直後、ゴン!という音とともに、ゆっくりと扉が開き始めた。和風の造りで重そうな扉だが、そこは手動ではなく恐らく操作によって開く仕組みなのだろう。ゴゴゴ、、という音を立てている。誰かが出て来ることを察した3人は咄嗟に塀に隠れる状態になった。要はゴクリと唾を飲んだ。要の予想が正しければ桐崎海斗が出て来てもおかしくはない。身構えて門が開くのを待つ。


「出て来た!!あいつが・・・?!」


門が開き終わり、敷地の中から出て来た人影を、3人は食い入るように見た。しかし、要は見覚えのあるその人物に首を傾げた。出て来たのは桐崎海斗ではなかったのだ。


「ん・・?あれって・・・。」


要は呟いて、目を凝らす。どこからどう見ても要がよく知る人物だ。見間違うはずがない。確信した要は、タタッと塀から出てその人に声をかけた。


「美空?!」


そう、その人物は美空だったのだ。


「へっ?!要くん!どうしてこんなところに・・・?」


美空はキョトンとした顔で首を傾げる。


「いや、それはこっちのセリフだよ!この桐崎って・・・」


海斗のことを聞こうとしたのだが、その会話を制して茜が飛びかかる。


「ちょっと、小野寺!!誰よこの女!ま、まさかこの子が危険な能力者だっていうの?!そしてその能力者とどうして知り合いなのよ。こんなJKと!」


「え、えと・・・」


茜は興奮した様子で美空を指差したが、美空の方は何が何だかわからないといった感じだ。


「アカネ!落ち着けって!!この子は危険な能力者なんかじゃないんだよ。勘違いだ。」


「でもこの家から出て来たってことはそういうことなんじゃないの?!」


「あ、あの!!要くん、よくわかりませんがこの方達は、、?」


「ああ、色々説明するから一旦事務所に戻ろう。アカネも、いつまでも威嚇してないで早く行くぞ!」


「な、なによ!!威嚇なんて別に」


美空が戸惑うのも無理はないと思った要は、一旦みんなに説明するため、探偵事務所に戻ることにした。カエデたち後衛組はあまり事態が把握できていないようで、とくかく美空を見て驚いているようだ。


「ちょ、オノデラ!!誰だよこの美少女!お前、彼女いないくせに、こんな可愛い子と・・・!」


「小野寺くんどういうこと?この子が例の能力者?」


総司もカエデも、いきなり家から出てきた美空に興味津々という感じだが、ケイはあまり興味がなさそうにしている。ともあれ事務所について、要は美空のことを説明することにした。しかし美空が海斗の家から出てきたことの方が要にとっては気がかりなことだった。





「は、初めまして!私、西ノ宮美空と申します。実は私も能力者なんです。人の思考を読み取る能力で、、とはいってもそんな悪いことには使っていないので、ご安心を!」


「俺も美空とは1、2カ月くらい前にあったんだけど、能力のこと何もわからない俺に色々教えてくれたんだ。だから美空は危険な能力者なんかじゃないよ。」


要は美空の自己紹介に少し付け加えた。一応みんなも美空が危険ではないことをわかってくれたようだ。


「そうだったの。いきなりアカネが飛びかかったりして悪かったわね。私は松原カエデ。松原探偵事務所のリーダーよ。思わず他の能力者に会えるなんて嬉しいわ。よろしくね、美空ちゃん」


「はい!よろしくお願いします。」


「キミが例の能力者じゃないってことはわかったけどさぁー、なんであの家から出てきたんだ?あそこに住んでるの?」


総司が素朴な疑問をぶつけた。それは要が1番聞きたいことでもあった。


「そもそもあれは美空の家じゃないだろ、、で、美空!どうしてあんなところにいたんだ?表札に桐崎って書いてあったけど、まさか・・・」


美空は少しだけ黙り込んだが、言いづらそうに話し始めた。


「そう、なんです。あそこは桐崎海斗くんのお家です。といっても、桐崎くんに会うのは2回目でしたし、私も何が何だか。」


「まさか、桐崎に何かされたのか?!能力を使って何か命令されたんじゃ」


「あ、いえ。お家には無理矢理連れて行かれましたけど、能力は使われなかったですよ。私が目を合わせなかったからというのもありますけど・・・」


美空は、桐崎家に連れて行かれた経緯を説明した。要はとりあえず良からぬことに巻き込まれたわけじゃなかったのかと安心したが、それでも美空を利用しようとした海斗を許せない気持ちになった。美空の話がひと通り終わると今まで黙って聞いていた茜たちが今度は美空に聞く。


「ふーん。まぁ美空?だっけ。あなたの言い分はわかったけど。話を聞いた限り、その"桐崎"ってやつが例の危険な能力者ってわけね。それであなたはそいつと仲良いの?」


「いえ、仲がいいわけでは・・・」


「でも恋人のフリをさせられたんでしょう?無理矢理とはいえ、何もなければそんなの断ればいいじゃない!」


少しきつめに言い放った茜とは反対に、総司は美空をフォローする形となった。


「いや〜そいつ怖いんだろ?なかなか断れないよなぁ優しいんだよミソラちゃんは、アカネと違って。」


「な、なによ?!総司!あたしが優しくないっていうの?ええ??なんとか言ってよ小野寺!」


「え、俺?」


茜と総司は仲が良いのか悪いのか、口喧嘩をし始めたら止まらないようだ。2人を止めれる人といえば、カエデか健くらいだろう。そんな2人を見兼ねたカエデが場を制す。


「まぁまぁみんな落ち着いて!とにかくその危険な能力者と知り合いだなんて、すごい収穫じゃない!話からして小野寺くんも知っているんでしょう?」


「あ、はい。俺も会ったのは一回だけですが、、かなり危ない感じのやつでしたよ。」


「あの、それなんですが、、彼が見境なしに一般人を傷つけているとはどうしても思えなくて。何か理由があるのかなって。」


「どうしたんだよ、美空。この間まで、あんなに危ない、危ない言ってたのに。」


「いやぁ、少しお話しして見て、そこまで悪い人でもないのかなと思いまして」


美空は先ほどの海斗を思い出しながら言った。無理矢理巻き込んだことをしっかり謝ってくれたこともあり、美空には海斗が完全な悪人とは思えなくなっていたのだ。


「どういう心境の変化だ?」


要は、美空がついこないだまで危険だと言っていた人のことを急に擁護し始めたので、ジト目で怪しんでみた。つまりは少しだけ嫉妬していたのだ。そんな要の気持ちに美空は気づくこともなく会話を続ける。


「とにかく、もし探偵のみなさんが、何か危ないことをしようとしているなら、それはやめてほしいです。」


美空はカエデに向かって強い目で訴えた。カエデは少し驚いた表情を見せたが、その後嬉しそうな顔をして言う。


「美空ちゃん、私たちはただあなたたち能力者に協力してほしいだけなのよ。決して利用したり、危ないことしたりしない。約束するわ。あなたみたいな綺麗な心を持っている人に会えて良かった。」


カエデはそういうと、この探偵事務所のことや、モミジのことを美空に伝えた。美空は終始真剣な眼差しでカエデの話を聞いていた。


「私、何も知らないのに勝手なこと言ってすいませんでした。そんな理由があったなんて、、私にできることがあれば何でもおっしゃってください!できる限り力になりたいです。」


「それは良いのよ。ありがとう美空ちゃん。じゃあ早速お願いしちゃおうかしら。」


「な、何でしょうか?」


「例の桐崎くんに会わせてほしいのよ」


カエデのその言葉を聞いてそこにいたみんながカエデを振り返って見た。まさかここで桐崎の名前を出すとは思っていなかったからだ。


「おい、カエデ!本当に会うのか?話を聞いていた限り、危ないやつなんだろ?」


健が心配そうに聞く。


「大丈夫よ。私は美空ちゃんの勘を信じるわ。きっと彼もわかってくれるはず。美空ちゃんがいればね?」


そう言ってカエデは美空にウインクをして見せた。美空の方も一瞬戸惑いを見せたが、カエデの表情を見て、嬉しそうに頷いた。


「はい!私がんばります!!」



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