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彼が世界を救うまで  作者: 愛坂歩夢
第1章「世界を救ってくれないか」
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1.予兆

毎日が退屈だ。


小野寺要おのでらかなめは最近、こう思うことが多くなっていた。


要は昔からこういう性格だった。

中学、高校では成績は上の下、高校で入ったバスケ部でも経験者を差し置いてスタメンになった。

彼は、器用だったがどこか冷めていた。勉強も部活もはじめは楽しかったが、ある程度人よりできる、というところまで行くとあきらめてしまう。学校の先生や親からも、要はやればもっとできる子なのに、とか、どうして本気にならないんだ、とかいろいろ言われてきたが、そんなことは自分が一番聞きたいことだった。

むしろ、どうしてみんなそこまで本気になれるのだ、とさえ思っていた。

ゆとりの特徴、と言われてしまえばそれはそうだが、本気になれない自分の性格含めて自分なのだから、過大評価されるのはあまり好きではなかった。


大学に入った時も最初は期待を大きく膨らませていたが、今ではなんとも思わなくなった。

大学1年生のころはまだマシだった。初めてやるアルバイトや広い校舎、広い教室で受ける授業。それに大学生の自分、というレッテルが相まって大学生は楽しいと感じていた。しかし、そんな時期はあっという間に過ぎてしまった。2年生になってからは何をしに大学に行っているのかよくわからなくなってきていたのだ。


例えば、「今からみんなでカラオケ行くけどかなめも来るだろ?」

と、友人の井上誠いのうえまことが声をかけてくることは1年のころからよくあることだが、最近はそんな友人との付き合いも億劫だった。


「悪い、今日バイトだわ。また誘って」


要はそう井上誠の誘いを断って大学を後にした。

バイトというのは事実だが、もしなかったとしてもあまり乗り気にはなれなかった。

関東も梅雨入りしたと今朝のニュースでやっているのを思い出して、こんな憂鬱なのは最近の雨のせいかもな、と考えながら電車を待っていた。

バイトまでまだ時間あったので一旦家に帰ることにしたのだ。


実際、要は大学に入ってから部活やサークルにも入らずただアルバイトをしているだけだった。

そのため友人もあまり多くはなく、高校時代からの友人である井上と井上つながりで知り合った友人が数人いるだけ。

同じ学部で挨拶交わすぐらいの人は何人かいるが、決して友だちなどとは呼ばない仲の人がほとんどだ。

最初はちゃんと出席していた授業も、最近では何かと理由をつけてサボり、出ても寝ているだけで大学がつまらないとさえ感じていた。


「なんか、楽しいことないかな〜」


とぼやきながら電車を降り、帰路へと向かう。今日もあいにくの天気で、傘をさしながら細い路地へと入った。家までの近道なのだ。


痴漢から救った女が下り坂45のカナちゃんだったらそこから恋が始まったり

突然未来からタイムリープしてきた少女に出会って時空を超えて冒険したり

目が覚めたら異世界に転生してたり


、、なんてな。そんな妄想を膨らませながら狭い道を歩く。


あ、あれもいいなあ。

自分だけ特別な異能力が使えたり、、、



"ほんとうかい?"



「え?」


確かに誰かの声が聞こえた気がした。

しかし、見渡しても人の気配すらない。

そもそもこんな時間にここを歩く人なんて彼くらいなのだ。

気のせいか、疲れているのかもしれない。

そう思うことにして、家に帰った。


その日、アルバイトを終えて家までの帰り道で、彼はその路地を通りかかったが、使わないことにした。怖いものが苦手なわけではなかったが、何だか気味が悪いと思ったのだ。


しかし、そんな考えとは裏腹にまた声が聞こえた。


"オノデラカナメ、

僕と、取り引きをしないか?"


ハッとして、路地の方を振り返ると夕方の時とは違い、そこには少年が立っていた。

もう6月半ばだというのに厚手のコートとブーツを身につけ、頭にはフードを被っていてよく顔が見えない。


「誰だ、あんた」


そう問いかけると、少年はパッと顔を上げた。綺麗な銀髪に中性的な顔立ち、そして、人とは思えないほどの漆黒の瞳。

その目に見られるとまるで吸い込まれそうな感覚に陥った。少年は話し始めた。


「僕の名前はラルフ。

カナメ、君は毎日退屈そうだね。

どうだい、僕と取引をしてくれたら君の生活に少しは刺激が加わるかもしれないよ」


ニッコリと笑ってそう言ったが、目は笑っていないように感じた。


「いや、そもそもお前何で俺の名前知ってんだ?あと、考えてることも、、(まさかこいつ俺のストーカーか?!)」


「知っている、というよりわかるんだよ僕には。君は選ばれたんだ。僕らの世界を救ってくれないか?この力を使って。」


「(何言ってんだこいつ、ただの厨二病か)

悪いけど、付き合ってる暇ないから帰るよ」


そう言い放って路地を後にしようとすると、

ラルフは微笑を浮かべ呟いた。


"ありがとう、じゃあ任せたよ"


次の瞬間、

眩い光とともに雷に撃たれたかのような衝撃をくらった。




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