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#002「口達者」

@八番街

内海「うわぁ、緊張してきた。やっぱり、明日にしようよ」

内海、磯村の方を向く。

磯村「何でだよ。気象観測史上まれにみる記録的寒波が吹き荒れる中、こうして駅までやってきたんだ。何もせずに帰ったら、何のために寒い思いをしたのか分からないじゃないか」

内海「それは、そうだけど。だってさ」

磯村「だってもへってもない。いいか、周りをよく見ろ。みんな自分の用事で手一杯だろう。な? 誰も真面目に聞いてやしないし、誰も俺たちのことを知らないんだから、意識しなくて大丈夫だって」

磯村、内海の背中に手を当てる。

磯村「やればできるから。失敗とか成功とか気にしなくて良いから、ドーンと構えてやっちまえよ。ホラ、前を向け。いざとなったら」

磯村、両手で肩を掴み、内海を通路側に向ける。

内海「逃げれば良い、だね? もし、僕だけ捕まっても、磯村くんに唆されたって言うから」

磯村「勝手に言えばいい。時間稼ぎしてないで、さっさと始めろ」

内海「アァ、エホン。――ご通行中の皆さま。お勤めお疲れさまです。内海です」

磯村「磯村です。二人合わせて」

二人「磯海苔です。どうぞ、よろしく」

内海「僕たちは、奈良県は吉野郡の十津川村というところの出身なんですけれども」

磯村「皆さん。土砂災害くらいでしか全国区のニュースにならない、あの十津川村ですよ」

内海「自虐は結構。今日は皆さんに、自己紹介がてら、奈良の魅力について案内してまいりたいと思います」

磯村「コンビニ無し、スタンド無し、スマートフォンとは何者だ。俺、こんな村嫌だと思って出てきたくせに。魅力なんかあるか?」

内海「ありますよ。奈良盆地、紀伊山地、大和高原、吉野川。自然豊かで長閑な日本の原風景が広がってるじゃありませんか」

磯村「県内の南側三分の二は秘境だからな。仙人には住みやすいかも」

内海「仙人でなくても住みよい場所ですよ。緑に囲まれた、広々とした村です」

磯村「広さだけは認める。琵琶湖や東京二十三区がスッポリ収まる面積だもんな。ダーツの矢が刺さりやすい」

磯村、内海を見る。

磯村「第一村人、発見。これは、都市伝説級の超激レアモンスターだ」

内海「ディスカバリー対象を間違えてるよ、磯村くん」

磯村「でもさ、内海。俺が思うに、他県民が奈良と聞いてイメージするのは、県内の北側じゃないか? 大仏とか、鹿とか」

内海「たしかに、真っ先に浮かぶのは、東大寺や奈良公園だろうね」

磯村「まぁ、仕方ないけどな。何を隠そう、奈良県民は全員、父親が東大寺盧舎那仏像で、母親がシカ科シカ属ニホンジカ種ホンシュウジカだからな」

内海「デマカセを言うんじゃありません」

磯村「そして集団を見ると、修学旅行生か外国人観光客かと思ってしまう」

内海「それは、半分当たってるかな。寺社仏閣や古墳があちこちにあって、国宝や重要文化財が徒歩圏内で拝めるのは良いことだよ」

磯村「でも、全体的に地味なんだよな。滋賀と同じで、薄茶けてて、年寄り染みてる」

内海「滋賀県出身の人が聞いたら、怒られるよ」

磯村「怒りの矛先は京都だろう。良いトコを横取りされてさ。近江大津宮も平城京も、平安京より先に出来たっていうのに、プレ都扱いしやがって。そういや、三都物語から奈良が外されてるのも気に食わないな。百歩譲って京都と大阪は良いが、神戸に都は無かっただろう?」

内海「まぁね。でも、観光地としてのブランド力に欠けるんだよ。改善していかないと」

磯村「奈良と滋賀でタッグを組んだら良いかもな。鹿並みに多いトビタくん。奈良漬け以上に臭い鮒寿司」

内海「古都を巡るツアーを開くのは良いアイデアだと思うけど、インパクト勝負すぎない?」

磯村「お茶漬けにすると、臭いが軽減されるらしいけどな。あ、そうだ。あえて宇治茶を使って、京都人をもてなそう」

内海「それじゃあ、ただの嫌味だよ」

磯村「お早ようお帰りやす。シェー」

内海「そっちのイヤミじゃないよ。ケッタイな京言葉まで使ってさ」

磯村「舞妓はんとちゃうからな。流暢には喋られへんのどす」

内海「京都出身の人にまで怒られるよ。いい加減にしなさい」

二人「どうも、ありがとうございました」

内海「あ、駅員さんだ」

磯村「逃げるぞ」


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