#000「コンビ結成」
@居酒屋
内海「オーマイダーリン、オーマイダーリン、オーマイダーリン、クレメンタイン」
磯村「灯油の販売トラックが回ってるみたいだな。このクソ寒いのに、ご苦労なこった。――それで、最近どうなんだよ?」
内海「ユーアロスタンド、ゴーンフォエーバー、ドレッフォソーリー、クレメンタイン」
磯村「相変わらず、なかなか本題に入らない奴だな、内海は。奈良に居た頃と同じだ。少しは都会の絵の具に染まれよ」
内海「そしたら、故郷の恋人にハンカチーフを送らないとね」
磯村「木綿の、な。でも、そんなんじゃこれから困るぞ?」
内海「三つ子の魂、百までだよ」
磯村「開き直るな。しばかれたくなかったら、閑話休題しろ」
内海「分かったよ。実は、大学生活についてなんだけどね」
磯村「先に断っておくが、金は貸さないぞ?」
内海「その点は、仕送りとアルバイトで何とかなってるから大丈夫だよ。そうじゃなくて、その」
磯村「ああ、もう。じれったい野郎だな」
磯村、右手を振り上げる。
内海「ストップ、ストップ」
磯村「過程はあとで訊くから、先に結論を言え」
内海「言うよ。言うから、手を下ろして」
磯村、右手を下げる。
内海「それが、大学で友達が出来なくて悩んでるんだ。ホラ。僕って、初対面だと赤面してしまうから」
磯村「何だ、そんなことか。気にしなきゃ良いんだが、そうもいかないか」
内海「交流会とか、発表とか、何かと人前に出る機会が多くなってくるし」
磯村「将来的に就活の面接や婚活の見合い席で本領を発揮できないと、何かと損だわな」
内海「それで、どうやったら緊張しないでいられるか、何かコツがあるなら教えてほしくて」
磯村、二指で顎を摘む。
磯村「ウゥン、そうだな。これは、生まれ持った体質としか言いようが無い気もするが」
磯村、指を鳴らす。
磯村「そうだ。良い方法がある」
磯村、内海に耳打ち。
内海「いや、さすがに、それは」
磯村「あ、そう。内海が嫌なら、この話はなかったことにしよう。三流企業でコキ使われながら、独り寂しく年老いればいいさ。安心しろ。骨だけは拾ってやる」
内海「待ってよ。何が悲しくて、そんな未来予想をされなきゃならないのさ」
磯村「現状維持から導かれる、最もありうる姿なんだが、文句あるか?」
内海「磯村くんの意地悪」
磯村「どういたしまして。それで、どうするんだ? この話、乗るのか、乗らないのか?」
内海「乗るよ」
磯村「よし。決まりだな」




