「ウルトラ・ チンコ。」 (仮)
「おい猫、あれ見てみー!笑」
「おー?!ウルトラ・チンコ?!」
「ウルトラ・チンコーwww」
…その男が現場の移動中に
通り掛かった道は
彼が小年時代を
過ごした場所に程近かった。
彼が小学生の頃、
学習塾だか、そろばん塾に
通わされてた時期が有り
その塾に通う通りには
一軒の鄙びた小さな
パチンコ屋が有った。
店名は
「ウルトラ・パチンコ」 (仮)
トラックを運転しながら
男は懐かしく当時を思い出す。
冬の日没の早い時期、
寒さに震え凍えながら
塾に行く為に
友達と合流して
自転車で走っていた。
ジャンパー着て
上はもこもこなのに、半ズボン。
田舎町なりの
古びた商店街の
イルミネーション。 いや、電飾。
ネオンサインと
行き交う車のライトが、、、
信号で止まる車のテールランプ。
大人の人がお酒を飲む店の看板は
電気が点いてるけど
まだお客さんは居ないみたい。
どこかから微かに聞こえる
ジングルベルのX'masソング、、、
日没の時間帯と相まって
子供なりに感じる、
年の瀬の忙しなさと焦燥感…。
そして密かな高揚感。
…12月。
そんな時に
…事件は起きたんだ。
「パの字が電気、消えてるらーw」
「まさしくウルトラチンコだっ!」
「きゃっほー!!
ウルトラ・チンコだー!!」
小学生男子が食い付く
格好のネタである。
「明日、みんなに教えなきゃな!」
「女子にもなっw」←その男。
その時、運良く(悪く?)
同じ塾に通う女子達が。
「あっ!おい安東ー、
あれ、お前、読んでみろよーw」
その男の呼び掛けに
安東と呼ばれた女子が
彼が指差す方向を見上げる。
「…えー、、、///」
「早く読んでみろやーw」
「ちょっと!猫くん!
安東さん困ってんじゃん!
ヘンタイ!ばかっ!」
「何だよ?
嶋田には言ってねーじゃん!
あっ!お前、ヘンタイってゆったー
お前、今、読んだだらー?
ヘンタイだーw
嶋田、ヘンタイだーwww」
「ヘンタイってゆった人が
ヘンタイなんだにっ!」
「ならお前ーヘンタイだらー?」
「もうっ!猫くんのばかっ!
どーしていつも安東さんを
からかうの?」
「えっ?ぁ、安東がばかだからっ!」
「あー、猫ーお前ー
安東の事、好きなんだらー?」
「ちょーっ///
何言ってんだーお前ー!!」
(なんたる裏切り行為!!)
「てっ、、よっ、、てめーー!!!」
「なんだーやるのかー?!」
「ちょっとー!
やめなさいよ男子ー!」
「うるせー女子はあっち行けー!」
「あー、安東、泣いてるー!
猫が泣かしたーw」
「ちょー、、、
こんなぐらいで泣くなー!」
「泣かしたーw泣かしたー!」
「うるさいうるさいうるさいー!」
…殴りあい。笑
「ちょっとやめなさいってばっ!
もう知らないからー!!
先生にゆっちゃうからー!」
「げー!嶋田も泣かせたー!
猫最低ー!!
…いてー!髪引っ張んなやー!!」
「おめー噛み付いたくせにー!!」
「汚ねぇぞっ反則野郎!!」
「どっちがー!!!!」
「猫くん、吉澤くん、
何ですか、その顔は。
先生は学校の先生じゃないけど
説明して下さいっ。
さっき嶋田さんから
ちょっと聞きましたけどっ?」
塾の女の先生に言われて
俺は、いや、男は説明したんだ。
「…ウルトラ・パチンコの
パが消えてウルトラチンコに
なってて、、」
「な、、///何ですか?」
「だからウルトラチンコが、」
「猫くんっ!!
女の人の前でそーゆー事を
言ってはいけません!」
「だって、ウルトラチンコから
説明しなきゃ、」
「もうっ!///いいですっ!!
二人とも今日は立ったまま
勉強しなさいっ!!」
翌日、
なぜか吉澤と俺が、いや男が
学習塾で立たされたまま
勉強した、とゆー話が
クラス中に知れ渡り、
俺が、いや男が
安東さんと嶋田さんと
三角関係とゆー事になっていた。
その男は産まれながらにして
自意識過剰だったので
もしかしたら
安東さんも嶋田さんも
自分の事が好きなのではと
思い込んでいた。
それはその学年になる前の
バレンタインデーでの出来事が
影響している。
しかし、その男は
あまりの恥ずかしさに
いずれにもリアクションを
しなかった。
男子の間で冷やかされるのを
極度に恐れたからである。
よっしーとは、いつの間にか
自然に仲直りしていた。
しかし
美人でおしとやかな安東さんとも
明るく世話焼きの嶋田さんとも
何と無く気まずいまま、X'masも
翌年のバレンタインデーも
何事も無く過ぎて、、、
学年が変わり
皆、別々のクラスとなった。
「ウルトラ・ チンコ。」
…甘酸っぱい思い出である。
あ、いや、ウルトラチンコが
甘酸っぱいのでは無くて、、
それにまつわるエピソードが
甘酸っぱいのである。
念の為、申し添えておく。
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