表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

光州作戦

この小説はマブラヴの二次創作物となっております。

1997年、アラビア半島はBETAの侵攻により陥落。

10年以上もBETAと渡り合っていた彼らが敗れたことはたちまち世界中へ知れ渡った。

今、アフリカ大陸はなんとか持ちこたえているようだが、時間の問題だった。

敵は無尽蔵に出てくる強大な存在。

こちらは、一度でも死ねばもう替えは効かない小さな存在。

人々は恐怖に怯えるしかなかった。

「少尉・・・」

「どうした、坂本」

「軍人が弱音を吐くのは最大の罪だと、昔、少尉に教えられました」

「ああ」

「俺は・・・その罪を犯しそうです」

坂本は震えていた。

いつも、へらへらと上官に向かって平気でイタズラをするような奴が、小さく震えていた。

「俺の前では弱音を吐くことを許そう、だが、国民の前では常に強くあれ」

「はい・・・」

しばらくの間、ぼうっと窓から沈む夕日を眺めていた。

我々は勝てるのだろうか。

いや、勝つことはほぼ無理だろう。

だからこそ、守り抜かねばならない。

勝つ必要は無い、ただ、守れば良い。

そう心の中で何度も繰り返した。

強く握る拳から、血がたらたらと流れる。

雅は坂本以上に震えていた。




「「光州作戦?」」

分隊の憩いの場である一室で皆が口を揃えて言った。

「ああ、朝鮮半島からの撤退を支援するという作戦だ」

「少尉殿、この作戦無謀では?」

「そうですよ!」

部下全員がブーブーと反発する。

「すまんが私ではこの作戦に口出しすることは叶わん」

「そりゃ、そうですけど・・・」

「まだ行くことになるとは決まっとらんから安心しろ」

「・・・」

全員が俯いていた。

当然だろう、現在大陸は地獄よりも酷い状況下にある。

そんなところに自ら進んで行くなど愚の骨頂。

まともな神経をした人間は行きたがらないだろう。

不安がる部下達に向かってゆっくりと口を開く。

「そうだ、皆で酒を飲みに行こう」

「・・・そうですね!行きましょう!みんなで!」

私の呼びかけに坂本が反応する。

「そ、そうだな!行きましょう!少尉!」

「もちろん少尉の奢りですよね?」

「俺、肉が食いたいです!」

先ほどとは打って変わった雰囲気の彼らを見て、私は嬉しかった。

「仕方ないな、今回だけだ。好きなだけ飲んで食え」

「「やったー!!!」」

その日、雅達は朝まではしゃいだ。

子供のように。




結局、我々が光州作戦に関わることは無かった。

出撃する隊員達を基地の全員で見送った。

姿が見えなくなったところで、静かに持ち場へと戻り黙々と作業を進める。

その日はいつもより静かに過ぎていった。

出撃から数日が過ぎ、あの事件が起きる。

光州作戦の悲劇と呼ばれた『彩峰中将事件』。

事件の内容については、私が詳しく知ることは無かった。

この出来事について私が思ったのは、先に光州作戦へ参加した戦友達の安否だ。

しかし、考えるまでもなかった。

全員死亡。

私が知る者たちが帰ってくることは二度と無かった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ