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 私は物凄い後悔を胸に抱いていた。どうして私が流架の命を絶たねばならぬ死神なのだろうと……。

 流架との出会いが幸せを運び流架と過ごした一日一日が宝石のように輝きキラキラとしていた。そんな毎日を私が終わらせねばならない。

 メガネ娘が人わりと怪しげな笑いを浮かべていた。


「貴方は一体誰ですぅ?」


 私は死神の鎌を取り出すと勢いよくメガネ娘へと振りかざした。すると彼女は予想していたかのようにすんなりと左に交わし笑っている。

 私は鎌の反動に負けてそのまま尻餅をついてしまった。


「痛いですぅ」


 私がお尻を指すっていると後ろにいた流架が私の目の前に起立した。


「お前……」


「綾瀬君。気が付いたんだね。よかったぁ。速くここから帰ろう」


 いつもと変わらぬ素振りでメガネ娘は流架の元へ掛けて行くと抱きしめた。今までメガネ娘はこんなに大胆だっただろうか?

 それ以上に気がかりなのはメガネ娘の自信溢れた表情と膨らみのある胸。メガネ娘の胸はこれ程膨らんでおらず、私より小ぶりな胸をいつも比べては頭を垂らしていた。


 それなのに……。


「誰だ?」


 流架が口を開いた。すると、メガネ娘は驚きにも似た表情を浮かべ流架から離れていく。そして、メガネはを外すと不敵な笑みを浮かべ流架を睨みつけた。


「あ〜ぁ。残念。完璧な変装だと思ったのに……」


 さほど困っていない様子でメガネ娘は呟くとメガネを取り外し瞼を閉じている。すると、メガネ娘は光へと包まれていく。光が消えるとメガネ娘は女神へと姿を変えていた。女神は不敵な笑みを浮かべたまま流架を見つめている。

 どうしても女神の態度が気に入らない。流架を見つめているだけで胸が苦しくて張り裂けそうになる。

 私は流架の手を引き女神から距離を取った。そして、死神の鎌を女神へと構え様子を伺った。


「そんなものこっちに向けない。そもそもメガネ娘なんてこの世に存在していた魂でもないのにさ。っあ、違うか……。あの子の魂を狩ったのはあたしなんだから」


 女神の言っている意味がわからない。メガネ娘がこの世に存在していた魂ではない……?

 いや、メガネ娘は確かに存在していた。私達の恋愛を邪魔し嫉妬していたものの私とは仲良くなり私達を見守ってくれた。確かに死神の私を観れる特殊な体質の持主だったが確かにメガネ娘はいたんだ。


 それなのに……。


 私は悔しくて鎌を強く握りしめると無意識のうちに女神へ振りかざしていた。しかし、女神は軽やかに交わすとイタズラじみた笑顔で私達の方へと歩いてきた。


「いきなり危ないじゃない。それに、鎌を振る相手だって違うし」


「メガネ娘と約束したですぅ。流架を守るって……」


「そうなの。あの子がね……」


 女神は意味深な言葉で私達から遠ざかった。そして、数秒立ち尽くしている。


「人はいつか死ぬ……」


 女神がかろうじて私に聞こえる程の小さな言葉で囁いた。そして、顔を上げると大粒の涙を流しているではないか。

 私はどうしていいかわららず戸惑っていると、流架が女神を抱きしめた。


(えっ……?)


 私の心に何かが刻まれていった。絶望にも似た感情が体を支配し飲み込んでいく。そして、私は流架の体を貫いていた。

 流架の体が流れるように倒れていく。そして、私の耳元でこれで仕事が完了したな。と囁くと嬉しそうに微笑み倒れた。

 ピクリともしない流架の体を私は揺さぶってみるものの既に魂のない抜け殻となった体は動く気配も微塵も感じせられにない。


「流架……ごめんですぅ……」


 私は動かない流架の体にそっとキスをした。

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