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運命をかえます‼︎

 1

 楽しい日々は怒涛の様に過ぎて行き運命の日二月十四日が訪れた。

 普段と変わらず朝が訪れ、普段と変わらぬ風景が今はなんとなく気持ちが悪い。

 今日が運命の日だなんて考えたくもない。その為に私は流架へのバレンタインチョコレートを徹夜で完成させた。

 バレンタインデーとは本来遥か昔とある国で実際あった出来事なのである。

 戦争が途絶える事を知らなかった時代、若者が戦争へと赴かなくなり案じた国王が、結婚そのものを禁止した。

 しかし、勇者が立ち上がりそして犠牲になった……。

 それから人々は勇者の名前からバレンタインデーと名付け好きな人へプレゼントするようになったという。

 バレンタイン=女性が男性にチョコレートを渡す様になったのは後の話で私達が生きていた頃は名前すら広まっておらず、西洋かぶれと言われていた。

 だから私はバレンタイン。好きな人にの為にチョコレートを作った事はなく作っている最中は緊張連続だった。

 姿の見えない私はママが留守にしている間を狙い本と格闘しやっとの思いで作成したチョコレートを流架に食べて貰いたい。

 運命の日という事もあってか胸の中に渦巻く気持ちが堪え切れない。

 私は流架の部屋の扉をノックした。


 トントントン


「流架。いるですぅ?」


 本来であれば流架は今頃目覚めている時間でボサボサの髪を鏡をみて直しているだろう。ボサボサの髪を変な顔して直している流架がなんとなく面白く私の大好きな光景の一つでもある。

 私は扉を開けた。


「流架……?」


 流架の姿がない。急いで家中を探すも見つからず嫌な予感だけが胸の中に降り積もってくる。

 私は慌てて天国へと帰還した。



 2

「ここは?……」


 流架は見慣れぬ場所で横になっていた。どうして自分がここにいるのかすら分からず辺りを見渡すもどんよりと暗くよく見渡せない。

 自分はいつものように寝癖を鏡の中で直していた。すると、声が聞こえ振り向いたらここで寝ていた。


「苺……」


 苺は俺の居場所がわかるのだろうか? たった一人の大切な人。俺を大切にしてくれた死神。


(死ぬんだ……俺……)


 頭の中になんとなく過ってきた言葉に流架は瞼を閉じ何も考えなくなった。


(苺……)


 流架は最後に苺の笑顔を思い出し小さな声で一番大切な人の名前を呼んだ。



 3

 天国へと帰還した私はなりふり構わず流架を探した。あてなどどこにもなくさまよっていると流架が私を呼ぶ声が微かに聞こえた気がして振り向くも誰もいない。

 嫌な予感だけが私の胸に積もり重くのしかかってくる。


「流架何処ですぅ……?」


 目に涙を浮かべるも状況は何も変わらない。

 泣いていたって何も変わらないんだ……。私は流架を守るって約束したんだ。


(流架を守るですぅ‼︎)


 強い気持ちを持ち再び流架を探し始めた。すると先ほどまでの胸にのしかかってきていたものが徐々に軽くなっていく。


「苺……」


 流架の声が聞こえた。今迄の声とは異なり耳に直接聞こえてきたかのように感じられる。

 流架の声がした方に顔を向けると城しかない。

 流架は城に入る。直感が私に語りかけていた。


「流架。助けに行くですぅ」


 私は城へと翼を広げ羽ばたいた。

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