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彼は今なんといったのだろう? 私の事を宇宙人。一月の寒空の中で彼のいった言葉は芯から凍えそうになる。
「面白い事をいうお友達ね。さぁ上がって」
ママはメガネ娘と優を家の中へ招くと台所へいきお茶の支度をし始めた。流架が二人を自分の部屋まで招き入れる。
「意外と片付けてるんだ」
「あぁ……」
「隠してるエロ本とかないの?」
「あるかそんなもの‼︎」
流架は優の言葉に顔を赤くして反論していた。流架が他人に感情あらわにして反論していると心から嬉しくなる。
出逢った頃の流架は魂のない人形のような顔つきをしていたのに今はどうだろう。
笑い、悲しみ全て抱いて毎日を歩んでいる。
きっとこのまま運命の日がこなければ幸せな人生を歩めるに違いない。
フゥー
窓から妙な風が入ってきた。この風の匂い覚えがある。これは確か天国の……。
そこまで考えて私は無意識のうちに風がきた方向を目指していた。
「どこですぅ?」
私は辺りを見渡すが何も見つからない。
フゥー
再び風の香りがした。慌てて風の香りがした方向をみると女神の使いが私の背後へと立っている。半歩後ろに引き下がり相手の様子を伺った。
「綾瀬流架。もうじき終わる……」
「どういう意味ですぅ‼︎」
「期限は二月十四日全てが終わる。お前の手で……」
それだけ伝えると神の使いは天国へと帰っていった。期限は二月十四日。終わる。流架の命を私が……。
運命のあ変わることはない。しかし変えることは難しいながらも出来るんだ。私は勘違いで命を絶ち死神となった。
でも、流架に出会わなければ老婆の言葉を聞いてなかったかもしれない。
流架と再び恋に落ちなかったかもしれない。
流架に貰った大切な思い出は全て私の宝物で失わせたくない。
私は神の使いが立ち去った事を確認すると流架の部屋へと帰った。
2
私が流架の部屋へと戻ってくると既に二人は帰った後だった。
「どこいってたんだよ。あいつら帰っちまったぞ」
私は口籠り何も言うことは出来ない。流架の運命の日が決まったなどどう話していいかわからない。
それ以上に私の口からはどうしても話せなかった。
「なんでもないですぅ」
私は平然を装い流架へ返事するも普段とは変わらなかっただろうか。ふとした瞬間に隠し事がバレたりしないだろうか。
隠し事は良くないと思いつつも決して言いたくはない。もし話してしまったら胸の中にある何かが壊れてしまいそうだったから。
今日は正月ということもありママはおせち料理を作ってくれた。勿論流架が部屋に持ってきてくれたものしか私は食べることができない。
私の正体は誰にも秘密なんだ。
いつも美味しいママの手料理もこの日だけは味も素っ気もなく砂を食べているのと同じく感じられた。




