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正月とはなんて暇なものだろう。テレビを覗いても特番が組まれて入るものの特別面白いというほどのものではなく同じ内容のものがひたすら流れている様に感じられる。
親戚も何人か挨拶程度に来るもの用事が済むとすぐに帰っていく。
私は正月なので天国に帰ることも考えたが流架との関係を話してしまう可能性を考えると足がすくんでしまう。
となんだかんだ考えてしまっているうちに帰りそびれてしまったというのが真実で後悔先に立たずとはこの事だろうか。
レモンにも話したい事は沢山あったが天国へは帰らなかった。
「流架……」
流架は宿題を終わらせていた。元旦だというのに真面目なものである。
本人は人混みに行くのは疲れると言っていて相手にしてくれない。正月といったら本家へと挨拶を行い同じ年頃のグループとなってゲームなりをするのかと半分楽しみにしていた。
予想が外れ一人時間を持て余していたので外へ散歩にでた。勿論一人である。
久しぶりに空を飛ぶと冷たい空気が私の頬を刺す。
なんとなく両手に息を吹きかけると白い空気が周りへと溶けていった。
「暇ですぅ……」
私がほうづえをついて電信柱のてっぺんに腰を下ろしているとメガネ娘が流架の自宅の方へと歩いていく姿が見えた。メガネ娘の後ろに優がついてきていた。
「メガネ娘どうしたのですぅ?」
私が空から飛んできたので驚いたのかメガネ娘は硬直してしまった。優はメガネ娘が上を向いて固まっているのでどうしたのか分からず怪訝な顔をしている。
「何しているのよ‼︎」
メガネ娘は優がいるにも関わらず大きな声を出した。優もメガネ娘の行動に驚きを隠せずにいる。メガネ娘の視線の先を見て優までも私の方を見た。
「おいどうした?」
しかし優には私を見ることができない。メガネ娘が見えていること自体が不自然極まりないのだが今はそんな事気にしていない。
はじめはライバルだった彼女とも今は打ち解けて友達と呼べる存在へと変化していった。時の流れとはそういうものなのかもしれない。
優に私の存在にばれたのではないかと慌てて優の顔を伺った。
「お前まさか……。宇宙人と交信しているのか?」
優の突拍子ない言葉に私は開いた口が塞がらない。それは、メガネ娘も同様で惚けた顔をして優を見ていた。
「ちっ違うのか?」
優が眉を潜めているので私は本当にそう思っているんかいと心の中で突っ込みをいれた。幽霊がいるのは本当の話だとして宇宙人という発想は未来のこと過ぎて私には理解することさえ難しい。
メガネ娘は苦笑いを浮かべていた。
「なんだよその態度気に食わないなぁ」
「さぁ、今の事は気にぜず流架君の所へ行きましょう」
メガネ娘は上手く話を誤魔化し流架の家へと背中を押していく。優は腑に落ちない部分があるようだがメガネ娘に背中を押されている為かそれ以上何も言うことがなかった。
細かい事を気にしないが優の一番の長所かもしれない。
「苺ゴメン」
メガネ娘は小声で私に謝ってくる。
私は気にする事なく流架の家へと向かった。
ピンポーン
メガネ娘が呼び鈴を鳴らした。すると、近くにいたであろうママが玄関のドアを開けた。すると、流架と同い年くらいのメガネ娘と優を見て嬉しそうに喜んでいた。
「あけましておめでとうございます。あの、流架君はいますか?」
「えぇ。ちょっと待ってて」
ママは嬉しそうに流架を呼ぶ。すると、宿題をしていた流架が部屋着のまま現れた。
「あけましておめでとう流架君」
「綾瀬。あけましておめでとう」
「おっおう……」
二人が来てくれたのにも関わら流架はそっけない。ママはやきもきしているみたいであったがこれが普段の三人なのだ。
流架の側にいつもいる私だからこそ知っている。
「さっきこいつ宇宙人と交信してたんだぜ。カッコイイ」
優の言葉を聞き誰もが呆れたのはいうまでもない。




