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 1

 冬休みへと突入した。終業式の日、先生が名前を呼ぶと皆緊張した面持ちで成績表を受け取った。喜ぶ顔に暗い顔と様々で見ている側の私としてはとても面白い。流架の成績は前回とさほどかわってはいなかったのが落ち着いている。成績表を覗くと全てが平均以上の成績表を納めていた。メガネ娘も流架には及ばないもののなかなかの成績だった。問題外なのは優。全ての教科において赤い文字で印刷されていた。つまりは全て赤点だったということ。

 流架に対して涙を流して”裏切りものぉ〜”と叫んで引きずられていったのを今でもハッキリと覚えている。

 自分が悪い成績をとってしまったから赤点だというのに……。


「流架。今日はどこにいくですぅ?」


 既に真夜中だというのに流架は外へ行く身支度を始めていた。私は和装で決めていた。今日は大晦日。一年の締めくくりの日で年の最後。


「二年参り行かないか?」


 言葉の意味も分からず私はついて行くと私たちは近くの大きな神社へと訪れた。

 普段から人の絶える事のない神社だとは思っていたがそれでいてもこの長蛇の列は圧巻するものさえあり近づきにくい。

 夜店などもチラホラとあり小さな祭りが行われているようだ。

 流架は最後尾に躊躇なく並ぶ。


「 神様に願い事しないのか?」


 流架は変わってきた。どう表現したらいいかわからないがそんな気がする。私は流架の隣に並ぶと辺りを見渡した。

 どこを見渡してもカップル、カップル、カップル。

 自分達が異色な気がして恥ずかしくなる。しかし、流架は平然とした様子で立っていた。

 私たちが並ぶ後ろにも既に沢山の人が並び列をなす。チラホラと雪が降ってきて地面を白く染めていく。


 ゴーンゴーンゴーンゴーン


 除夜の鐘が鳴り響いた。百八つの煩悩をという意味を持つのだが実際の所それよりも多く鳴らしている。

 私達は除夜の鐘が何度も鳴り響く中参拝を行った。


(苺とずっと一緒にいられますように……)


(運命の日が来ませんように……)


 小銭を入れて参拝した。私はお金を直接入れることはできないけれども流架が代わりに入れてくれる。


「苺は何をお願いしたんだ?」


「秘密ですぅ」


 私は流架に始めて秘密を作った。


 2

「ハッピーニューイヤー。あけましておめでとう苺」


 雪がしんしんと舞い始めた。参拝も終わり帰宅しようとしていると唐突に流架が新年の挨拶をしてきた。

 まだ深夜を過ぎたばかりで新年を迎えた実感が湧かず何とも絶妙な気分。


「流架。あけましておめでとうございますですぅ」


 新しい年が幕を開けた。運命の日がもうすぐ来てしまう事を考えると胸がズキンと痛みどうしていかわからなくなる。

 何故、私が大切な人の命を狩らなければならないのか……。運命というもの呪いたくなる。

 やっと結ばれた大切な人だというのに……。

 クリスマスの日、流架と約束したのだ。運命の日にちゃんと自分の命を狩ってほしいと。

 どうして流架がそんな事をいったのかわからないけれど誓ったんだ私は流架に。

 だから私は流架の命を狩りとる。死神としてではなく七瀬苺として大切な人との約束を守るために。

 でも、それまでは流架と沢山の思い出を作っていく。

 新たな年。新たな願いを胸に新しい年が幕を開けた。

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