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老婆の出来事から間もなく待ちに待った修学旅行が始まった。
学園は毎年生徒が五つに絞られた旅行先を二つに絞り生徒が旅行先を選べる様になっている。
今年は話し合った結果長崎のハウステンボスか北海道という事で意見がまとまった。
修学旅行とはいえ流架と初めての旅行に私は心が踊っていた。
嬉しくて嬉しくてたまらない。
鼓動が高鳴り喜びに溢れていた。一方の流架をみると何処か気持ちがふさぎ込んでいる。
黒いオーラが背中辺りから放出されていた。
「どうしたですぅ?」
「俺、雨男だから……」
流架はこそりと呟くと机へと顔を伏せた。確かに何度か流架と出かけた際何度か雨だった。それも流架が約束してくれた日に限って……。
偶然だろうと思って来たが本人がいうのだから間違いはないのだろう。
「流架……。修学旅行楽しみじゃないんですぅ?」
「そういうわけじゃないけど、みんなに申し訳なくて……」
楽しいはずの修学旅行が一気に冷めた気がした。私は流架と一緒にいられるだけで幸せと感じていた。流架にも思う存分楽しんでほしい。
「綾瀬。お前は何処に行くんだ?」
「えっ? えっと……」
「流架君私と一緒に北海道行かない?」
「えっ? えっ?」
流架は同時に声をかけられて戸惑っていた。今まで顔を伏せていたのでおそらく眠っていたのであろう。
目を覚ましたばかりのボーッとした頭には話の内容が理解出来なかったらしく対応にあたふたとしていた。
流架の顔が慌てていて可愛らしい。私はクスクスと笑うと、流架は冷たい 視線で私を射抜く。
流架の視線に背中に冷たい風が走る。
「ねぇ、流架君はハウステンボスと北海道どっちがいの⁉︎」
「それはやっぱり北海道でしょ」
私はメガネ娘に胸を張って答えて見せる。すると、メガネ娘は半歩私から離れていた。
実は昨日の夜遊学旅行の行き先について流架と二人で相談していた。ハウステンボスも北海道も旅行に不慣れな私達には魅力的でどちらに行くか正直悩んだ。結局美味しいものが沢山あるとのことで北海道と決めていた。
「俺は北海道のつもりだけど……」
「優‼︎ あなたはこっちでしょう‼︎」
優は後ろの襟首を女子生徒に掴まれると涙を流し教室から退室する。ハウステンボス希望の生徒は隣のクラスに集まる為だ。女子生徒はなれた手つきで引張ていくとこちらを振り返りニッコリと微笑む。
「あいつ……」
「ハウステンボスにしていたみたいね……」
私達は優を暖かく見送った。
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次の時間修学旅行のグループ分けが行われた。グループ分けといっても部屋で眠る時と食事をする時のみのグループでその他は自由行動とされている。
流架は私と一緒に話せるように一人でいようか。とも言ってくれたが私から友達といてくれた方が嬉しいと断った。
折角の修学旅行。私だけ流架を独り占めする訳にもいかないだろう。
最近は友達が増えてきた気がする。それに、最初に出会った頃よりも表情が柔らかくなった。
「流架……?」
「やっぱり俺苺と一緒にいたいな……」
私は流架の言葉にコクリと頷いた。すると、嬉しそうに流架は微笑んでいる。私は誰の目にもとまらない。はたからみれば流架は一人で修学旅行を回っているように見えとても寂しい。
「流架……」
「いいんだそれで」
私としては嬉しいものの本当の意味で嬉しいとは言えぬものの私がグズグズしているうちに修学旅行の日取りとなってしまった。




