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私は流架と約束していたラストダンスを結局踊れず学園祭は終了した。なぜならばメガネ娘ことを納得させるまで私達の事を説明していた為時間がなくなったのだ。
それも策略の一つだったのかもしれないがそれは定かではない。
は私が流架の魂を奪ったら生霊となり末代まで祟ってやると脅されてしまった。
それはそれで仕方がないことだが、どうしても納得できない。
「ラストダンス踊りたかったですぅ‼︎」
私は学園に着くと大きな声で叫んでいた。これで何度目だろう。学園のグラウンドにて叫ぶと気持ちが軽くなる。
学園祭の時は幻想的だったグラウンドもすっかりと元の状態に戻り学園祭その時が嘘のようだ。
「何叫んでいるのよ苺」
メガネ娘が私に話しかけてきた。流架の事で色々とあったがここ数日で仲良くできるようになってきた。
相変わらずの憎まれ口を叩くもそれが流架へのアピールだと気づくと怒りも湧いてこない。
周りには私の存在は見えず声すら聞こえない。だから、メガネ娘や流架あ私の話しかける際はとても用心していた。
学園祭が終了すると新しくカップルが誕生し先生はてんてこまいとなっている。そして、学生の本分である中間試験も近づいてきていた。
学園の赤点は三十五点以下とされている。試験問題も比較的簡単でしっかりと勉強していれば赤点などまずあり得ない。
流架は比較的真面目に授業を受けてた。おそらく先生と必要以上に関わりたくないと本能的に感じ勉強に取り組んでいるだけかもしれないがそれでも充分ではないかと思っていた。
「なぁ、俺今回の試験マジでやばい……」
流架の前の席である男子生徒が流架に話し掛けてきた。この生徒とは学園祭の頃から少しずつ話す事が多くなり友達と呼べる存在となっていた。
「しっかり勉強すれば大丈夫だって」
「この野郎‼︎ 優等生ぶりやがって」
そういって男子生徒は流架の脇腹をくすぐり始めた。
「くすぐったいって」
流架は脇腹をくすぐられゲラゲラと笑っていた。これが彼らなりのコミュニケーションなのであろう。その証拠に二人共ゲラゲラと笑い声を上げていた。
私はそんな二人を教室の隅っこの方で暖かく見守っていた。死神の力で姿が見えるように出来なくもない。
しかし、それにはデメリットも多い。人に見える様にするためには魂を常に集中していなければならない。よって非常に疲れるのだ。
万が一人に死神の存在を知られたとなれば今後霊媒師によって悪霊と勘違いされ除霊される危機さえある。
悪霊と死神は本来属性が異なるものの魂である事に変わりはない。
流架も大分このクラスに馴染んで来ているようで私も嬉しかった。
キーンコーンカーンコーン
毎日同じ時刻にチャイムが鳴り生徒は皆席へと座る。 チャイムが鳴り終わる頃に先生は教室に入り出席をとった。
普段と何も変わらない日常が戻りつつあるもクラスメイトの大半がざわついている。
おそらく、近じか行われる中間試験が原因であろ。高校二年の成績は来年にも影響を与える。今年如何に優秀な成績がおさめられるかで進路を決定までとは言い難いが大体の道筋を立てられる大切な時期だ。
クラス中が騒めく中流架だけは冷静にテスト勉強をしている。最初の頃の流架ならば来年自分は亡くなるのだから勉強したって意味がないと言っていたかもしれないがクラスメイトと話していく中で少しずつではあるが徐々に変化してきた。
(頑張るですぅ)
私は陰ながら応援する事しか出来ないが流架の背中を見守っていた。幸い一限はテスト勉強となり教卓で先生は読書し始めた。クラスメイトも徐々にそれぞれの課題に取り組み話し声は聞こえない。
天国では私も必死になって勉強していた事を思い出す。あの頃はママに会いたくて必死で勉強していた。
しかし、実際に人界に来てママだけでなく流架というかけがえのない存在に巡り会えた事。それが私の中で最高の幸せと感じていた。
(苺‼︎ お前の仕事は何だ?)
私の頭の中にあの時の言葉が蘇ってきた。私は死神で流架は人間。いずれ、魂を狩らねばならない。わかっている。わかってはいるが覚悟なんて出来っこない。
(末代まで祟ってやる……)
私は死神と流架の恋との狭間に悩まさ始めていた。流架の魂を狩ることが死神として私の仕事。しかし、流架の魂を狩ることによってママやメガネ娘多くの人間が悲しみにくれてしまう。私を含め全員が涙を流すだろう。
しかし、流架の魂を狩らずにいれば運命が変わってしまうかもしれない。そうなれば死神の掟に背く事となる。
それでも大切なの命を狩ることは出来るのか。私の心は振り子の様に揺れていた。




