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3

 1

 ラストダンス。それは、昔からこの学園で行われている伝統行事で一緒に踊ったカップルは将来結婚出来るというジンクスを持っている。

 学園祭が近づくに連れてこの話を聞かない日は無くなっていた。学園全体がこの話で持ちきりで、耳を塞がない限り聞かない日は無いだろう。花火大会の日、大好きな流架から告白された。それから数週間が経ち幸せの絶頂? に私達はいる。しかし、メガネ娘の言葉を聞きそうも言っていられなくなった。


「おぉ。そういえば春からお前達何かと仲よかったもんな。お似合いなんじゃない?」


 私はクラスメイトの発言に怒りを覚え死神の鎌を出してしまった。すると、メガネ娘は喜び薄笑いを浮かべている。

 ここぞと言わんばかりに流架へと一歩近づいた。

 その様子に流架も気付く様子はなく、ただただクラスメイトとメガネ娘と話している。

 私は流架とメガネ娘以外の人間に姿は見えることない。わかっている。わかっていた筈が三人の楽しそうな会話に入れず自分だけ取り残された感じがして寂しくて堪らなかった。

 流架とラストダンスを一緒に踊りたい。流架を独占したい。嫌な気持ちが私の心を支配していった。


「一緒に踊ってくれるよね?」


「うん……」


(なんでそこオッケーするの‼︎)


 私の憤慨をよそに流架は了解しメガネ娘とラストダンスを踊る約束をしてしまった。すると、メガネ娘は私にむかいイタズラ染みたを浮かべてみせる。

 私は悔しくて仕方がなかった。


「この馬鹿メガネ娘‼︎」


 私は自分が見えぬ事に甘んじて大声で叫んだ。すると流架とメガネ娘のみ反応するものの他の生徒は気づかなかった。

 何処かスッキリしたものの気持ちはそれだけではおさまらない。

 私は窓から飛び立った。

 そしてメガネ娘を睨み付ける。すると、顔を赤く染め流架を見つめている。

 あれは恋をする瞳。私は新しく出来た焦りと不安に苛まれた。


 2

「流架のバカ……」


 私は初めて流架に抱きつかれた学校の屋上へとやって来ていた。

 止めどない感情が私の中で渦巻きとぐろを巻いている。メガネ娘に対する嫉妬が抑えられずにいた。そして、悔し涙が頬を伝った。


(あれ……何でこんなに苦しいですぅ?)


 私が涙を脱ぐっていると後ろから扉の開く音がした。


 キィィィィィ


「やっぱりここにいた……」


 ほんの少し振り向くと扉の近くには流架がいたので慌てて涙を拭き背中を向けていると温かい物が私の背中に抱きついてきた。甘い吐息がかかり惑わされそうになる。私はいたって何事もなかったかのように振る舞った。


「どうしたですぅ?」


 流架の吐息は私を惑わしてしまう。現に、先程メガネ娘との事があったというのに私の心臓は高鳴り押さえつけることが出来ない。顔が火照り体の自由が利かなくなる。


「ラストダンス……。一緒に踊らないか?」


 私は予想もしていなかった言葉に目を丸くするも素直にコクンと頷いていた。



 3

 天国では毎日のように初老の男が苺と流架を観察していた。苺が一人前の死神になれる様サポートする事が男の役割となている。

 本来なら魂を狩るまでの期間特別忙しくなることもないのだが、この度苺は人界の青年え恋をすとという事態を招いてしまった。

 それどころか女神によって消された記憶が蘇りつつある。

 男は急いで女神の所まで掛けていた。


「失礼致します」


 丁寧に挨拶し扉を開けるとただただ広いだけの応接間にて女神は鏡を覗いている。写っているのは苺と流架だ。


「女神様。やはりこれは非常事態であります。早速苺には別の人間の魂を……」


 男の言葉の途中において女神は男を厳しく睨みつける。すると男は顔を青くし口を閉ざした。

 すると女神は何事もなかったように再び鏡を覗き込む。


「面白がっている場合ではないのですぞ‼︎」


「いいではありませんでんか。もう少しだけあの二人を見守りましょう」


 男は女神の考えが理解出来ず頭を抱えるも、当の本人である女神は嬉しそうに微笑み二人を観察していた。

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