8話~ブレイク~
さて、とりあえず、着替えは終わった。
クローゼットに入っていたのは、もともと私が着ていた服とデザインは大差の無いものだった、わざわざ用意してくれたのだろうか?
しかも、コートや手袋、ポーチまで……
さらには、荷物にも投げナイフが補充されていた、このナイフ、銀製で退魔加工、私の使った投げナイフに退魔加工を施したものより、遥かにいいものなんだが……
いや、ナイフに限らず全体的に、もともと私が使ってたものより、いいものみたいだけど……
一応、報酬とは関係のない、迷惑をかけたお詫びとして、ということが書いてある紙も一緒に置いてあったが……
まあ、そうゆうことなら、遠慮なくもらっておこう、もちろん報酬も、もらえるだけ、もらうつもりだ。
コンコンと、扉をノックする音が聞こえた。
「綾香様、御夕食の時間になりました、大丈夫でしょうか?」
「……大丈夫です」
どうやら、もうそんな時間らしい、私は返答した後、少し迷ったが、コートと手袋はつけないことにした。
夕食ということだ、上着を着たままというのも、どうかと思うし、手袋をつけたままだと食べにくい。
扉を開け、部屋を出る、そこには咲夜さんが立っていた。
私を見て一瞬止まったが……
まあ、普段は人里でもずっとコート着ているからだとは思うけど、流石に夏の暑い日までコート着ているわけでもない、包帯は外さないが……
「……では、こちらに」
「はい」
とりあえず、咲夜さんに案内されるままにね、どうせわからないし。
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食事中は特には何もなかった、私自身、食事をとることに問題はなかったし。
強いて言えば、門番の…………美鈴さん?
だっけかがいなかったり、レミリアさんとフランの料理と、私の料理が違ってたり、それくらいだ。
今は最初にレミリアさんと会話した部屋、そこに集まっている。
私の能力について、それと、報酬の話しのためだ。
流石に、ポーチは身につけて来た。
「さて、能力のこと、話してくれるかしら?」
「……はい、でも、全部は話しませんよ」
「ええ、わかってるわ、それと、私に対して、敬語はいらないわよ?」
「え? でも……」
なんというか、怖いのだが……
「フランのことは、呼び捨てにしてるんでしょ? だったら、私に敬語使う必要はないわ」
「……まあ、そうゆうことなら」
妹を呼び捨てにしてるからって、姉も呼び捨てっていうのは、どうかと思うけど……
私としても、敬語はめんどくさいから、いいか。
「お姉さまは、寂しいんだよね!」
「……フラン、貴女、なにを言っているのかしら?」
「おや、私の記憶が正しければ、妹様だけ呼び捨てなんて、羨ましいと、おっしゃっていたはずですが」
「さ、咲夜までなにを言い出すの!?」
「私は、事実を言ったまでですが」
「私もホントのこと言っただけだよ?」
「……なるほど、レミリアは妹に嫉妬したと」
「ああ、貴女まで!? わ、私は嫉妬なんて!?」
「……そうですか、では、レミリアさん、私の力についての話を」
「だから、私に敬語は使う必要ないと」
「必要がないだけで、別に敬語でも構わないですよね?」
「そ、それは……」
「お姉さま、素直になったら?」
「わ、私は素直よ、フラン」
「お嬢様、素直に言わないと、ずっと敬語を使われると思われますが」
「う、うー……」
……なんだこれ、楽しい、レミリアってこんなんだったのか、怖がって損した。
「……さて、いじるのはこれくらいにして、能力のこと、話しましょう」
「い、いじる!?」
「はい、そうですね……ああ、綾香様、私にも敬語は必要ありません」
「……まあ、主を呼び捨ててんのに、従者に敬語ってのもおかしい話ね、わかったわ、咲夜」
「はい、それでは、能力のこと、お聞かせくださいますか?」
「ええ、さっきも言ったけど、全部ではないけどね」
「ちょ、ちょっと! 私のこと無視して話を進めないで!?」
「どうしました、レミリアさん」
「だ、だから、敬語いらないわよ!?」
……涙目になってる、可愛い、目覚めちゃいけないものに目覚めそう。
「……まあ、本当にこれくらいにして、能力の話を始めようか、レミリア」
いい加減にしないと、話進まないし。
「そ、そう、それでいいのよ、じゃあ、話してくれるわね」
「ええ、もちろん、質問は後で聞くので、まずは最後まで聞いてよ」
さて、始めようか、私の力のはなしをさ。