7話~噂をすれば~
「……ッ……わた……しは……?」
目覚めると、全く見覚えのない部屋のベッドに横たわっていた。
「えっと……どうしたんだっけ……?」
確か、フランさんに、勝利宣言して、そのまま倒れたんだっけ?
……勝ちって言えるのかな、アレは。
うーんと、傷はないか、あれ使ったしな。
ありゃ、包帯まいてないし……いや、自分で外したんだけどさ、肩から指先まで、全部まくの大変なんだよな……
あ、コートどうしよう?
ポーチもだ、あれ、結構高いのに……
というか、幻想郷にあるのか……?
しばらく考え込んでいると、ガチャりと、扉の開く音が聞こえた。
「……どうやら、お目覚めになられたようですね」
「咲夜さん?」
ちょっと驚いた……
って、冷静に考えたら、ここ多分紅魔館だよな、何もおかしくないのか……
「あまり、ご無理はされぬ様に」
「あ、その、あれからどれくらい……?」
「二日ほどですね」
「二日ですか……」
結構長く眠ってたようだ。
「体に目立った外傷はないのに、一向に目覚めないので、妹様も心配しておりました」
「……妹様? ああ、フランさんですか?」
あそこまでやっといて、私よりも早く目覚め、しかも、私の心配まで、流石吸血鬼、なのかな……?
「はい……ああ、ご心配なく、妹様はあの後、すぐにお目覚めになり、もう、回復しています」
「そうですか……」
いや、別に心配はしてないけど……
その時、静かにだが、扉の開く音が聞こえた。
「……ねぇ、咲夜? 綾香は大丈夫?」
噂をすればなんとやら。
「あ! 起きたんだね! よかったぁ……」
「フランさん……」
そうだ、ちょうど聞きたいことが……
「あ、アレは綾香の勝ちだよ? 私の方が、先に気絶しちゃってたし」
「……そうですか、ありがとうございます」
聞く前に答えられた……
「ねぇ、綾香、私のこと呼び捨てでいいよ? それに、敬語もいらないからね」
「いえ、ですが……」
「お願い、あんなに楽しく遊んだんだしさ、ね?」
「はぁ……まあ、わかったわよ……フラン、これでいい?」
確かに、私としても、あんなに世界が楽しいものだとは思わなかったし。
「うん! あ……よかったら、また、遊んでくれる……?」
「……あんなにキツいのでなければね」
流石に、遊ぶ度に死にかけるのは、ごめんよ……
「うん、弾幕ごっこはやりたいけど、今度は、もっとちゃんとルール決めてからにしよ? なんなら、綾香は無制限、私は制限ありでもいいから」
「……まあ、それなら」
弾幕ごっこはまあ、私も最後は、楽しんでたし。
「あ、でも、殺生石だっけ? アレは使っちゃダメだよ? 今まで寝てたのだって、それのせいでしょ?」
「……そうね」
本当に鋭い、なんなんだ、この子……
「あ、そうだ、能力について聞いてもいい? やっぱり気になるよ」
「いや、それは……」
まてよ?
もしかしたら……
「そうね、少しなら話すわ」
あの条件を、満たせるかもしれないし。
「ホントに! ありがとう!!」
随分と、嬉しそうな……
「……私は席を外した方が、よろしいでしょうか」
あ、忘れてた。
「ああ、そうですね、レミリアさんにも、話そうかと思うので、構いませんが……」
「あ! それならさ、今じゃなくて、後でみんなで話そうよ、起きたばっかで、綾香もまだ辛いでしょ?」
「……そうね、そっちの方が楽ね、でも、いいの?」
「いいよいいよ、お楽しみは後に取っておくってね!」
「そう……」
本当に良く分からない子だ。
「……かしこまりました、それでは、後ほど……そうですね、御夕食の後にお話を、構いませんでしょうか?」
「はい、それと、その、私の荷物と包帯は?」
「綾香様のお荷物は、あちらの戸棚に、包帯もそこにおいてあります、着替えは、あちらのクローゼットに」
「あ、ありがとうございます、着替えまで」
「いえ、着替えに関しては、完全にこちらが悪いので」
「うう、ごめんね、綾香……」
「ああ、そんな気にしなくてもいいよ……アレは仕方ないし」
「うん、ありがとう……」
「……それでは、御夕食の時間になりましたら、お呼び致しますが……その、大丈夫でしょうか?」
「あ、大丈夫です」
考えてみれば、二日も眠ってたのに、いきなり食べるのはキツいか?
いや、多分大丈夫だけどさ……
「かしこまりました、それでは、これで」
「あ、私も、もう行くね、また後でねー!」
そう言って、二人は去っていった。
……さて、包帯まいとかないと。