5話~少女の力~
「……四対一とか、卑怯じゃありません?」
「相手の能力」
「使えなくして」
「自分が使うなんて」
「卑怯じゃないのかな?」
……それもそうだが。
わざわざ別々に話す必要はあるのだろうか……?
「……そうですね、では、遠慮なく使わせてもらいましょう」
もう一度、"目"を……!
「きゅっとしてドカーン……なんてね」
握りつぶす!
「きゃぁ!? もう、痛いなぁ!!」
やっぱり、ダメージを与えることしかできないか……
でも、さっきよりもダメージを与えてる?
もしかして、偽物になら……!
「……どうやら、偽物と本物では、耐久力が違うようですね、劣化した能力でも、偽物なら、破壊出来そうです……!」
きついけど、それなら、使う!
目を……!
「きゅっとし……ッ!」
こんな時に!?
「……あれ?」
「どうしたの?」
「使わないの?」
「……ふーん? おかしいねぇ? さっきまで見えなかった"目"が見えるようになってるよ?」
「ああ、そっか」
「時間制限あるんだね?」
「あなたの能力は、触れた相手の能力を一時的に奪う能力かな?」
「うーん? それだと、ナイフが説明つかないね?」
「そうだね、多分だけど、触れて指定した物を、一時的に操れるんじゃないかな?」
「そういえば、私に触れてから、ナイフは操ってないね、アレは驚いて当たっちゃっただけだし」
「うん、きっとそうだ、他にも制限はあるのかもしれないけど」
「あ! 最初にナイフ操ってから、右腕動かしてないよね?」
「ホントだ! そう言えば、右腕、少し短いよね、義手か何かなのかな?」
「ということは、同時に一つしか、操れないのかな?」
「多分ね、今度は触れないようにしなくちゃね」
「大丈夫じゃない? さっきはスペルカード使ってたし」
「ああ、そっか、なら大丈夫だね」
「でも、ナイフには、気を付けないとね」
「そうだね」
…………なんなんだ、この娘は、一人で会話して、しかも、私の力について、近いところまで……、頭はいいのかな?
でも……
「そんな、悠長に会話してていいんですかッ!」
投げる!
「おっと、もう、くらわないよ?」
フランさんが手をかざし、握り締める。
それと同時に、私が投げたものが、破壊される。
……まさか、こんなのに引っかかるなんてね!
「きゃ!?」
「げほっげほっ……!」
「なに……これ!」
「煙幕!?」
そう、私が投げたのは、ナイフじゃない!
「ふふ、一箇所に固まっていたのが、運の尽きでしたね……」
これを……
「くらえっ!」
―人符「鬼の腕」―
ただ、思いっきりぶん殴る!
「ぐっ!?」
「な、なに!?」
「何が起きたの!?」
「ふう……さあ、ここからですよ!」
煙幕が晴れる、一人だけ吹っ飛んだフランさんの姿が見えた、よかった、ちゃんと当たった……
「……その腕、義手かとも思ったけど」
「違うね」
「今はすごい力を感じるよ……」
「行きますよ……!」
これなら、なんとか……!
「ふーん?」
「確かにすごい力だね」
「でも」
「それだけじゃ、勝てないよ!!」
そう言って、一斉に飛びかかってくる。
ッ! やっぱり速い!
でも……
「ラァッ!」
今なら、ギリギリ避けれる!
「ん?」
「右腕だけじゃなくて」
「全体的に、身体能力が上がってるのかな?」
「まあ、そうじゃないと、楽しくないよね!」
ああ、吹っ飛ばしたやつも、もう戻ってきてるし……!
「……まだまだぁ!」
とにかく、殴って殴って殴りまくる!
「おっと」
止められた!?
「クッ!」
やばい、力が強すぎる、振りほどけない!?
「ほら」
―禁忌「カゴメカゴメ」―
「これを」
―禁弾「スターボウブレイク」―
「耐えられる?」
―禁弾「カタディオプトリック」―
スペルカードの同時発動!?
しかも、これって……!?
「逃がさないよ?」
クッ!そんな……自分ごと!?
「ぐぁぁぁぁっ!?」
スペルカードの同時発動による大量の弾幕が、襲いかかる。
その弾幕は、少女の姿を覆い隠すほどのものだった。
―――――――――――――――
弾幕がようやくやむ。
「……うぁ……ぁ……」
そこには、ズタボロになりながらも立ち続ける、少女の姿があった。
少女を捕まえていた、吸血鬼の姿はない。
「……へぇ? 」
「まだ、生きてるんだ?」
「くぅ……まだ……です……」
少女は、苦しみながらも、言葉紡ぐ。
「ふーん?」
「やる気?」
「これ以上は死んじゃうよ?」
「「「さっさと、負けを認めたら? そしたら、殺さないであげるよ?」」」
吸血鬼の冷たい言葉、しかし、少女は……
「……ふふ」
「「「ん?」」」
「ふふふふふ……アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
「あれ?」
「もしかして?」
「おかしくなっちゃった?」
「「「大丈夫?」」」
「ああ……大丈夫だよ……ただ、こんなに楽しいのは、初めてなのよ……アハハハハ!」
少女は笑う、退屈だと、つまらないと、思い込んでいた世界で、こんなにも、面白いことがあるのかと。
「……やっぱり」
「おかしくなっちゃったかな」
「もう、いいや」
「「「……死んじゃえ」」」
吸血鬼は、手をかざす。
「死ぬ訳には……いかないわ……」
「「「……? 負けを認めるのかな?」」」
吸血鬼の手が、止まる。
「違う……ただ、初めて、全力を出すことにしたのよ!!」
少女は、ペンダントを握り締め、叫ぶ。
―解呪「殺生石の欠片」―
途中から、三人称?みたいな感じに書いてみましたが、どうでしょうか?
次回もこんな感じだと思います