2話~新たな日常~
「ふふふ、面白いものが見えたわね……咲夜!」
「ここに」
「人里に外来人が来たらしいわ、ここに呼んできなさい」
「かしこまりました」
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「おはようございます」
「お! おはよう! 今日はこれを運んでくれるかい?」
「はい」
あれから一週間ほどたった、あの後は慧音さんの家に二日ほどお世話になり、その後、人里の外れにある、空家を借りることになった。
慧音さんにお世話になってる間に、この世界……幻想郷について、いろいろと教えてもらった、慧音さんの友人という方にも、一度だけお会いした、なんというか、いろいろとありそうな人だったな。
家を借り、移り住んでからは、何でも屋まがいのことをしている、主な依頼は荷物運び、外の世界よりも文明が遅れている幻想郷では、ただ荷物を運ぶだけでも、大変なのだ、充分な収入になる、ただ……
「しかし、嬢ちゃん、相変わらず、すごいねぇ、そんなほっそい体で、こんなに重い荷物運んで」
「……まあ、力はありますから」
「ま、無理はすんじゃねぇぞ? まあ、こんくらいなら、大丈夫だってのは、もうわかってるがよ」
「わかっています、それでは、また後で」
この世界も退屈だ。
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今日も、同じようにただ日常を繰り返し、家に帰るだけ、そう思っていた。
「あれ?」
珍しいことに、その日、依頼箱に二通の手紙が入っていた。
一応、私がいない時のためにと用意していた物だが、人里はそこまで大きくはなく、ほとんどの人が顔見知りだ。
最初こそ少しは使われたが、今では、ほとんど同じ依頼を受けているので、偶に違う依頼を受けるときも、出先で直接が多い。
だから、依頼箱に手紙が入っていることなんて、ほぼないのだが……
「さて、どんな依頼かな?」
まあ、どうせ、退屈なことには変わりないのだろうけど。
手紙を確かめる、一通は見覚えのある、何故かイラつく封筒。
もう一通は、まるで格式張った、招待状みたいな、封蝋のされた物だった。
「はぁ……」
思わず溜め息をつく、嫌なことから先にと思い、見覚えのある、封筒を開け、内容を確かめる。
――この依頼は必ず受けること by.あなたのゆ☆
思わず破る、ついでに後で焼き尽くしてしまおう。
しかし、必ず受けろとは、なんだろうか?
一応、確認はしたが、この手紙には、依頼など書いていなかった、もしかして、もう一つの手紙の?
そう思い、残った方の手紙も確認する。
――このたび、貴女様を館にご招待する事になりました、明日の夕刻頃、お迎えにあがります。是非とも、お越しいただければ幸いです――
……どうやら、必ず受けろとは、こっちのことでよさそうだ、差出人は不明、実際に来るのを待つしかないか。
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その日、私はいつも受けている依頼を、全てキャンセルし、準備を始めた。
全く知らない場所に行くのだ、何もしないよりはマシだろう。
とはいえ、特に準備するものはないのだが……
ある程度の買い物を終えて、家に戻る、そこで、普段は身につけていないペンダントをコートの下に、隠すように身に付ける。
これで準備は終わりだ、後は迎えを待つだけだ。
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「はじめまして、私は十六夜咲夜ともうします」
「……木藤綾香です、迎えとは、あなたのことで、いいんですよね? 依頼はお受けします」
なんというか、メイドって、実在するのね。
「ありがとうございます、それでは、さっそく館へと御案内させていただきますが、木藤様は空を飛ぶことは出来るでしょうか?」
「……飛べませんよ、それと、苗字で呼ばれるの、あまり好きではありません」
聞いてはいたが、幻想郷では空を飛べる人間がいるようだ。
私には、今はできないが。
「承知いたしました、それでは、綾香様、こちらにおつかまりになって下さい、決して、手を離さぬよう、お願いします」
「……はい」
どうやら、咲夜さんにつかまって、空を飛んでいくことになるみたいだ。
……大丈夫だろうか?
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「大丈夫でしょうか?」
「……大丈夫です」
正直、結構怖い。
「もう少しで、到着します、あそこに館があるのが、見えますでしょうか? 」
「……はい」
なんというか、ずいぶんと紅いものだ、人のことは言えないが、悪趣味な……
とはいえ、これでようやく、地面に降りれそうだ。
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「美鈴、門を開けてくれますか?」
「……それでは、そちらの方が?」
「ええ、美鈴、御挨拶を」
「はい、私、紅魔館の門番をさせていただいている、紅美鈴ともうします」
「……木藤綾香です、名前で呼んでください」
……洋館に似つかわしくない、チャイナ娘だ、いや、人のこと言えないが。
「かしこまりました、では、今開けますのでお通り下さい」
そう言って、美鈴さんが、門を開ける。
「それでは、ついてきて下さいませ」
「……はい」
さて、紅魔館ね、話しだけは聞いたことがあるけど、悪魔の館だっけか、危険な場所らしいが、どうなることやら。