プロローグ~退屈な世界~
……ここはどこ?
夢から覚め、私が最初に口にしたのは、そんな、あまりにも感情のない言葉だった――
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少女はいつもどおり、ただ、歩いていた。
黒く長い髪、濁ったような感情のない黒い瞳、まるで。それを隠すような、大きめの黒いコート、そんな服装に似つかわしくない、可愛らしいポーチ。
そんな、いつもどおりの姿で。
「はぁ……」
思わず溜め息をつく、退屈な日常、平凡な日々。
私にとって、とてもつまらない、この世界。
「あ! 危ない!!」
そんな声が聞こえ、私は無機質に上を見上げる。
落ちてくる看板、それをただ、見つめる。
看板は、まるで私を避けるかのように、私の真横に落ちた。
「うわ!? よ、よかったぁ……、大丈夫なのかい?」
私は、そんな声を無視して、歩いていく。
「ちょ、ちょっと!」
ただ、無視して、進んでいく。
声はいつの間にか、聞こえなくなっていた。
「……はぁ」
やっぱり、この世界はつまらない。
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その日、不思議な夢を見た――
――ねぇ
なにか、声が聞こえた気がした。
――この世界は、そんなにつまらないかしら?
ああ、つまらない、少なくとも、私にとっては。
――貴女の力、人間とは言えない体、異能の力、さぞ、生きていくのは、辛いでしょうね、この世界では
この声は、なんなんだろう、私をどこまで、知っているのだろう。
――ねぇ、もしも、貴女が生きていける世界があるとしたら、どうします?
そんなの決まっている、私は今、この世界で生きているんだ、他の世界とか、どうでもいいことだ。
――ふふふ……、退屈だと、つまらないと、そう言い続けるのに、この世界で生きていこうとするのね?
あたりまえのことだ、そんな都合の良いことなんて、ないんだから、私はここで生きていく。
――もしも、そんな都合の良いことが、あるとしたら、貴女はどうします?
それでも、私の答えは変わらない、ここで生きていくだけだ。
――そう……、残念ね、でも、貴女には拒否権なんて、存在しないのよ?
そんな言葉を最後に、声は聞こえなくなった。
それと、同時に、私の前に、無数の目が見えた気がした。
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そして、目が覚める。
「……ここはどこ?」
そこは、私の全く知らない世界だった。