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《君の名は?》 ~煙草と清酒のある風景~

日本一周日帰りの旅のその次は?

作者: 白い黒猫

トムトム様の企画、『バカンスに行くザンス』企画参加作品です。

清酒さんと煙草さんの二人のその後の雰囲気を楽しんでいただけたらと思って書いています。こんな日本一周旅行もいかがでしょうか?

 残業をこなし帰宅して玄関あけても、珍しく何の反応もない。いつもならばパタパタと足音がして満面の笑顔でやってくるというのに。リビングの灯りはついている事から中には妻のわかばがいるのは確実。

 俺は首を傾げながらリビングにいくと、わかばはテーブルに資料を広げてうつ伏して寝ていた。そのまま寝かせてあげるにしてもこの体勢はかえって疲れそうなのでソッと肩を叩き起こす事にする。するとガバッと体を動かし首をキョロキョロさせる。と、いきなりスイッチが入ったように動き出す。

「正秀さんごめんなさい! お帰りなさい! ご飯! そうご飯よね! 今作るから」 

 俺の姿を認め慌てたように立ち上がる。

「いや、君はもう休んでいて! 食べるものくらい適当に作って食べるから!」

 そう言うと、わかばは目を見開きとんでもないと頭を横に振る。一生懸命な所がこの子の良い所。でも流石に疲れてグッタリしていた妻に、『じゃあお願い』とは言えない。

「もう殆ど出来ているし、メニューも決まっているの! 盛岡冷麺に宮崎地鶏じとっこに、海ぶどうと、辛子レンコンに、海藻サラダ」

 俺はその色んな意味でめちゃくちゃなメニューにどう反応するべきか悩む。そんな俺の横をパタパタとキッチンに行ってしまう。視線を向けると殆どの料理は出来合いのモノばかりでもう器に盛られていたようだ。ならばわかばもそこまで大変でもないだろうと少し安心する。盛岡冷麺をゆでる為にお湯を予め溜めておいた鍋にわかばは火をかけていると俺の視線を感じたのかわかばは此方を見て、悪戯がみつかった子供のように笑う。俺と話している内に目も覚めてきたのかいつもの笑顔に戻っている。

「今日の取材で仕入れてきたの。コレら」

 そう簡単に説明する。


 そして着替え食卓についた俺に、わかば今日の武勇伝を語りだす。

 今日彼女がしてきた取材は、雑誌でのチャレンジ企画。『日本一周日帰りの旅』。といってもコレは本当に旅をしてきた訳ではない。都内に点在している地方サテラナイトショップを巡り旅行気分を味わおうというモノであった。


 妻は最初に出版社の近くにある飯田橋で『青森県』『徳島県』『新潟県』を巡り、次に新宿に行き『宮崎県』『沖縄県』『埼玉県』のショップを楽しみ、赤坂見附に向かい『栃木県』を訪問、そのまま日比谷に向かい 『石川県』『兵庫県』『三重県』『鹿児島県』と精力的に周りそのまま有楽町まで歩き交通会館にある『北海道』『滋賀県』『滋賀県』『和歌山県』『長野県』『福岡県博多』によりさらに銀座まで歩き『大分県』『山形県』『群馬県』『福井県』『広島県』『熊本県』行ってから新橋まで歩いて『香川県』に行き、さらに日本橋に足を延ばし、『福島県』『山梨県』『奈良県』『山口県』『島根県』を訪れて、最後東京駅周辺にある『京都府』で終了したらしい。


「一日で30都道府県巡るってスゴイと思わない?」

 ドヤ顔で笑うわかばが可愛くてつい笑ってしまう。

「しかも、北へ南と日本地図でいったら無茶苦茶なルートだな。そりゃ大変だ」

 わかばは、ウンウンという感じで頷く。

「銀座・日比谷・有楽町に集中していたからコレだけテンポよく回れたんだと思う。でもトランクを手に二人で行ったとはいえ、荷物もだんだん増えていくし。最終的に海外旅行帰りのような荷物になってそれが重くて」

「配送してもらえば良かったのに」

 わかばはフーと息を吐き、首を横にふる。

「実際に読者にもお薦めするコースとなっていうので、本当に一日でコレだけ回れるか、プレ取材でお店の人がおすすめした商品を持ったまま回る事できるのかという事も含めてのチェックも兼ねた取材だったから。それプラス、美味しそうなモノ個人的に買っちゃったしね」

 なる程、本日の食卓に上っているのがその個人的に買ったもののようだ。

「そうそう和歌山のショップは梅干しのラインナップがすごいの! しかも、全て味見出来るから、お気に入りの一品が必ず見つかるという感じ! 今度一緒に行ってみない?」

 楽しそうに語るわかばの話なに頷きながら目の端にソファーに散らばる旅行案内のパンフレットが目にはいる。それぞれの場所で貰ってきた資料なのだろう。

「銀座周辺にはサテライトショップ多いから、そこだけで巡るのも楽しいよ! 今度は二人で行きたいな」

 そう元気に話しかけてくるわかばの言葉に、どうしたものかと悩む。わかばは、サテライトショップ巡りが楽しかったから誘ってくれているのだろう。

「それも楽しそうだね。でも二人で本当の旅を楽しみたいかな」

 どうせ二人で行くならば、旅気分ではなく旅を本当に楽しみたい。考えてみたら、新婚旅行からあっという間に時間が経ち何処にも旅行をしていない。しかも来月は一回目の結婚記念日でもある。思い付きで出た言葉だったが、俺はコレだと最高に楽しい記念日を演出できそうである。わかばも、俺の言葉に顔を輝かせて嬉しそうだ。

「いいね! 何処いく?」

 その言葉に考える。目を動かした先に『温泉自慢のお宿』という文字が目に入る。温泉? どうせなら露天風呂付きの部屋あるような旅館とかに泊まって、二人でしっぽりするのも愉しそうだ。マンションのお風呂での、狭さならではの密着したバスタイムも悪くはないけど、二人っきりで温泉に浸かり、絶景を眺めつつイチャイチャするのは最高に楽しそうだ。

「温泉でのんびりというのも良さそうだね。最近二人ともバタバタして、ゆっくりとした時間過ごせなかったから、あえてそう言う旅も良いかな?  大きな休み取れる時は、観光を楽しむ旅館することにしてさ!」

 素直に俺の表向きの意見に無邪気な笑みで頷くわかばを可愛いなと眺めつつ俺は目を細める。

「いいね! なんか、凄くワクワクしてきた!」

 はしゃぐわかばにニッコリと笑い返し『そうだね』と答える俺。しかし内心は、わかば以上にワクワク、ウズウズしている。

 善は急げ。食事を終らせた俺は、ネットで直ぐに温泉宿を調べる事にする。

 食器の後片付けし終えたわかばが隣に座り覗き込んできて画面を見て目を丸くする。

「素敵だけど、高そうじゃない?」

「結婚一周年記念日だよ、だからこそこういう所で過ごしたい」

 わかばは俺の言葉に感動したように目を潤ませる。そしてピトっと、身体を寄せてきて『嬉しい』とそっと囁いてきた。抱きついてくる腕に彼女の柔らかく大きい胸が当たり俺の身体と心が少し熱くなる。

 こういう顔でこんな行動されると、誘われていると勘違いしそうだが、わかばの場合は素で喜の感情を出しているに過ぎず、俺がそこにウッカリ乗ると後で『エロ魔人!!』とブチブチ言われてしまう。まあそうは言っても本気で怒っているのではなく照れからきているのに過ぎず、可愛いだけから俺が気にする必要はあまりない。しかし今日はわかばがかなり疲れていそうなので我慢する事にする。それに今は楽しい温泉旅行について決めたい。

 二人で検討した結果、強羅にある露天風呂付きの懐石料理を楽しめる旅館に予約をいれる。

 俺は相談しながらまたウトウトしてきたわかばにちゃんとベッドで眠るように言い聞かせ寝室に送り出し、風呂に入る為に立ち上がる。  

 マンションのお風呂に一人で入りながら、旅行当日のスケジュールを頭の中で組み立てる。二時にチェックイン出来るようで、食事は部屋食。ゆっくりとタップリ二人で楽しめそうだ。まあ、彫刻の森美術館などを楽しんでから行くもよし、早めに宿でイチャイチャとするのもよし。近い観光地というのはこういう自由度が良い。色々考えていると、いつになく心を踊らせている事を実感する。来月が本当に楽しみだ。俺は風呂場で一人、ニヤリと笑う。


 この地方サテライトショップ巡りは、ここまで私は県数進めませんでしたが、一日でどれだけ回れるかをチャレンジして夫と二人で楽しんだ事があります。東京にいながら、様々な土地の雰囲気を楽しめるという事で、なかなか面白い場所ですよ! もしご興味があれば行かれてみて下さい。


 あと、あえて旅行計画だけの物語にしてしまいました。この続きを書くと、ムーンへと飛び出しそうなのでここまでの物語とさせて頂きました。

でも、わかばさんが今後の事も考えプレ取材を敢行してしまい、清酒さんの想定よりもラブラブ時間が若干削られてしまうという事もあり得そうです。そして蒲鉾博物館にて、清酒さんは職人顔負けの素晴らしい蒲鉾と竹輪を作り上げ尊敬されるという場面もあるかなと思っています。

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