6話目
最近なんだか兄の様子がおかしい。
今までは急に部活に乱入してきたりすることはなかったし、ここまで過保護ではなかった。
「ハル、だいじょうぶか?最近変な奴に口説かれてないか?なんかあったらおれが解決してやるから何でも言えよ?」
「ハル、今日は部活で遅くなるっていうから迎えに来たぞー。だからそっちにいるへらへら笑っている奴から離れなさい。」
「ハル、俺来週からハルの通ってる学校で教育実習だから、よろしくな。」
教育実習なんて今まで一度も聞いたことないし、そもそも教員免許を取ろうとしていたというところにびっくりした。
それに、なぜか男子部の人と二人きりになるタイミングで現れる。
二週間前にあった地区予選でも、試合前に一人でいたら伊射手君が急にあらわれて、いつものように話し始めた。
「どうしたの、何かきついことでもあった?」
「なんでも、ただいつもこうやって試合前に気持ちを落ち着かせてるの。今日は天気がいいから太陽にパワーをもらおうかなって。」
いつもなんとなくで行っているジンクス。
さすがに雨の日は無理だけれど、試合前に太陽光を浴びて深呼吸する。
気持ちが落ち着くのは、なんとなくだろうけどずっと続けていた。
「いいねそれ、俺もとなりでやっていい?」
振り向くと、思わず切り取りたくなるような笑顔で続けた。
「ちょっとでも遥佳のこと知りたいんだ。ダメかな。」
思わず、いいよと答え双になった。
でもその前に今までこの場にいなかった人の声がすぐ近くから聞こえてきた。
「ダメに決まってんだろ。こういうのは一人でするから意味があるんだよ。勘違いやローはとっとと試合いけ、ほかのメンバーが探してたぞ。」
「お兄ちゃん。」
「お兄さん、いつもいいところで現れますね、見張ってるんですか?」
「ンなわけあるか、お兄さんって呼ばれる筋合いはねえぞ。お前らの行動パターンなんてわかりきってるんだよ。さっさと行かないと危険ってことになるんじゃねえの?」
確かにそろそろ男子部の集合時間になる。
もしこのまま私と一緒にいたら間に合わなかったかもしれない。
「自分のこともちゃんとできない奴が俺の大切な妹にちょっかい出してんじゃねえよ。」
「・・・そうですね。じゃあ、またね遥佳。」
「てっめえ、呼び捨ても許可した覚えねえからな。あとで覚悟しとけよ。」
いつもは、大会は見に来ない。
なぜか地区大会だけには顔を見せ、そして肝心の私の試合の時には帰ってしまった。
いったい兄が何がしたいのか、わからなくなっていて、
「どうしたらいいのかな・・・」