23話目
インターハイ1日目、団体戦の予選。
「やっぱり緊張するね。」
「そりゃそうだよね、インターハイだもん。」
いつも以上に緊張していた。
いつもはあまり緊張しない私や千枝先輩でも緊張するのだからみんなはもっと緊張しているのだと思う。
「わたしね、インターハイ優勝したら篠田先輩に告白しようと思って。」
「え、まだしてなかったの?」
「もうてっきり付き合ってるんだと思ってた。」
「してないよ。どうしてそうなったし。」
「だってねえ、」
「そうだよ、デートの約束してるって言ってたし、もうてっきり付き合ってるんだと思ってた。」
昨日の夜ホテルで二人にはインターハイが終わった後の部活が休みの時に篠田先輩と遊びに行くことにしたと話していた。
どこに行こうか一緒に考えてほしかったからなのだが、二人にはもうすでに付き合っているのだと誤解させたらしい。
「で、デートはどこに行くの?」
「昨日行ったとおり水族館がいいよ。新しくできたとこでけっこう楽しいってクラスの子が言ってたし。」
「あーそうかも。今見たい映画もないならそこがいいんじゃない?」
「やっぱり水族館かな・・・先輩嫌いじゃなきゃいいけど。」
「水族館嫌いな人ってどんな人よ。」
「・・・うちの兄が嫌いで。何でも等間隔に何かが並んでてたり、それが動いたりするのが嫌いらしくて。」
今の説明だとわからないかもしれない。
「えっと、とにかく水玉とか魚の鱗とかそういうのが動いてるのがダメなんだって。一番気持ち悪いって言ってたのは蜂の巣なんだけどね。」
「アーわかる気がする。なんか気持ち悪くない?」
「え、うそ。全然わかんない。」
「私もわからなかったから。だから先輩がそういうのなきゃいいなって思って。」
「でも、篠田先輩がどこでもいいって言った時に水族館のことも言ってたんでしょ。なら問題なくない?自分の嫌いなところの名前出さないだろうし。」
「そうだよ。何かトラウマはあるかもしれないけど。」
そういった奈都の顔はちょっとさみしそうな顔で、どうかしたのか聞けなかった。
聞く時間が無くなってしまったというのが正しいのかもしれない。
「そろそろ召集だし行くよ。」
「おしゃべりはあとね。」
「「「はーい」」」
一立立ち目が始まる時間が近づいてきた。
大丈夫。
ここまできたならもうできることをやりきることしかない。
頬を軽くたたいて気合を入れ先輩の後に続いて控え室を出た。




