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20話目

場所は考えておいてくれと言い残して篠田先輩は自主練に戻っていった。


「ちょっと戻れる気がしない・・・」


でも限られた時間しかないし、なるべく早く戻らなければ。

だからといって赤くなった顔のまま戻るわけにもいかないから、まずは顔の赤さを取ることが必要。

それはわかっているのだが、


「ほんと、むり。」

「なにが、むり。なのよ」

「奈都、ちょっと待って今ちゃんと話せるようになってないから。」

「どうかしたの?篠田先輩と何かあった?」

「え、私、奈都に、はなした?」

「話してないけど、見てればわかる。普段はわかりずらいのにこういうときだけすごくわかりやすいの。」

「・・・」


話してもいないのに私が篠田先輩のことが好きということがばれている。

恥ずかしいのが顔をさらに赤くした。


「今まで彼氏との話聞いててもそうならなかったのに、どうして今回はそこまで顔を赤くしてるのよ。」

「どうしてって言われても、わかんない。ただ、今までよりも好きなんだなって思う。」

「そう。で、先輩と何かあったの?今男子レギュラーが立ちしててそのあと女子の立ちだから早めに話してね。」

「簡単に言うとデートらしきものに誘われた。」

「・・・はあ?いつ付き合い始めたのよ。」

「付き合ってない!まだ・・・」


そう戸惑っている理由の一つにまだ付き合っていないのにどうして私をさそうのかわからないというところもあった。

二人きりで遊びに行くといっていたところを見ると嫌われてはいないんだと思う。

むしろ好かれているほうなのではないかと思う。

でもそれらしい態度もしぐさも、話し方も何もない。

おそらく嫌われてはいないだろうと思っていたところにいきなり遊びに行こうと誘われたのだ。

びっくりするというか、何かあるのではないかと思う。


「ふーん。まあ、どうしてって考えていたってところかな?とりあえず立ち始まると悪いから行くよ。」

「うん。やばいなー集中できるかな。」

「大丈夫でしょ。楽しいイメージもちながらなら楽しく弓道できるでしょ。で楽しい弓道なら結果はついてくるって、コーチ話していたの忘れた?」

「忘れてはない。そっか、楽しいことが先にあれば楽しいよね。」


もしかしたら私の悩みにも答えてくれたのかもしれない。

篠田先輩にはそんな意識はなかったと思うが。

それでも、さっきまで悩んでいたことは心の中から消え去り、インターハイとそのあとのことで心が軽くなっているのがわかった。

このままインターハイに臨むことができたら、

いい結果が付いてくるのかもしれない。


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