9話目
県大会当日。
さすがに緊張しているのか先輩たちも表情が硬い。
私たちの学校のスペースには今はレギュラーメンバーしかいない。
ほかの部員たちは射場わきの観戦スペースでほかのチームの試合を見ているだろう。
「先輩。女子の一立ち目の結果出ました。うちは2位ですね。一位と一射差です。」
「ありがと。そろそろ男子の二立ち目始まるんじゃない?予選とはいえちゃんと応援しなきゃね。行こうか。」
一立ち目は何とか終わった感じがつよかった。
緊張のし過ぎであまり覚えていない。
それでもいつも通りの練習の成果が出せたのはわかる。
まだあ予選で二立ち決勝で二立ちある。
決勝は明日だけれど、気合を入れないと予選で負けることもある。
今目の前にあることに集中しよう。
そう意識して男子部の応援に行った。
応援といってもあたったときに「よし」と声をだし、皆中(一人が一立ちで4射射る、その4射が全部あたること)の時に拍手をする。
それ以上のことはすることはできない規則になっている。
でも、「よし」の声が聞こえるとうれしいし、皆中で拍手をもらえると見方には安心を、ほかの高校にはプレッシャーを与えることができるから十分だと思っている。
だけど、わたし応援することができなかった。
「ハル。」
兄がまさか県大会に現れるとは思わなかったから。
空と奈都と三人で射場脇に移動しようとしているとき、声をかけられた
「来ちゃった。」
語尾にハートマークが付きそうなかわいらしい声でそう言われてしまったら、私は何も言えない。
「来てくれてありがとう。」
そうやってお礼をすることしかできなくなってしまうかわいらしさで、ああほんとにわたしはブラコンなんだなとつくづく思う。
「遥佳、先に行ってるね。」
「あ、うん。ごめんね。」
「いいよ、先輩たちにも言っておくから大丈夫。」
二人に応援は任せて私は兄の案内をしなければ。
「弓道の大会の進み方よくわかんないんだよね。ハルはまだ競技じゃないの?」
「うん、今男子の二回目始まったとこで、私はそのあとの女子の競技の最後の前に競技だから。一回目今終わったばっかりだよ。」
「そっか。タイミング悪かったなー」
「待っててもいいけど時間あくよ?一人で来たならちょっと暇かも。一回外出てくる?あと一時間以上はあくの。」
「あ、大丈夫大学の弓道部のやつと一緒に来たからハルの競技の前までどんな感じで試合が進むのか教えてもらおうと思ってるから。ありがと。」
そのあと兄が一緒に来た弓道部の彼女に衝撃を受けることを私はまだ知らない。




