8話目
「千枝先輩、瑛美先輩、優香先輩!」
「どうしたの空ちゃん。」
「絶対インターハイ行きましょうね!」
「え・・・」
「この六人でならできます!絶対」
「う、うん。がんばろうね。」
「はい!」
次の日の部活で、急に空が先輩たちに宣言した。
つまり昨日の私の考えを聞いてのことなんだとは思うがなぜそう急に言い出したのかわからないといった顔の先輩に申し訳なくなった。
「遥佳は練習しててもいいよ、先輩たちのフォローは私がするから。」
「奈都、ごめんね。」
私がフォローしなければならないのはわかるがそうすると昨日二人に話したことをもう一度先輩たちにも話さなければならない。
それはなんだか気恥ずかしくて、奈都がフォローしてくれるというなら大事にはならないと思うしお任せすることにした。
私がレギュラーメンバー6人の中で(弓道の団体競技は5人立ちのことが多い。大会に登録できるのは6人で、もう一人は補欠になる。)任されている大前は立ち位置としては1番前。5人の中で一番最初に矢を射ることになる。
だからこそ緊張するし、大前が調子よくないとチームの調子が上がらないこともある。
だからこそ、うちの部では一番マイペースにレギュラーメンバーの中で一番マイペースに弓を引くことのできる人間が大前になることがおおい。
「周りを気にせず、いつもの射をすることができる。それはあまり緊張感に襲われない人間が一番いい。だから遥佳が大前だ。」
コーチにそう言われたのは地区大会のレギュラーを決めた日。
毎日部活をがんばっていた。男子に口説かれようと無視して。
その結果がレギュラー。そして大前。
興奮したし、その分プレッシャーも感じた。
だからこそ、日光を浴びる時間が増えたし、その時間を邪魔されたくなかった。
こう考えると、兄があの時乱入してくれたのはほんとによかったのかもしれない。
県大会に出ることになって、プレッシャーはましたけれどその分居残り練習をして今まで以上に努力する。
そうすることで自分を、自分の努力を信じることができそうだからそうすると決めた。
「遥佳!」
一手終わって戻るとレギュラーメンバーがそろっていた。
「絶対インターハイ行くよ!目標はその先、全国制覇だからね!」
なんだか話がすごく大きくなっている気がする。
でもそれが楽しくて、
「はい!」
返事をしたら、思ったより大きな声が出て笑ってしまった。
このまま来週の県大会に行けたらきっといい結果が出る。
不思議とそんな予感がした。
「よし、『先輩たちとの思い出』スチルも回収だな。」




