夢の中で逢いましょう。
夢の中で逢いましょう。
そう溢した夜に
ひとり浮かんだ月は
ひとつため息をついて
星に願いを託してくれた
寝静まってしんとした街
目が合ったしろねこ
目を奪われて
いつの間にか知らないところまで歩いていた
銀色に光る霧が立ち込め、
夜にだけ咲く花がひとひらはらり。
ふわりと白い花弁は
さっきのしろねことおんなじくらい
あたたかくてやさしい色
そっと花弁を掬い上げれば
じんわりと光りだして
まだ見ぬ場所へと誘う
光に手を引かれて歩くと
霧の奥でそよぐ風は
あなたに髪を撫でられるようで
胸の奥で暖炉の火が灯された
足元に広がったのは
月明かりが映った湖
水面にそっと触れると
月の幻影が揺れ
音が響き渡ってゆく
このさざなみに託したら
あなたに届くかな
そっと
呟いた言葉に答えるように
ねこの鳴き声がひとつ
後ろを振り返れば
雪の妖精が一匹
「つれていってあげるよ」
そう言うように
湖の中へ
しろねこを追う
あの真っ白な背中についてゆく
月がだんだんと地面に吸い込まれてゆく
浮かぶ金平糖は
薄白へと変わり始めた空の明るさに
金平糖は安心して目を閉じ
すやすやと眠り始めた
ふと足を止めたその先で
あなたがゆっくりと振り返る
月明かりのようなやわらかな微笑みが
こっちへおいでと手招きする
──ああ、これは夢だ。
すべて幻のやさしい夢
けれど確かに触れた気がした
白い花弁の美しさに
あのしろねこの毛並みに
あなたの微笑みに
目醒めればもう会えないだろう
きっと遠い夢になって
すぐに忘れてしまうだろう
でも
それでもいい
また夜がくれば触れられるから
夢の中で逢いましょう。
あなたは静かに頬を撫で
光の粒に溶けていった
空には月の代わりに
朝日が吸い上げられている
夢の中で逢いましょう。
きっとまた、
あのやさしい夢の中で。
ご覧いただきありがとうございました。
きっとまた、夢の中で逢いましょう。
誰かに届きますように。




