不思議な雨男
梅雨に入り、連日雨続きだった。
市内には大雨警報が発令され、全学校が休校となった。 子供たちは歓喜の声をあげた。
このままずっと学校が休みだったらいいのにと、小学5年生のタカシは家でずっとテレビゲームをしていた。 ゲームの中に見慣れない傘のアイテムがあり、押すと 画面が雨模様に変わり、いつの間にか見知らぬ男が正面に立っていた。 男は、「坊や、雨がたくさん降って喜んでくれていたね。」 「おじさんがもっといっぱい降らせてあげようか。」と言った。 タカシは、「うん、もっといっぱい降らせて。」と頼んだ。 いつの間にか、おじさんは消えていなくなっていた。
翌朝も、次の日の朝も雨が降り続けた。 市内の学校は全校休校となり、子供たちは歓喜した。 困ったのは仕事に行くお父さんたちだった。 列車は運休となり、お父さんたちは自宅待機となった。 雨はその後も止むことなく降り続けた。 さらに困ったのはお母さんたちだった。 道路が至る所で冠水し、やがて、トラックなどの流通も滞るようになり、 スーパーなどでの食料品や日常品などが不足するようになった。 当然、家庭での食卓に並ぶおかずも乏しくなった。 それだけではなかった。 河川から水があふれ、冠水する家や洪水に流される人たちが現れた。 そしてタカシの友達のかっちゃんも水に流されて行方不明になった。
タカシは大変なことになっていると初めて気づいて、ゲームの傘のアイテムを押して、 男を呼び出した。 男はあのときのようにタカシの正面に立っていた。 男は、「坊や、どうだい。学校が休めてよかっただろう。」と言った。 タカシは「おじさん、もう雨を降らせるのを止めて。」 「そして、行方がわからなくなったかっちゃんを戻して。」と頼んだ。 おじさんは一瞬悲しそうな顔をしたが、 「わかった。きょうはゆっくりお休み。」とタカシに言うと、いなくなった。
翌朝、雨は止んでおり、何事もなかったかのように道路の冠水も洪水であふれた河川も、洪水で冠水した家々も元に戻っていた。 食卓もいつもの朝食に戻っていた。 タカシはお母さんに何が起きたのかを聞いた。 そしたら、驚くことに、今日は最初に学校が休校になった翌日で、 雨が続いた日の時間が何事もなかったかのように巻き戻されていた。 そして、いつもどおり、かっちゃんと一緒に学校に行った。
おしまい




