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2度あることなら2度目で変える! ~残念スキルも逆手にとって、今日の未来をやり直す~  作者: 盛嵜 柊 @ 『シド』書籍化進行中
第二章

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27. 同じ反応

 こうして捕まえた強盗たちは素人であった為、その後あっけなく終わりを迎えた。


 始めはしらを切っていた者たちも、その後所持品から刃物や鈍器など物騒な物が見付ったため、観念して自白するに至る。

 その供述によれば、この4人はいつも仕事もせずに賭け事ばかりしており、そこで知り合った仲間だという事だった。そして4人が4人共金に困り、今回の強盗を計画したらしい。

 今日襲うはずだった家には年配の夫婦2人が住んでいる事もわかっていて、金目の物があるはずだと下調べすらしていたようだった。


 1度目の時にそれを発見したのは見回り中の団員で、通りかかった際に怪しい物音に気付き家の扉をノックしたところ、この4人が飛び出してきてそのまま逃げ切られてしまったという事だった。

 その後駆け付けたレイン達は、殴られて拘束されていた夫婦の怪我の処置と逃げた男達の行方を追って明け方まで動いていたが、結局は捕まえる事が出来ずに金品も取られてしまった。

 強盗としては素人であったが、1度目は計画通りとまでは行かぬまでも上々の出来だと彼らは思った事だろう。


 こういう輩は一度成功すると味をしめ、2度3度と繰り返す事になるのだから、今回は怪我人も出さずに強盗も未然に防ぐことができたのだと、レインもひとまず肩の荷を下ろしたのであった。



 -----



 それから数日後、レインは休暇日となった。


「おはよう。今日は?」

「おはようギル、今日はルーナ(1度目)だ」


 いつもの挨拶を交わし、レインとギルノルトは朝食を摂りに食堂へ連れ立っていく。

 しかし生憎な事に今日は朝から雨が降っており、レインは宿舎から騎士棟へと続く渡り廊下から空を見上げてため息を吐いた。


「雨だな…」

「今日の任務は、雨具着用か」

 面倒だなと口をへの字に曲げるギルノルトに、レインは苦笑する。


 確かに制服の上に更に雨用の外套を羽織れば、それだけで視界も狭くなり動きも制限される。任務中にはなるべく雨は降って欲しくはないが、そうも言ってはいられないのである。


「レインが休暇で羨ましい。雨の日は部屋で寝ていたい…」

「確かに面倒だが、こればかりは仕方がないぞ? 俺だって天候が分かっていて休暇を取っている訳ではないからな」

「流石のレインも、天気までは…だな」

「ああ、限定的だしな」

「直前じゃ意味がないもんなぁ」


 ギリギリの会話を交わしつつ天気に文句を言いながら食事を済ませ、その後は任務に就くギルノルトを見送りレインは再び部屋に戻った。


 今日はこんな天気でもあり、いつも剣を教えている子供達も外では遊べないだろう。

 その為今日レインはゆっくりと部屋で武器の手入れをする事にして、夕方から情報を集めに街へ出る予定を立てたのだった。



 そうして過ごしたレインは夕方になってから外套を羽織ると、いつもの酒場に向かった。そんな街中も今日は一日中雨のため、既に街灯は灯っており人も疎らだ。

 レインは足早に、いつものつどい亭に到着する。


「いらっしゃいませ。空いている席にどうぞ」


 今日もローラが笑顔でレインを迎える。

 ざっと店内を見回せば流石に店は空いていて、テーブル席は数組が座っている程度であった。

 今日は気兼ねなくテーブル席も使えそうだが、レインはいつものカウンター席へ腰を下ろした。


(今日は余り、収穫はなさそうだな…)


 予想していた通りだとレインが苦笑をすれば、カウンターにローラの気配がして顔を上げる。


「ご注文はお決まりですか?」

「えっと、エールと串肉のタレ2本、素揚げ豆とスライムもどきを。あと体が温まるお勧めをひとつ」

「…それじゃ、熱々の煮込み田楽をお持ちしますね」

「それは何ですか?」

「煮込み田楽は先週から出し始めた季節料理で、芋や卵、豆や魚介などのすり身を煮込んで味を染みこませたものです。体が温まりますよ?」

「ではそれを」

「はい。少々お待ちくださいね」


 今日は忙しくないからか、ローラがゆったりした動きで店内を歩いていく。

 そんな彼女を見送って、さっそく店内に耳を澄ませる。


「―今日は寒かったなぁ~」

「こんな日は、添い寝してくれる女が欲しいねぇ」


「―そろそろ薪を積んでおかないとな」

「ああ、ぼちぼち冬支度だな」


「はい、お待ちどう様です」

「ありがとう」


 ローラの声に目を開き、レインは笑みを浮かべて礼を述べる。一応、体調は万全だというアピールだ。

 これなら心配されないだろうと顔を見れば、ローラはこちらを見ておらず、入って来た客へと視線を向けていた。どうやら要らぬ気遣いだったらしい。


「いらっしゃいませ。空いている席にお座りください」

 笑顔に朱を乗せて話すローラが気になって、レインは入って来た客を振り返る。

 すると、それはレインにとっては見覚えのある人物であった。


(ロイ…)


 前回ロイと会ったのは、前回のレインの休暇日だ。

 再びこうして会うという事は、もしかするとロイはこの店の常連なのかも知れないとも思う。

 レインが休暇の日しか来ていない事を思えば、レインがいない日に来ている可能性は否定できないのだ。


 レインがエールを含みながらそんな事を考えていれば、再びレインの隣に人の座る気配がして視線だけをそちらへと向ける。するとやはり前回同様に、レインの隣にロイが座ったのだった。


(今日は混んでないから、別の席に座っても良さそうなのにな…まぁいいか。人の勝手だしな)


 そう思いつつ一度目の会話が思いのほか楽しかった為、またロイと話す事が出来るかも知れないなとレインは思い直す。ただしこちらから話しかける事はしない。


 レインのそんな気持ちを知ってか知らずか、座って早々に再びロイから話しかけてきた。


「急に声を掛けて申し訳ないが、その料理は美味しいのか? …いいや、料理として出しているくらいだから不味い訳ではないのだろうが…」


 おや?と思いながらも、どこかで聞いたセリフを話すロイにレインは視線を向ける。するとロイは料理に視線を向け、驚いたようなそれでいて考え込むような表情を浮かべていた。


(まるであの日と同じ反応じゃないか…。ロイはあの日、ここに来ているのではないのか…?)


 レインが来なかったあの日の2度目、レイン以外の者は普通行動を変えないはずだ。途中でレインがわざと関わるならいざ知らず、レインが関わらなければ同じことをするはずだと、今までの経験上認識していたレインなのである。


「……これの事か? 色はあれだが、美味いぞ?」

 そしてその料理を勧めてみれば、あの日とそっくりそのまま同じ反応が返ってきたのである。

「ああ…食べられるな」


 そこへロイの注文を届けに来たローラが、口をとがらせて口を挟んだ。

「お客さん、うちは食べられない物は出さないし、美味しい物しか出さないんですからね?」

 男の前にエールと肉巻き卵を並べると、そう言って腰に手を当てた。

「あぁそれは失敬。すまなかったね」


(初めて食べたという事か? …いったいどういう事だ?)


 ロイの方からすれば、レインとは今日が初対面だろう。だが実際前回の休暇日にレインはここで会っていた。ただそれはレインの中だけの事であるものの、ロイが初めて来店したような態度であるがゆえに思考が沈みそうになるレインであった。


「そっちの串は何だい?」

 料理に関心を示すのも同じ。しかもレインは同じ料理を頼んでいるのだが、それを興味深そうに聞いてくるのだ。前回同様の返事をロイにしつつ、料理をおっかなびっくり食べるロイを、レインは思わず凝視していた。


「ん? 私の顔に何か付いているのかい?」

「あ、いや済まない。男前なんで少し見惚れていただけだ」

「ははは、レインは冗談が好きそうだな。それで、そちらの料理は?」

「ああ、これは……」



 レインは会話をしつつも、慎重になる。

 1度目と2度目で違う行動を取る場合、大抵はレインが関わる事が多い。とすると…。

 レインは一つの仮説に辿り着くも、それはあり得ないだろうと首を振った。


「どうしたんだい? その料理が辛かったのか?」

 考えながら食べていた為、ロイはレインが食べた料理に問題があると思った様だ。


「あ、いや、何でもない。これも美味い」

「そうか。ではもらってばかりでは申し訳ないから、私が頼んだ料理も食べてくれ」

「ああ、これは俺も好きなんだ。ありがとういただくよ」


 その日も結局は同じような会話を繰り返し、レイン達は再び店の前で別れ際に握手をする。


「ではな、レイン。また姿を見掛けたら、声を掛けてくれ」

「ああ。また機会があれば…。お休み」

「お休み」


 歩き出したロイは、大通りへ向かわずに南東の住宅街へと向かって行った。そして次の角を曲がって消えていくまで見届けると、レインは外套を掻き合わせて自分も歩き出す。

 向かうはロイが消えた方角の反対である大通りだ。雨も小降りになってきているが、足早に宿舎へと急ぐレインだった。




「行ったか?」

「はい」


 その様子を隠れて見ていたのは、今その角を曲がったばかりのロイともう一人の人物だった。


「いかがでした?」

「特に問題はなさそうだった。だがこの店の常連ではないと思われるものの、店の料理に随分と詳しかったのが気になった」

「ではもう少し…?」

「ああ」

「承知いたしました」


 こうしてレインが見送った者がこちらを見ていようとは、この時のレインには知る由もないのである。


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