ガイコツに助けられたゾンビ
自分だけどうしてこうなんだろう。
自分だけどうしてこんな目に合うんだろう。
自分だけどうしてこんなに運が無いんだろう。
自分だけ…自分だけ…自分だけ…。
「あっ!」
人間が怖がって逃げ惑うのが楽しくて
追いかけ回していたら
木の根っこに気づかずに引っかかってコケてしまった。
「まいったな〜」
骨が折れて歩けなくなったゾンビ。
動けなくて
引っかかった木に寄りかかって
座り込んでいた。
「ゾンビなのに罰が当たるなんて…」
そこにカランコロンと音を立ててガイコツがやってきた。
「どうした?」
「いや〜。コケて骨が折れちゃいました」
「肉も溶けてんだ。骨だって弱ってんだぞ」
「はぁ〜、そんなもんっすかね〜」
「しょうがね〜な。歩けないんじゃしょうがないから
腕の骨でよかったらあげるよ」
「えっ!いいんすか。じゃあ遠慮なく」
少し長さは足りないけどないよりはマシと思い、骨をもらった。
ガイコツの骨だ。頑丈そうだ。
「ガイコツさんはいいよな〜。骨だけだから。さぞや頑丈な骨なんでしょっ」
と、もらった骨をさすりながら言った。
「何言ってんだよ。オレだって昔はゾンビさ」
「えっマジ?」
ガイコツは最初からガイコツだと思っていたゾンビにとっては
衝撃的な話だった。
「だからオレにとっては腐ってもまだ肉の部分が残ってる
そっちのほうがうらやましいよ」
そう言われると何だか親近感が湧いた。
「じゃあ骨のお礼に少し肉をあげますよ」
「マジかっ!うれしいんですけど!」
ガイコツはゾンビからもらった肉片を頭に乗せた。
そしてシルクハットでも被ったるかのように気取って言った。
「どう?似合う?」
「は、はあ…」
ガイコツは右を向いたり左を向いたりしながら満足そうにしていた。
そこへ違うゾンビがやってきた。
会話を聞いていたようだ。
そのゾンビは右側が溶けていてちょこちょこと歩いていた。
「ボクなんか目玉が一個しかなくてしょっちゅうぶつかんだよね〜。
だから目玉が二つあるキミの方がうらやましいよ」
だがさすがに目玉はあげられない。
という事はガイコツから骨がもらえた自分はラッキーって事か。
次に火の玉がやってきてこう言った。
「ワタシなんか身体自体ないんだよね〜。フワフワ浮いてるだけだから、
たまには歩いてみたいわ」
そう言って、キラリンとひとしずくの涙が出た。
が、すぐに蒸発した。
身体もあげられない。
二人のゾンビとガイコツで出し合って身体を作ってあげても
火の玉のどこにそれをつけたら良いのかゾンビには解らなかった。
火の玉はなにかしてもらっても、どうしようもない。
悲しくて流した涙さえ、すぐに蒸発しちゃう。
かわいそうだ。
自分にあって他人にはないものがある。
他人にはあって自分にないものもある。
自分にとっての普通と他人にとっての普通は違う。
誰もが何かを抱えてる。