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クトゥルー神話超短編【3】だごん様

作者: T. Williamson

「主のみ名によって、アーメン」

「アーメン。…ねぇあなた、また役員にさせられたんだって? しかも会長?」

「仕方がないだろ、抽選なんだから」

「抽選ていったって、後ろで何か操作したり、してるんじゃないの?」

「俺の名前だけ箱の一部に貼ってあったり、とかか? まぁ無いな、そりゃ」

「どうも気に入らないのよ。…なんだっけ、『だごん様』への祈りの集会?」

「ああ、最近教会が取り入れた、外典にある聖人の崇敬だろ?」


言って俺は、前の晩に用意しておいたパスタを頬張った。


「私、調べちゃったんだよね。豊作を約束する代わりに、生贄を…」

「っ、んなバカな」


心なしかフォークに力が入る。


「嘘をついてでもイヤって言うべきだったと思うわ、あたし」

「することは単純なんだ。海に出て、しかるべき祈りを捧げて」


アサリをフォークに刺して、


「三角形みたいなあの何かを海に落とす。その司会役をするだけだ」


幸いまだメシは旨い。


「実は聞いたの。梅垣さんだっけ? 【深きものども】と契った、って」


恐れとも、苦々しさとも、禍々しさともつかない、名状しがたき空気が。


「あの人、いつも首にスカーフ巻いてるでしょ?

 鰓を隠すためだって、もっぱらの噂よ」

 ねぇ、教会ってどうなるの? もう、最終戦争に近いの?」

 【深きものども】と一緒になって、『海底で栄光とともに…」

「わかるもんか」


俺は投げ捨てるようにフォークを食器に叩きつける。


だが最近、俺は好みがやたら海産物に限られていることを

実感するようになったのである。


事実、だごん様への祈りと捧げ物で、豊潤な海の幸ももたらされている。

俺も梅垣のようになるんだろうか。


「俺たちが海に沈むか、だごん様とその眷属が上がってくるか」


妻に手をひらひらと見せて、


「二つに一つだ」


指と指の間の皮が、以前よりも広くなったことに、

妻はまだ気が付いていないようだ。

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