滲み出すもの
気分転換でよろしくお願いします!
「その気持ち悪い黒いものは、『滲み出すもの』よ」
「お袋まで⁉︎」
俺はお袋までここにいた事に驚いた同時に、その滲み出すものものに疑問があった。
「そうか、アゴンはお二人の息子か、道理で何処かで見た顔のわけか」
「ご無沙汰しておりました、エド様」
「導師様は我が子をご存知で?」
お袋と親父は揃ってエド主任に我が崩天氏族最上級の敬礼をした。しかもお袋と親父だけではなく、チャルソウ族長もエド主任に同じ敬礼をした。
「子供たちの前はよせ、ほれ、三人が混乱してるじゃない?」
「我が族の英雄に無礼のような真似をするなんてはできませんね、そうですよね、族長様?」
「その通りだ、お義父様」
族長様はエド主任が義父の事を承認したから、族長様とお袋はエド主任に尊敬するのも当然な事で理解できたが……
「導師様、我が子はお世話になります」
えっと、その導師様の意味は一体……?
「知らないのか?死の騎士であるが、エドは王家の導師を務めたから、今は退職したとしても、敬意を持ってそう呼ぶ人は少なくないぞ」
「エーカーくん、なんてあなたが知ってるの?それは授業の内容ではないよね」
説明できたから、姉さんがあのエーカーを疑っているそうだ。
「そのままお前たちに全てを説明したいのだが、今お前たちの『格』はまだまだから、こちらの事はこの辺で、これ以上の情報を探さないように」
あの、エーカー先輩は姉さんの同級生だよね、なんて全然違う雰囲気をしてる気がする……
「師匠がそう仰るなら……」
セシオス先輩はそのままエーカー先輩の話を受け入れた。
「しかしエーカー殿!」
「チャルソウ、お前の考えは理解している。この夢幻想の中なら、滲み出すものと戦って命が落としても、現実に影響はない。だがそれでもこの子たちには早すぎる」
「チャルソウ、学校の先生の立場を持つ俺もエーカーと同意見だ。そしてあなたたち、本来なら、あなたたちの記憶を消さないとところだが、セシオスさんはエーカーの弟子である時点で、俺にはそんな権限がない」
どう言う事?エーカー先輩は姉さんの同級生なら、立場としてはエド主任の方が上なのに、これはどう見てもエーカー先輩はあの死の騎士であるエド主任とはせめて平等な関係に見える。
「生憎だが、俺は説明するの約束をしたから、ある程度の情報を開放しないと俺の筋に合わないぜ」
その黒い騎士正装の人がエーカー先輩とエド主任と相反の意見を言った。そう言えば、確かにさっき族長はこの人に頼んだよね。
「それもそうだったな」
エーカー先輩もさっきの状況を思い出したようだから、やれやれって肩を竦めた。
「導師様、私は人間ですが、種族の規則に従えば、私の子たちは既に成年者ですから、ある程度の情報は伝えるべきかと」
親父とエド主任は一体どんな関係なの?親父は腰が低い態度を取っているから見れば、明らかにエド主任の方が上に間違いない。
ちなみに、獣人族の伝統によって、十五歳は大人に見られる。
親父の話を聞いたエド主任が考えている、そして誰も邪魔しないように静かに待っている。
「そなたたちの意見、この私は理解した」
しばらくの沈黙の後、口調一転のエド主任はパネルを呼び出して着替えた。
さっきまでのよくある私服は白いマントに変えた。えっと、これどう言う事⁉︎
「おお!お義父様の正装姿!これは何年ぶりだった!」
「導師様の正装姿を再び拝見できて、恐悦至極と申し上げます」
族長様と親父は一体……?
「エーカー、お前も着替えてどうだい?」
エド主任の服を見て、チャルスさんはエーカー先輩に声をかけた。
「確かにその方が良さそうだな」
そしてエーカー先輩もパネルを呼び出し着替えた。
「師匠格好いい!」
「エーカーくん、これは……?」
「お前の騎士正装、これは何年ぶりなのかな?」
いろんな感想が混ぜているけど、結論から言うと、俺たち三人の前には、とても威厳を持つ、教科書に描いた高官のような服と白いマントを着てるエド主任と、チャルスさんと同じタイプだけど、代表色はチャルスさんの黒とは違う、蒼色の騎士正装に着替えたエーカー先輩が立っている。さすがゲームの中だな、こんな着るに面倒そうな服を着替えるのも一瞬だけの事。
「そなたたちの知る通り、この夢幻想オンラインは魔法の力で構成された擬似世界である。しかしさっきチャルス殿が言った大戦のせいで、この擬似世界にも影響が出してしまっている。その影響はさっきそなたたちが見た『滲み出すもの』と言うバグになっている。政府の運営部門はそのバグを捌き切れないから、有志プレイヤーたちは立ち上がった」
そしてゆっくりと、エド主任は荘厳な口調で説明を始めた。
「そして、彼らは同じ志を持つので、ギルド結成して、他のプレイヤーたちをその『滲み出すもの』の脅威から守ろうと決めた」
「他のプレイヤーたちからは『超人機関』って呼んでいるが、そのギルドの本当の名はーー」
「光神信使」
最後はエーカー先輩がそのギルドの名前を言ってくれた。
少し信じにくいだけど、運営は政府の方だけであり得るかな。
「えっと、つまり、エド主任と族長様たちはそのギルドのメンバーってことですか?」
そして、姉さんがエド主任たちの説明を聞いた後、質問した。
「ああ、その通りだ」
エド主任と族長様はあっさり頷いた。
「親父たちも?」
それを聞いた俺も親父とお袋に聞いてみた。
「一応、ギルドに入っているが、あくまで基層支援メンバーで」
「お母さんもお父さんと同じだよ。でも確かに族長様は実戦部隊ですよね」
「それはそうだが、それでも切り札のエースたちに及ばないな」
族長様がその話を言う時、目線はエーカー先輩、チャルスさん、そしてエド主任を見た。
「師匠のその実力なら、やっぱりエースですよね!」
セシオス先輩はよっぽどエーカー先輩に懐いているのようだ。
「お前の師匠は、その大太刀を持てば、無敵の男と言えるのだ」
「チャルス、よせ」
「やっぱり師匠はすご〜い!」
その後、お袋が明日は学校があるって言ったから、結局あの日はそのままログアウトした。
さすがに謎が多すぎて、飲み込むには時間かかりそうだから、俺は浴びた後そのまま寝るとした。
アゴンたちはログアウトした後、そのまま原地に留まっている人たちの会話。
「よくそんな嘘をそんな短時間で出来上がりとはな、さすが王家導師の死亡騎士と言うべきか」
「お前たちもよく合わせてくれたな」
「アゴンの事はよく知らないが、マンヴィナは俺の同級生で、セシオスは弟子だからな」
「そう言えば、なぜあの子を弟子にしたのか?」
「それは俺も聞きたいな。今まで一人だけを弟子にしたエーカー殿はあの非力な精霊の女の子を弟子にした理由は是非聞かせてもらおうではないか」
「別に特別な理由はない。そのうちで諦めると思ったが、まさか一年も自分の無力さを耐えていたとしても、依然大太刀を使いたいと強烈希望するの奴、俺は無視できるわけがないだろ」
「なるほど、それなら納得できた」
チャルスは頷いた。
「しかしエーカー殿の大太刀、もはや斬艦道とは全く違う剣術になっているので、あの子には本当に使えるのか?」
「それも一年かかって基本身体能力を底上げした理由だ」
「さすが晨藍の英雄騎士、よく考えたのな」
「よせよ、黒光の英雄騎士」
「お義父さん、本当にこれでいいのか?織姫の旦那を救うためには、もっと多くの戦力が必要なのでは……」
「今はエーカー殿の言う通り、彼らにはまた早すぎる。もうちょっとこの夢幻想で鍛錬させよう。時が来たら、そのうち全部教えるとしよう」
エドの話で、今回の会談が終わった。
そして、チャルソウと他の人たちの会話。
「族長様、私たちは全く会話を参加できなかったよね」
「仕方ないだろ、俺は文事が苦手だからな」
「さすが導師様、相変わらず思考を追いつけられなかった」
「そう言えばお父さん、あなたはエド様の部下だったの?」
「引退した元警察だが、警察の前には王宮近衛兵だったからな」
「なるほど、それは私があなたに容易い捕まえたわけか。元近衛兵だったらそれは納得できるのよ」
「まさか今でも私を恨んでいるのか?」
「まさか〜今は大好きの旦那さんだよ!」
「ほう、不良だったのあの子をここまでさせたとはさすがだな。まあ、これからもよろしく頼むぞ」
「私の大切な妻だから、もちろんです!」
お父さんの返事に、チャルソウは微笑んだ。