89話:くまクマ熊デター
タイトルは自分で考えました。例え似ている物があっても、全くの偶然です。…偶然です()
「アキラ…それは…?」
「おっ!へへっ気付いちゃったぁ?w実はこれねぇ」
ジェーンに別れの挨拶をした次の日の事。俺はこの国を出るまで時間があるので、ミルと一緒に稽古している。その時俺はわざとミルに分かるように手甲を見せて稽古していた。お陰でミルはやっと聞いてきてくれた。
「わっ…それは…」
「yes!仕込み手甲なのさ!カッコいいでしょ?」
「え…?ああ……うん」
微妙な表情のミル。男と一部の女性にしかわからないロマンが詰まってるんだぞ?もっとキラキラした目で見てよ!
…まぁミルは聖剣があるしなぁ…ま、あっても無くても剣さえあればミルは無双しちゃんだけども。
「それ…使うの…?」
「えっ…?まぁ………使う、よ?」
俺は剣士だが投げナイフに仕込み手甲、そして体術にプロレス技等々…もはやアサシンだろ。
もう何がなんだかわからない。格好も真っ黒のロングコートに背中に妖精のような羽。うーん……ナニコレ。でもカッコいいよね!
「アキラ、今日は少し違った事をしよう」
「違うこと?」
「ん、今日は魔物を相手に実戦をしよう」
魔物との戦いか、結構久々かも。最近はミルとの稽古ばかりしていたからな。
「あ、ならシアンを連れていってもいい?最近新鮮な魔物を食べさせてないんだ」
「ん、勿論いいよ」
ちょっと物騒な事を言ったんだが、ミルは普通に頷いた。でもミルは知っている筈だ。あの日シアンが兄弟殺しをしたシーンを見たからな…エグいぜシアン。
という訳で、ミルと共に、ルミナス聖国から少し歩いた所にある小さな森へと向かった。程よく日が入っているから怖くないね。
「んで?俺は何と戦えばいいの?」
「ちょっとここで待ってて。連れてくる」
「お、おう…」
トテトテとミルは早足で森の中へと入っていき、やがて見えなくなった。
ただ待ってるのは暇なので、シアンと久々に戯れて待機していた。
「~♪」
「ここか!?ここがいいのか!?」
まるで犬を撫でるようにシアンをナデナデする。お前は可愛いなぁ…!早く擬人化して♡
まぁこうやって催促する理由を言ってしまえば、そろそろ新キャラが出てきてもいいと感じているからなのだがな。シアンがどんな子になるか分からないが、現状ヒロインはミル1人だから、そろそろ新キャラ欲しい。欲を言えば美少女、又は狼、狐のどっちか。
「ミル遅いな……何かあったか?──いや、何かあるとしたら相手側だろうな。んー…ちょっと見に行く──」
俺が森の中へと少し入ると、茂みがガサガサと揺れる。俺は何気無くその茂みへと顔を向けた。
「…………ぇ」
茂みから顔を出していたのは熊。
向こうも俺を見つめて固まっている。両者驚きで動けないのだ。何故俺はやたら熊と出会うんだ…?呪いぃ…ですかねぇ。
「ワフゥゥウ!!!」
刺激しないように、ゆっくりと後ろへ下がっていると、熊はまるで犬のように大きな声で鳴いた。俺の危機的センサーが告げている、《オワタ^_^》と、、
危機的センサーが絵文字を使っている事に腹が立つが、俺の考えている事だから怒れない。
てかそんなのどうでもいい、ヤバイって!!
「グルルル!!」
遠ぼえを上げた熊は、突然戦闘体制に入ったので、俺も慌てて細剣を抜剣した。
そして相手をよく確認すれば、なんと4本腕。そう、熊公だ。コイツどこにでも生息しているのか?
「あなたは転生者ですか?」
「グルルルルルッ!!」
俺はダメ元で熊公にそう質問した。相手が転生者の可能性があるからだ。
ここは異世界。何でもありの異世界は、様々なモノに転生、憑依させる。俺の知ってるやつだと、シロクマに転生した奴がいるので聞いてみたが、コイツは普通の獣らしい。
「さて…───殺り合いますか…!」
コイツは打撃に弱い魔物だったが、果たして剣は通るのだろうか。以前は苦戦して何とか倒したが、、
『これで俺の成長具合が分かるってもんだ』
俺は一気に駆け出し、熊公の喉元を狙って一点突きを放つ。だが野生の本能だろうか、肩から生えている2本の腕でガードされた。
だがその程度ではもう俺は驚かないぞ。
「[砕氷]ッ!!」
「ッッッ!!!?」
習得したての技、[砕氷]。その通り、氷を砕くが如く激しく、繊細な動きをしなくてはならないクロス斬り。それを熊公な胸へと放つと、熊公は胸から血飛沫を上げて後ろへと倒れた。
「よしっ!これで俺の強さは証明された!」
剣を使えばここまで戦えるのか。拳で戦っていた頃が懐かしい…あの時はまだチートがあると思ってました。
「アップにはなったな、どんどん行くぜ!な、シアン」
俺が背後に待たせていたシアンへと振り返ると、そこにはシアンの姿は無かった。まさかと思い熊公へと顔を戻すと、シアンは貪っていた。我慢できなかったんだね…
「にしてもミルは──」
ミルが未だに戻らないから心配になり、再度森へをチラッと見れば、熊公が5匹に一際デカイ熊公の姿が見えた。
『……ん?…んん??んんんん????あれ?何でこんなに熊が集まってるんだ?しかも何か群れのボスっぽい奴もいるし、6本腕だし、ストライプ入ってるし…え、マジで何あいつ。怖いんだけど、逃げたいんだけど。逃げる?逃げちゃう??状況的に絶対ヤバイよね。てかさっきの熊公が叫んだから来たのか…?』
ヤバイくらい高速で頭が回りやがる。
俺は額に汗を浮かべて細剣を熊達へと向ける。アイツらは1匹では強くはない。だが手数が物理的に多いアイツ。しかもタックルまでしてきやがるから危険だ。
「アキラ、今日はこのデスグリズリーの群れを倒してもらう。今のアキラなら勝てる筈だよ」
ミルの声が何処からとも無く聞こえ、辺りを見渡すと、ミルは木の上に腰掛けて俺を様子を見ていた。成る程、コイツらが今日の相手か。
「じゃあ…───頑張ってね」
ミルは聖剣から氷塊を生み出して、デスグリズリー達の背後へと落として発破をかける。
通常種のデスグリズリー達は氷が落ちた音と共に俺に向かって動き出した。
「いきなり全員──かよッ!!」
「ガウッ…!!?」
俺はデスグリズリーの攻撃をに回避して、反撃の突きを放つ。首を狙ったのだが、立ち上がった為デスグリズリーの腹へと刺さる。
反撃が来る前にデスグリズリーの腹を蹴り、強制的に距離を取ると同時に細剣を抜く。
『チッ…!数が多いいな…ッ!』
通常種のデスグリズリーは全部で5匹。それを全て一遍に相手するのは正直酷だが、俺は[氷月刃]を放ち、1匹ずつ着実に排除していく。【次元の裂け目】での経験が活きていると実感するな。
その後も投げナイフも使って牽制しつつ排除し、漸くラスト1匹を倒した瞬間だった。
「ッ!!?漸くボスのお出ましか…!」
ボスの手下を全て倒した俺の油断を狙った一撃。中々いい手だとは思うが、上に立つモノとしてクソみたいな手だな。
普通の奴ならここで殺られているかもしれないが、生憎俺は違う。何せこういう事は何年も【なろう】で勉強してきたからな。
腕をクロスにして、デスグリズリーのボスの攻撃を受け止める。手甲で防ぐつもりだったが、予想以上に効いたな。
だが、
「甘いなッ!!」
親指に掛かっているリングを曲げて引っ張り、手甲から刃を出現させる。そして手首を回転させ、そのままボスの手首を切り裂く。
「トドメだオラッ!!」
「ガ…ッ…!!」
細剣をボスの胸に[霧雪]で突き刺し、そしてすぐさま刺さっている細剣の柄頭を蹴り、更に深く刺し込む。
更に間を入れずに手甲から出ている刃でボスの体を突きまくる。足、胸、腕、首を突き刺し、切り裂き、傷を増やしていく。
「ガ…ガッ…!!ガウガァ!!!」
ボスから放たれた横払。最後の反撃だったが、それさえも俺には届かない。立ちブリッチのように体を裏へと反らして回避。そのまま地面を蹴り、浮き上がった体。腕に力を込めてボスに向けて両足蹴りを放ち転倒させた。
最後にピクピクと動いたボスは、やがて動かなくなった。
「うおおおおお!!勝ったぞぉおお!!」
「ん、思ってた勝ち方じゃ無いけど…うん、凄かった。アキラらしい戦い方で」
「ご、ごめん…」
「ううん、いいの。実戦は案外こういうモノだから」
ミルはそう言いながらクスクスと笑う。
その時俺は内心ミルなら絶対実戦でもこんな戦い方せずに、純粋に剣だけで勝つんだろうな…っと帰り道でずっと考えていた。
着実に強くはなっているアキラ。ですが【なろう】主人公と比べると、天と地程の差があります…




