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86話:晩餐会

ミルが珍しく女性らしい格好をする回

無事にベリタスの叙勲式をカットした後、俺や六剣達は移動することになった。

このまま解散。というのでなく、何やら晩餐会らしきものをやるらしい。昨日ミルとドレスを選んだのはこの為だ。


「ガチガチじゃねぇか、アキラ」


「うっせ!こんなの体験したことないんだよ!」


ジェーンとそんなやり取りをしながら城の廊下を歩く。

こういう晩餐会は【なろう】とかでもよく見たが、実際体験するとなると緊張する。貴族とか来るわけだし、なろう次郎もいるし。




「うわ…!スッゴいな…!」


そして他の扉より一際豪華な仕様になっている扉を、城で働いている給仕さんが開けてくれた。

中はとても広く、人が500くらい入るんじゃないだろうか?それくらい広い。


「美味そう…!」


しかもバイキングのように並べられた料理がめちゃくちゃ美味そうなのだ。どれもこれも高そうだし、たらふく食って帰ろう。


「ジェーン、これ美味いぞ!」


「マジか!あ、これも旨いぞ!」


「ホントだ!旨っ!」


俺もジェーンも、お淑やかに食べたりお酒を飲んだりするタイプでないので、普通に貴族飯ってやつを堪能している。

俺は異世界人であり、平民だからこういうのは全く知識が無いが、六剣の一族であるジェーンがバクバク食ってるのはどうなのだろうかと思うところはある。


『そういえばミルはどこだろう?まだ用意とかあるのかな?』


ステーキ肉をバクバクと食べながらそう考えながら他の料理に手を伸ばすと、ちょうど他の人も手を伸ばしてきた。恋の予感。


「あれ…?君は確か……テンドウ・アキラさん、でしたよね?」


「……………」


もちゃもちゃと音を出さないように注意しながら咀嚼して、その男の顔をガン見する。

紫っぽい黒髪に紅い眼、そして日本人離れした顔立ち。そう、ベリタス・ブレイブだ。


「えっと…名前合ってるよね?あ、俺ベリタス・ブレイブ…って流石に知ってるか」


コクりと頷いて肯定する。ごめんね、今口にステーキ肉があってね…喋れないのだよ。


「珍しい髪と服装、それに名前だと思ったけど……アキラはどこから?」


そんなリゼロのラインハルトみたいな事を聞いてくるなろう次郎。やれやれ、異世界人は黒髪を見付けるとすぐにどこから来たか聞くんだから困ったもんだよ。


「極東、から、来た」


ステーキ肉が筋だったようで、中々噛み切れない中、俺は口から溢さないようにして何とか答えた。するとなろう次郎は『やっぱりあるのか…』と小さく呟いている。


「えっと実はね?俺も似たような所から来たんだけど……良かったら少し話し相手になってくれないかな?俺こういう雰囲気ちょっと苦手でさ…」


いるいる、そう言う奴。でもそういうセリフ言うのって男の俺じゃなくて女の子、つまりヒロインじゃね?


「見付けたわよっ!ベリタス・ブレイブ!!」


「ゲッ…!?」


このすばのゆんゆんみたい言い方で、人目も気にせずなろう次郎の名前をフルネームで叫ぶ金髪ロングの美少女。確か…クリン・ブライトさんだったかな?そんな美少女に呼ばれて嫌な顔をするなろう次郎。


「今日こそあんたに勝つんだから!さぁリベンジマッチよっ!」


「お、お前しつこいぞ!何度倒しても向かって来やがって…!」


成る程、剣闘大会の準々決勝で負けたから悔しいんだな。んで何度もリベンジしていると?ふ~ん?どうでもいいけどさぁ…お前(クリン)なろう次郎(ベリタス)に惚れてるだろ。


『はい撤収~』


まだ言い争っている2人を放置して、俺は若干急ぎ足で離れる。ここで悪徳貴族にでも目をつけられたら大変だしな。


『悪徳貴族と言えば…ここにもいるのかな?悪役令嬢に憑依しちゃった奴。そいつも敵にしないようにしないとな、色々面倒だし』


さてさて、ジェーンはお兄さんに呼ばれたので別れてしまったし、俺は今独り。どうしようかと考えながら、ボーイさんからシャンパンを貰う。そうしていると、、


「ア、アキラ…!」


俺を呼ぶ声が背後から聞こえ、振り返る。


「え?あ、ミ、ミル!?」


そこにいたのはミル。

だがいつもの六剣達が着ている服ではなく、あの日2人で選んだダークネイビーの貴族ドレス。ミルの髪の毛が薄灰色だから、色合いがかなり良い。しかも肩出しタイプだから色気もgood!


「どう、かな…?」


「スッッゴイ似合ってるよ!もう似合い過ぎてビックリしちゃったよ!」


「えへへっ…!ありがとう…!こういう格好は着なれないけど、アキラがそう言ってくれるなら良かった、かな?」


照れているのか、ほんのり頬が朱いミル。珍しく薄化粧もされているミルは本物の美少女。まるで貴族だな。……いや、一応貴族だったな。


「これはミル様、本日も御美しいですね」


「誰?」


そんな事を考えていると、当然美形の男が乱入してくる。後ろに腰巾着のような男も2人控えている。あ、貴族か。


「なんと…お忘れですか…?(わたくし)はアルカルド伯爵の四男、ドルベ・アルカルドですよ」


「そう」


とても短い返しをしたミルは、ドルベ・アルカルドさんから視線を外し、俺の方へと向いた。

良いのかそれで…


「ちょちょちょちょい!!?え、もうお話終わり!?はっや~…早すぎてビックリしたよ!?」


ほら見ろ、素っ気なさ過ぎて素が出ちゃってるじゃんか。可哀想に…他人事だけど。

貴族3人でわちゃわちゃしているのを見て、異世界だなぁ~っと感じていると、ミルは俺の袖を引いて耳元で小さく、、


「ここは騒がし…向こう、行こ…?」


ミルが指差すのは、親の顔より見た外に出られるバルコニー。いいねテンプレだ、行こ行こ!

後その誘い方、最高に可愛らしい。



『寒っ…!!』


優雅にシャンパンを飲みながらバルコニーに出たまでは良かった。だが風が結構寒い。鳥肌立ちまくりなんだけど。


『寒いぃぃぃ…!!!!だがそれはミルも同じ…いや、肩が出てる分ミルの方が寒いだろう。………仕方ない』


「えっ…?」


そっ…と俺の着ている上着をミルに重ねる。お陰でシャツ一枚になった俺は凄く寒くて軽く死ねる。凍死しちゃう。だがっ…!これはポイント高い筈。多分…?いやきっと。え?上着汗臭くないよね?大丈夫だよね?ね?え、反応してよミル。


「なんだか…恥ずかしいな」


「俺も恥ずかしかった。後凄い心配してた」


「…?なんで?」


「いや、気にするな」


?顔のミルに、俺は真顔でそう答えた。ホントに汗の臭いしないよね…?大丈夫だよね?もうそれの事で頭一杯だよ。



「ここにいたのか、ミル。探したよ」


「…?っ…父様…!何でここに…!?」


突然現れたミルと同じ髪色の男性。40代後半だろうか、何処と無くコルさんに似ている気がする。


「ミルが聖剣に選ばれたという情報を貰ってな。ミルの晴れ舞台を見る為に急いできたんだ。何とか間に合ったな」


「父様…!」


親バカの臭いがするのは気のせいだろうか。厳しい親御さんって訳じゃ無さそうだな。


「所で…君は?娘とは随分中の良さそうだが」


ミルの親父さんはミルに掛かっている俺の上着を見た後、鋭い目で俺を見てきた。怖い。


「お、俺は…!天道明星(てんどうあきら)と言います!僭越ながら御嬢さんの弟子をさせて頂いてます!!」


「ほう?ミルの弟子、ねぇ…。それは本当なのか?ミル」


目を細めて俺を上から下へと見た後、親父さんはミルへと視線を向ける。ミルはコクコクと頷いて答えた。


「そうか……アキラ君、娘はちゃんと師として教えられているか?この子は人と話すのが苦手でね」


「い、いえっ!御嬢さんはとても良くして貰ってます!教えてくれる剣術も大変為になるもので…!」


「そうか、では今後ともよろしく頼むよ」


「は、はい!」


差し出された手を、俺も急いで差し出して握手をする。

ち、力が強くないか…?気のせいだろうか…


『目が笑っていないし……』


絶対娘を溺愛してる父親だ、そう察したアキラは若干引きつった笑みを浮かべて握手をするのであった。


アキラの知らないところで、ちゃんと【なろう】主人公をしているなろう次郎君。流石です。


ミルのパッパ、娘溺愛疑惑。10代で次期当主に選ばれるくらいの天才だからね、仕方無いね。

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