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84話:変化

ブックマークがどんどん増える。

どんどんやる気でる。

【次元の裂け目】、そしてコルさんとミルの戦いから数日後。

俺はいつも通り目覚めると、知らない天井だった。いったい何度この体験をすればいいのだろうか。


それは兎も角、数日経ったお陰で普通に歩けるようになった俺は、今はクリークス家の屋敷にいる。

コルさんは今だ屋敷に戻って来ておらず、行方不明。国が事情聴取の為にも探してはいるのだが、一向に見つからないらしい。


「暇だなぁ……」


俺は屋敷の園庭にてシアンと戯れながら空を流れる雲をぼんやりと眺めていた。

ミルはあの一件以来、やたら俺に過保護になってしまって、今も稽古はしていない。しかも自主トレも禁止と来たもんだ。


だが今ミルは国に呼ばれて城へと出向いている。何でも聖剣関連の事らしいが、詳しいことは知らない。


「へへっ、少しくらいならいいよね?せめて筋トレくらい!やらないと筋肉も落ちちゃうし」


ここにはシアンと俺以外いないと言うのに、口に出して言い訳を並べる男。俺じゃい!


「フッ…!フッ…!フッ…!フッ…!」


先ずは基本的な腕立て伏せからスタート。久々にやったせいで、50辺りからかなりキツくなる。しかしこの苦しさを越えた先に筋肉はいるのだ!


「…何やってるの?」


「何って──フッ…!見れば、分かるでしょ…!ッ……腕立て伏せに決まって…………あ、え…?」


「ただいま、アキラ」


俺の前に立っていたのは、天使のような微笑みを浮かべたミル。な、何故…!?こんなに早く帰ってくるなんて聞いてないぞ…!!そもそも言われてないけど。


「体に負荷を掛ける事はやっちゃダメ、そう言わなかった…?」


「うん…ごめんなさい…。い、いやでもね!?もう1週間くらい何もやってないじゃん!?体が鈍っちゃうというか…!えっと………すいませんでした」


「アキラはちゃんと謝れて偉い。でも……うん、確かに何もしないのは良くない、よね」


俺の頭を撫でながらそう呟いたミル。よ、よせよ…!俺はガキじゃないんだ!子供扱いされてマジでショックです…。でもミルのナデナデは幸せなので、OKです。


「軽く打ち合おう。ただし、体に気を付けながら」


「やったぜ!!」


早速俺は屋敷へとダッシュで向かい、練習用木剣2本を持ってミルの元へと急いだ。

すぐさまミルに木剣を渡して、俺は構えに入る。


「凄いやる気……」


「元気が有り余ってるからなっ!!行くよ、ミル!」


「ん…!」


────────────


「ガッ…!?」


66-8

どこが体に気を付けながらの軽い打ち合いなんだよ!ボコボコじゃねぇか!!

尚、阪神は関係無い。


「ごめん、大丈夫…?」


「久々に効いたぜぇ…!」


差し出されたミルの手を掴み立ち上がった俺は、久々にミルの強さをその身に感じた(物理)


「しっかしまた速くなってないか?それも聖剣の効果ってやつ?」


「ん…速くなってる事は実感してるけど…実際はどうなんだろう」


ミルは腰に差してある聖剣を撫でながら、んー…と考えながら唸っている。

そんなミルの聖剣を、俺は羨望の眼差しで見つめていた。


『か、カッコ良すぎる…!!氷で出来てるのか!?』


ふらっとミルの聖剣に手を伸ばして、鞘に触れる。すると聖剣から冷気が生まれ、鞘はまるでドライアイスを触った時のような痛みを指に感じ、急いで手を引っ込めた。


「あっ、もう…!アキラは敵じゃないよ…!」


俺の手を凍らせようとした聖剣を見て、ミルは少し怒りながら聖剣をペチペチと叩く。すると冷気が収まっていった。何これ可愛い。


「そう言えば、国には何の用で呼ばれたの?」


「ん、なんか聖剣使いとしての勲章を貰えるみたい」


「凄いなミルは。何だかまた遠い存在になっちまった感じするよ」


ちょっびっとだけ寂しくもあり、か・な・り!嫉妬の炎が燃えますよ…!そもそも銀零氷(ぎんれいひょう)グレイシャヘイルは俺が1番使いたかった聖剣なのにぃぃ!!


『ミルが強くなったからいいんだけども…』


ミルが強ければ俺を守って貰える…!時代はヒロインに守ってもらう主人公なのだよ!

……今人気の【なろう】ってなんだろう。ざまぁ系の次は何来るかな?


そんな事を考えていると、ミルは俺を見てクスクスと笑う。いくら俺が【なろう】フェイスだからって笑うことないだろうが…全ての【なろう】を汚したな!?法廷で会おう!


「ボクは変わらずミル・クリークス。アキラの師であり、何も変わらない。遠くなってなんかないよ」


なんか名言っぽく感じるセリフだな。ミルが言うとそう感じるのに、俺が言うと軽く感じるのは何故だろう。そもそも言う機会さえも無いんだけどね…?


「なんか…最近笑うこと多くなったよね」


「そう、かな…?変…?」


「いやいや、変じゃないよ。ただミルのヒロイン力が上がったなって」


「…?言ってる意味は分からないけど、取り敢えずありがとう…?」


首を傾げて疑問系で感謝の言葉を言うミル。その仕草さえヒロインっぽいから恐ろしい…


その後、一旦休憩の為に風通しの良いベンチへと向かい、ミルと並んで水分補給をする。マグさんの淹れてくれた紅茶旨っ!!


『さて…次のイベントは何かねぇ~…』


多分次は大聖堂関連だと予想している。どうせあれだろ?教皇様はこの国の王様と同格の権力を持ってるんだろ?んで悪役、と。その辺は【なろう】で予習済みだ。


「あ、そうだ。勲章っていつ貰えるの?」


「3日後。ルミナス聖城で勲章式をやると言われた。アキラも来て…くれる…?」


「俺は行きたいけど…その、いいの?俺他の六剣の弟子より弱いしさ…?何より正装持ってないし…」


「来て良いに決まってる。ボクは前に言ったよ?そういう事は気にしなくていいって。あと正装の事は心配しなくていい。うちにあるのを着て貰うから」


「そっ、か……うん、ありがとう!」


真剣な声と顔付きそう言われたら、参加しない訳にはいかないよな!ミルの晴れ舞台、楽しみで仕方ない。写真を沢山──くっ…!スマホが無いんだった…!!!!おのれリコスゥゥゥ!!!!

…久々に出たわ。


「あ、あのさ…!アキラ…!」


「ん?どうした?」


「えっと……その…!」


なんだ急にモジモジとして。お花摘みかな?


『いや待て!!これは…!告白イベントなんじゃないか!?だって赤面してるもん!!

ぶっちゃけ惚れられる要素は無かったが、【なろう】主人公は軽い理由で惚れられるのがお約束!つまり俺は今っ!主人公補正を発動しているということだ!!』


めっちゃ早口でそう考えていると、ミルは漸く口を開く。その声は小さくて聴こえにくいが、生憎俺は難聴系主人公じゃないんでね!ちゃんと聴こえますよ!!


「勲章式の後で着る…ドレス、なんだけど……ボクそういうの疎くてさ…?何を着ればいいか分からなくて…!その…アキラに選んで貰おう、かなって…!」


ほう、成る程。それはそれで結構大事なイベントだが……


『告白じゃなかった!!そそそそそうだよね!?だって前にミルに惚れてるか聞いたら、一刀両断で惚れてないと言われたんだから!!あー…熱っ』


顔をパタパタと手で扇ぎながら空を見つめる。っとと、ミルが返事を待っている。出来る男は判断も早いぜ!


「勿論いいよ。まぁ俺も詳しくないんだけどさ?一緒に選べばきっと良いのが見つかるよ」


「…!うん…!うん!」


まるで花が咲くような笑顔をして何度も頷くミル。くっ…!なんて眩しい笑顔だ!日照権も解決できちまうくらい眩しいぜ。


「な、なら…!早速選びに行こっ?」


「お、おう…」


俺の手を握って、屋敷へと駆け足で向かうミル。最近は年相応のミルがよく見られる。会ったばかりの頃は無表情だったのに……


『これが成長…!』


よく分からない事を言い、謎に保護者感を出すアキラは、ミルと共に屋敷の衣装部屋へと向かうのであった。

ミルは普段、屋敷では六剣仕様とは違った騎士ドレスを着ている。女の子っぽい可愛い服は滅多に着ません(鉄の意思)

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