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78話:不吉な予感

ブックマーク30を突破しました。本当にありがたいです!

俺は怪我の回復の為に、3日間の安静をした後、今まで通り稽古再開した。

その時ミルには凄く心配されたが、あんまり休んでると鈍っちゃうを理由に、何とか再開できた。


「剣闘大会の時、アキラは細剣を凍らせて剣撃を放っていた。実質あれが[砕氷(さいひょう)]と言っていい」


「だから出来る、と…?」


ミルはコクりと頷いて答えた。簡単に言ってくれるよホント…

あの時は[霧雪(きりゆき)]で冷たくなった細剣を、ジェーンの技の熱で水滴が出来たから細剣を凍らせられた。あの状況だから出来たと言ってもいい。


「それを自力、かぁ……気の遠くなりそうだな」


お手本として軽々と木剣を氷結化し、高速の2連撃を放つミルを見ながらそう呟いた。

こんな時、一億年ボタンがあれば……

あ、いや…やっぱりいらない。俺は絶対連打するし、絶対出られないからいらない。


「四の五の言ってても仕方ないよな。ふぅ~…おしゃっ!!やるぞ!!」


剣闘大会から俺は心機一転すると決めたんだ。どんなに辛くて遠い道のりでも乗り越えてやる!


「ふふっ……その調子だよ」


俺を見ながら微笑むミルを横目に、俺は[氷冠(ひょうかん)]の要領で木剣を振る。しかし[氷冠]と違うのは、氷塊を作るのではなく、氷を剣に纏うという事。これがとても難しい。


少しずつ空気中の水分を凍らせて纏っていては、気温で霜が溶けてしまう。そうなる前に霜を雪にして、雪から氷へと変えていく、、つまり人間業越えるような超スピードで剣を振る必要がある。


「もっと速く…木剣をよく見て凍らせて」


「ぐぐ…っ…!」


ミル曰く、これが出来るようになれば、剣をガード目的で振っている途中に凍らせられるようなるんだとか…


『ホント…人間業じゃねぇー…』


そう考えながらも、俺は必死に稽古を続けた。

すると、庭に誰かが走ってくる音が聞こえてきた。


「ミ、ミルお嬢様!至急六剣は集まるようにと国から…!」


そう言って一枚の羊皮紙をミルに渡した門番の男。聞き耳を立てていると、どうやら門の前に国の馬車が来ているんだとか。


「…………嘘」


羊皮紙を見て暫く黙っていたミルは、珍しく驚いた顔でそう発した。何か問題があったらしいが、俺は至って冷静だった。


『あー、次のイベントか』


理由は簡単。絶対に問題が起こると知っていたら、ある程度心の準備は出来ているというもの。どうせまだこの国にはなろう次郎がいるから、何が起きてもへーきへーき。


「アキラ…不味いことになった。一緒に来て」


「えっ…!俺も行くの!?」


てっきりこの展開は、六剣達が王様や大臣達に何かヤバい案件を言われる会議だと思ってたんだが。んで、剣闘大会優勝者のなろう次郎が呼ばれて解決~的なやつじゃないの?


「時間がない…!行こう」


「え、あ、ちょっ──」


俺の手を掴んで走り出すミル。俺は手に持つ木剣を手離して強制的に走り出す。

そのまま門へと到着すると、門の前には今にもシンデレラが出てきそうな高級感溢れる馬車が待機していた。


「乗って」


「え、俺礼儀作法も知らな──」


「いいから」


ミルに押し込まれた俺は、転びそうになったが何とか耐えて馬車の中へと入った。

中は…まぁ狭くもなく、広くもなくって言った感じだ。


「発車してください」


ミルがそう言うと、馬車は動き出した。よく分からないまま連れてこられたが、一旦座って落ち着こう。


「ミル、何があったか説明してくれるか?」


「ん、この羊皮紙にある程度書いてあるけど、平たく言えば、国の結界が何者かに壊された」


「結界か…無いと不味いの?」


ここは聖国って言うくらいだからそういうのとあるんだろうと考え、ミルにそう質問すると、ミルは表情を曇らせて口を開いた。


「…結界自体が壊されるならまだ良かった。もっと不味いのは、国の上空に【次元の裂け目】が出来た事」


「【次元の裂け目】?何それ…凄いヤバそうだけど…」


「【次元の裂け目】ってのは、前触れも無く突然出現する穴の名称……その穴からは数多の魔物が出現する…」


『また大規模な討伐戦か。今回はどんなにボスが出てくるのか……厄災の十二使徒とかが出てきたらヤバいな』


「結界が壊された事と【次元の裂け目】の発生……偶然とは思えない」


「だろうな。兎に角何が起きてもすぐに対応出来るようにしておくよ」


ミルはコクりと頷いた。

この後何が起こるかはおおよそしか分からないが、先ずは命の優先。大して強くもない俺は人命救助に力を入れよう。


───────────

アキラ達が城へと向かうなか、時間は3日前に遡る。


「どいつもこいつも無能の分際で…!」


屋敷から出ていったコルは、苛立った心を落ち着かせると共に、巡回の為街を歩いていた。クリークス家の長男として、不審な人物がいれば捕まえる。これはコルが昔から続けている事だった。


いつもならある程度街を回り、何事も無ければ屋敷に戻って稽古をする。

だがこの日はいつもと少し違った。


「………。誰だ、後を着けているのは分かっているぞ」


「おやおやおや、流石はクリークス家が生んだ大天才!僕程度じゃすぐバレちゃうか~♪」


人気の無い路地へと入ったコルは、怒りの感情を乗せて、後を着ける者へと語りだす。

建物の影からニュウ…っと現れたのは、全身黒ずくめの男。顔はフードを深く被っていて、口元しか確認できない。


「誰だと聞いている。答えなければ…この場で斬る」


「おいおいおい、落ち着けって♪僕は君に良い話を持ってきたんだぜ?」


手をヒラヒラと動かし、半笑いでそう言った男。コルは目を細め、ゆっくりと抜剣する。

次の瞬間、コルは黒ずくめの男に向かっていく高速の突きを放った。


「………」


「うわうわうわ、話も聞かないでそれはないって~」


確かに貫いた筈だった。だが奴は突如として消え、コルの背後に現れる。

この瞬間、コルは黒ずくめが確かな実力者だと悟る。


「…最後だ。お前は何者だ?」


「はいはいはい、分かりましたよ~。僕の名前はメランコリー、仲良くしてね♪」


「そうか。では斬らせて貰うぞ」


「わーわーわーっ!話を聞いてからでも遅くないって~!」


ジタバタとわざとらしく慌てるメランコリーと名乗った男。一瞬悩んだコルが細剣から手を離すと、メランコリーは嬉しそうに笑う。


「俺は気が短い。話ならさっさとしろ」


「へいへいへい。さて、僕は君に良い話を持ってきたと言ったよね?」


コルは返事をせずに黙ってメランコリーを睨む。


「僕は色々知ってるよ~?君が色々悩んでいる事とかもね。君はさぁ……



──妹ちゃんに…勝ちたくない?」


「何…?」


“妹“のワードに反応したコルに、メランコリーは薄気味悪く口角を上げた。


「僕が君に力を貸して上げる。妹にも負けず、両親からも認められるような力を…ね?」


「力を……お前が?」


「ああ……もう2度と君が負ける事は無い力を……さぁ…僕の手を掴んで?」


差し出されたメランコリーの手へと、ゆっくりと、ゆっくりとその手を伸ばすコル。


「俺は……俺は…!アイツ負けない力が欲しい…!天才さえも追い抜く力が!!」








「ああ…君の願い、きっと叶うよ…きっと、ね」


メランコリーの言葉を最後に、路地裏から2人の姿が消えた。

メランコリーが何者なのか、コルがどこへ行ったのか。それを知る者は誰1人としていない。


異世界はイベントだらけ



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