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75話:誰が優勝するか分かってた

次で四章と言ったな…あれは嘘だ!

次です。

ミルに優しく引っ張られながら部屋へと戻された俺は、ベッドに寝かされてお説教を受けた。


「もう……中々帰って来ないから心配したよ…」


「いやホント…すいませんでした…」


漫画みたいな戦いをする奴等の事を観戦したくてつい……

俺がベッドの上で土下座をすると、ミルは小さくため息を吐いた。


「……そんなに観たいなら行こう。何かあってもボクがついててあげるから」


「えっ…!ホント!?」


「ん。どのみちもう決勝だからボクも少し顔を出さなくちゃいけないし」


詳しいことは分からないけど、六剣ってのが大変なのは伝わってきた。

取り敢えず荷物を…っても細剣しかないけど、それを腰に差して観戦席へと向かう。


「平気?」


「平気平気!こんくらい何ともないよ」


若干歩くのが遅い俺に合わせて隣を歩くミル。ホント優しい奴だ。俺は良い師匠に恵まれたな。


「もう決勝始まるな」


「ん。アキラどっちが勝つと思う?」


「勿論ジェーン!!──って…言いたいんだけどなぁ……勝つのはベリタスだろうな」


「…?根拠は?」


「勘」


「えぇ……」


まぁ補正が掛かってるであろうベリタスが今大会を優勝するだろう。所謂主人公補正、ってやつだ。俺にはそんなの無かったけど…まあ良い試合が出来たからよしとする。


──ここまで六剣を2人撃破したダークホース!このまま3人目も撃破し、優勝か!?ベリタス・ブレイブ!!


「応援、ありがとー!!」


してねぇよ。


観客に向けて爽やかな笑顔で手を振るなろう次郎。とても腹立たしい顔だ、一発殴らせろ。


──対するは!安定の強さを見せ付けた六剣・フラム家三男!敗れていった六剣とは違う結果を見せてくれるのか!ジェーン・フラム!!


こりゃまたプレッシャーの掛かるアナウンスだ…やっぱ色んな意味で六剣って大変だな。


「敗けんなよ、ジェーン…!」


俺は少々困り顔のジェーンに向けて応援をする。もしかしたらもしかするかもしれない。ジェーンが勝ってくれる事を祈りながら、俺達は決勝戦を観戦した。


「決勝戦最終試合!──初めッ!!」


──────────


「クソッ…!!」


そこは闘技場中央へと繋がる選手専用の通路。そこで1人の男が壁を殴り付けていた。

真っ赤な髪で背中に大剣を背負う男、それは紛れもなくジェーン本人だった。


「何も…出来なかった……ッ…!」


そう呟いたジェーンは歯を食い縛り、拳を強く握り締める。


決勝戦でベリタスと当たったジェーン。ベリタスの準決勝戦を見ていた彼は、最初から本気で動いていた。それほど迄に強い相手だと悟ったからだ。

しかしジェーンの放った技の全てを見たことも無い剣術で相殺され、更に反応不可の反撃が襲ったのだ。


「あんな攻撃…どう対処しろってんだよ…!」


完全な実力の差で倒された、それはジェーンも理解していた。だがとても納得出来るような試合ではなかった。


「敗けちまったな、ジェーン」


「っ……兄貴…」


通路の奥から聞き慣れた声がし、振り向けばそこにはフラム家当主、エクス・フラムがいた。フラム家の名で出ている以上、こんな試合は許されない。それなのに……オレは…!


「とんでもなく強い相手だったな!!今回は残念だった!だがこんな所でお前は終わらねぇだろ?」


「っ…!当然だ!フラム家の名に恥じぬ男になってやる…!」


「その意気だ!!期待してるぞ、ジェーン!!よぉし!湿ったれた話しはこれで終わりだ!旨いもん食いに行くぞ!」


オレの肩に手を回して豪快に笑う兄貴。オレが引きずらないように明るく接してくれる兄貴にはホント感謝している。


「ありがとな…兄貴」


「なんだどうした!ほら行くぞ!!」


────────────


ルミナス剣闘大会から暫く経った。結局主人公補正を折ることが出来なかったジェーンは、ベリタスに敗北してしまった。

表彰台で満面の笑みで手を振ったなろう次郎。マジでイラッとした。まあ嫉妬だよね。


それは兎も角として、今俺はクリークス家の屋敷にて新たな[終雪]の習得に励んでいた。

次の習得目標は[砕氷(さいひょう)


「セイっ!!ハアッ!!」


「力任せじゃダメ。[砕氷]は[霧雪(きりゆき)]と[氷冠(ひょうかん)]の合わせ技と言っていい」


[砕氷]は自身の剣を凍らせて放つ2連撃技。[氷冠]で凍らし、[霧雪]で高速で撃ち込む。

今は高速で剣に氷を纏う練習と共に、2連撃の練習をしている。


「考えるんじゃなく、体で覚えて。全てを均等に扱う…どれも疎かになってはダメ」


これはかなりの練習期間がいるな。俺をもう一度弟子として受け入れてくれたミルに報いる為にも気合いを入れて取り組まなくては。









「アキラ、今日はここまでにしよう。お疲れ様」


「はぁ…!はぁ…!そう、だな…!」


夕日が沈む時間帯。今日の練習を終えた俺はタオルで額の汗を拭う。

当然習得は出来ず、今日では同時に使用する事が出来なかった。だが一朝一夕で習得できる程甘くないのは分かっていたので、根気よくやっていこう。



屋敷の中へと入った俺達は、そのまま風呂へと向かう。稽古の後に入る風呂はマジで最高。


「あっ……」


「ん?どうしたミル──」


考え事をしていると、隣を歩いていたミルの脚が止まった。ミルの視線の先を俺も見ると、そこにはコルさんが立っていた。


「何だ、まだ無駄に稽古をしていたのか?」


鉢合わせると同時に嫌な事を言ってくるコルさん。ミルは何も言い返さずに俯いている。


「それにそこのお前、歴史あるルミナス剣闘大会で敗けたんだってな?挙げ句クリークス家に泥まで塗って…この恥さらしめ!!」


それに関してはぐうの音も出ないです…ホント、いやマジですいませんでした…!


「所詮は無能。お前が教えてた所で無能が育つだけだ。弟子1人もまともに育てられない貴様はやはり落ちこぼれだな」


「………」


何も言わず、ただ黙って俯くミル。

ミルは言うほど無能ではないと思うが、コルさんの言葉でそう思い込んでいる可能性がある。もはや洗脳に近い。


「俺のせいでホントすいませんでした。行こう、ミル」


「え……あっ──」


俺が敗けた事でミルにもクリークス家にも恥を掻かせたのは本当だ。俺はコルさんに深く頭を下げた後、ミルの手を掴んでその場から離れた。


コルさんとミルを一緒にするのは良くない。たまに2人が一緒の時を見掛けたが、今のようにコルさんがミルを一方的に怒鳴る姿を見た。


『こんなに言われちゃミル本人に自信が無くなる訳だ』


今後の展開的に考えるとコルさんと切り離すような事は良くないんだろう。

だけど……こんなの良くない、よね…?


俺はそんな事を考えていたせいで、後ろから僅かにした声に気付く事は無かった。











「チッ……気に入らないな。無能の分際で」


エクス・フラム 21歳

フラム家長男であり、現当主。六剣1力のある剣士。ジェーンと同じ赤くて短い髪をしてます。

使う剣は大剣。


クエイ・フォッシル 47歳

フォッシル家現当主であり、六剣1自然のある場所で強い。ブレイ・フォッシルの父であり、六剣最年長。

使う剣はクレイモア。聖剣に選ばれた人物でもある。


レイヴ・フォールコン 27歳

フォールコン家現当主であり、六剣1奇抜な技を持つ。影が薄く、危ない事を考えてそうな顔だが、凄い真面目。変な風に笑う癖がある。

実は剣闘大会には妹が出ていたが、クリン・ブライト に敗けている。

使う剣はサーベル。聖剣に選ばれた人物。


ルミエール・ブライト 36歳

ブライト家現当主であり、六剣最速の剣士。20代前半にしか見えない程の美貌だが子持ちであり、クリン・ブライトの母。明るくて接しやすいお姉さん。

使う剣はエストック。

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自分にも言ってそうだなぁ
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