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72話:約束の戦い

ブックマーク、ありがとうございます!たとえ栞目的でも嬉しいです!上手く行けば50も夢じゃないかも。

3回戦で受けた傷を治療した後、水分補給を完了させたらすぐに4回戦が始まる。

次の相手はジェーンだ。強さは見ていて分かる。明らかに俺より上だ。


「だからって敗けるつもりは無いけども。ふぅ……うしっ!!」


ゆっくりと深呼吸をした後に、頬を2回叩いて気合いを入れる。

ジェーンにどれだけ食らい付けるか、それは俺がどれだけ強くなったかを示す。技は割れてしまっているが、それでも俺の全部を乗せて勝ってみせる。


──ここまで圧倒的な実力を見せたフラム家三男!!このまま第2ブロックを勝ち進めるのか!!ジェーン・フラム!!


──そして対するは…!誰がここまで勝つと予想出来ただろうか!新情報によるとクリークス家次期当主、ミル・クリークスの弟子!クリークス家からの刺客、テンドウ・アキラ!!


『なんか凄いアナウンスなんだが…?観客も沸いてるし…手の平返しが酷すぎるだろ』


あれだけ嗤ってた奴等に応援されるのは何だが心に引っ掛かるが…今はこの試合に集中だな。


「よぉアキラ!!約束、守ってくれたんだな!」


「ああ!ジェーンと戦うためにここまで頑張って来たぞ」


「へへっ!んじゃこの勝負…どっちが勝っても恨みっこ無しだからな!」


「勿論っ!掛かってこいや!!」


俺の言葉を最後に、お互いの目付きが変わる。自然と握る剣に力が入るのを感じた。


「では第2ブロック、4回戦最終試合──初めっ!!」


審判の開始の合図と共に俺はカクカクと高速で進み、相手を翻弄。先ずはどんな出方をするか確認をする。


「やっぱ速ぇな!!──オラッ!!」


俺の動きを完全に捉えていると分かる一撃が横に向かって放たれる。流石ミルと同じ六剣の家系と言ったところだろうか。

あの大剣からの攻撃に当たれば、完全に俺は力負けする。アレは絶対に当たってはいけない。


俺はジェーンの横払いを180度前後開脚で回避。まるでバレリーナのようだが、上段蹴りが出来るようになるには必須の項目。

俺はそのまま追撃が来る前にジェーンの膝を狙って水面蹴りを放つ。


「マジかっ!?」


驚きの声と共に体制を崩したジェーン。この隙にすぐさま立ち上がり、同時に下から斬り上げる。

だがジェーンは大剣をまるで盾のように扱って俺の攻撃を防ぎ、そのまま突進してきた。

この突進はいつものようにバックステップでは回避は出来ない。


「それなら…!──はあぁぁ!!」


「っ!!」


俺は敢えて突進してくるジェーンに向かって走り出す。ぶつかる寸前にジャンプし、盾にしていた大剣を蹴り、突進の威力を殺すと同時に更に上へと飛躍する。


本来なら逃げ場の無い上空へ跳ぶのは危険だ。だが力差がある俺には重力が必要だった。


「[霧雪]ッ!!」


下で既に構えに入っているジェーン目掛けて高速の刺突攻撃。だが普通の[霧雪]では意味が無い。俺は腕から背筋に負荷が掛かるのを承知で、通常より2倍の突きを放つ。

向こうが力なら、俺は手数で勝利を掴んでやる。


「おいおい、スッゲェな…!ならオレも──敗けられないよな!!」


「っ!!な、嘘だろ!!?」


突然体制を変えたジェーン。本能的に何か来る、そう察知した瞬間だった。

突如ジェーンの大剣は燃え上がり、身を焦がすような熱風と共に刺突と共に落ちてきた俺に向けて振り下ろされる。


『グッ…!!受け流せ──ないっ!!』


激しく燃え上がる大剣。そして渾身の一撃が合わさり、回避が出来ないのは勿論、威力が高く過ぎて受け流しにも限界があった。これ以上細剣に負荷を掛けたら完全に折れる。


「グッ──ぐあぁぁぁぁあ!!!」


皮膚が焼けるような痛みと共に、俺はジェーンの振り下ろしに負けて激しく吹き飛ばされる。

会場が広く、場外負けが無い事が幸運。それほど迄に激しく吹き飛ばされてしまった。


口に広がる血の味。俺はそれを吐き出してジェーンの方を見る。

先程治療して貰ったばかりだと言うのに、またしても内臓を傷付けてしまったようだ。


「アキラ選手、まだ戦えるか?」


俺の肩を叩き、確認を取る審判。俺はそれに小さく頷き、細剣を杖代わりにして立ち上がる。

全身に感じる激痛。体が悲鳴を上げているのは明白だった。


だがここからだ。

ここからが俺の本領発揮。スキルによるバフが始まる。


「マジかよ…!アレ食らって立つか普通……面白い奴だな、アキラは…!」


驚きの後に好戦的に笑ったジェーン。

ああ……楽しい。心が熱く燃え上がるのを感じる。ミル以来無かった感情だ。


「ジェーン……行くぞ」


「っ…!ああ、来い!!」


俺はジェーンに細剣を向け、睨み付けるかのような鋭い視線でそう発した。

俺の宣戦布告を受け取ったジェーンは、身構えて好戦的に笑みを溢した。


───────────


「ッ……!ハァッ!!」


アキラの宣戦布告から全ての動きは比べ物にならない程変化した。

まるで獣のように激しく、それでいてしなやかで冷静な動き。その表情はとても楽しそうにしていて思わず釣られて笑みが出る。


まさか[真火(しんか)]を使う事になるとは……ハッキリ言って最高だ。正直ここまでアキラがやれるとは思っていなかった。


「堪らないなぁ…!この感覚!」


アキラとの試合が楽しくて仕方ない。出来ることならいつまでも打ち合い続けたい。そう思える程オレの心は燃え上がっていた。


だが今は大事な剣闘大会の真っ最中。フラム家として敗ける訳にはいかない。

オレはこの試合で全てを出しきる勢いでアキラを迎え撃つ。









「始まった」


「…?何が始まったの?ミルちゃん」


フラム家の者から強烈な一撃を食らったアキラ。だが持ち前の根性で立ち上がったアキラは、額から血を流しながら笑った。

この顔は前にも見た事がある。こうなったアキラはとても強い。


「アキラは追い込まれる程強くなる。…そして本人が燃えるほど愉しいと感じれば、更に強くなる…それがアキラ」


「へぇー?やっぱ面白そうな子だね。1度会って話してみたいなぁ。アキラ君は…熱血系?」


「違うとは…思うけど…」


「なら俺の弟とも仲良くなれそうだね」


顎に手を当ててニィ…と笑うグリシャ。この顔は良からぬ事を考えている顔だ。


「そのままアキラを引き抜いたりしたら……斬るから」


「わっ!わっ!そんなんじゃないって!」


ブンブンと首を振って必死にそう言うグリシャ。ボクは無言で手に掛けた細剣から手を離す。


「はぁ……兎に角今はアキラの試合に集中したい」


「そ、そうだね…」


ボクの声色で察したであろうグリシャは、饒舌な口を閉じて静かなった。

ようやく静かなったグリシャにため息を吐き、ボクは中央で格上相手に奮闘するアキラを見つめる。


『頑張れ、アキラ…!』


──────────


『クソ…!攻め落とせない!』


自身の限界レベルまで引き上がったスピードを武器に、高速で刺突や斬り払いを仕掛けるが、ジェーンは巧みに大剣で防ぎ、すぐさま強烈な反撃を繰り出す。

だが俺も同じ一撃食らう程愚かではない。[逃走Ⅳ]を使い、高速で逃げるように回避する。


俺の全てを出しきったこの状況で攻めきれていない。圧倒的な火力不足だ。せめて殴る事が出来るなら話は変わるのだが、、


「それなら……隠し球だ!![氷月刃(ひょうるいが)]ッッ!!」


ミルに隠して練習していた[氷冠]。その過程で思い付いた技。名付けて[氷月刃]。氷塊を生み出すのではなく、三日月形の鋭い氷の刃を飛ばす技。

今まで1度も成功した事がない技であり、ミルとの戦いでは使う事が無かった技。それを今、ジェーンに向かって飛ばす。







「ッ……!![熾火(おきび)]!!」


「そんな…!?………ははっ、マジかよ」


まるで熱しられた鉄のように紅く染まった大剣で俺の[氷月刃]を真っ二つに切断した。

俺が必死になって放った技を、軽々と越えてくるジェーンに、俺は思わず笑ってしまう。


「今のは危なかったぜ…!やるな、アキラ!」


「そっちこそ。最高だよ、ジェーン…!」


一筋縄ではいかない戦い。それが俺をより一層燃え上がらせ、心を昂らせる。

俺は口元の血を指で拭い、俺は駆け出した。


──絶対に勝ちたい…!


その強い感情と共にジェーンに向かって飛び掛かった。

相性がねー……悪いんだよね…


[氷月刃](ひょうるいが)

ミルの[氷涙牙]と同じ名前で、実は意識している。

[氷冠]の練習中に思い付いた技であり、薄い氷の刃を飛ばす技。形は三日月のような形をしている。

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