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70話:【なろう】の力、お借りします!

総合評価100、評価ポイント50、ブックマーク25……嬉しくて涙がで、出ますよ…!

第2ブロックではジェーンの実力がありすぎて他の人達が霞んで見える。

そんな中、あっという間に俺の順番が回ってきた。俺はいつものように頬を叩いて気合いを入れて入場する。


──奇跡的に本選出場が決まったラッキーボーイ!テンドウ・アキラ!


その通りではあるが酷い言い方だ。

他の参加者なら会場は沸き立つ筈なのだが、拍手や歓声は少なく、逆に笑い声なんかがチラホラ聴こえてくる。


「はぁ………最悪だ」


ある意味この展開は主人公のようだが……ここから挽回出来るとは限らない。それだけの力が備わっていないからだ。


「よぉ!よろしく頼むぜ、ラッキーボーイ君」


最後の言葉は無視して俺は相手の剣を確認する。今回の相手はロングソードで、俺の細剣よりリーチはある。距離を詰めて戦わなくては危険だ。


「では1回戦8試合目──初めっ!!」


審判の掛け声と共に、俺と相手は同時に動き出す。先攻で相手がロングソードで横払いを仕掛けてくる。俺はその剣を捉え、前方宙返りで回避する。


「んなっ…!?」


本来なら自殺的な動き。そんな事をしてくるとは思ってもみない相手は驚きの声と共にバックステップで後退する。

そんな距離を与えるような事はさせない。


「やァッ!!」


地面を蹴り、相手との間を一気に詰める。ロングソードは振るわせない。振るわせる隙も与えない。そんな勢いで攻め立てる。


相手も負けじと右下から斜めに斬り上げるように振るったロングソードを細剣の樋を使って受け流して力を逃がす。

そのまま相手を足払いで転倒させ、相手の顔に細剣を向けた。


「ま、参った…!」


「勝負あり!!勝者、テンドウ・アキラ!!」


参ったの声を聞いた審判は、大きな声で俺の勝利を宣言する。

しかし会場はシーン…としている。それほど弱いと思われてたのは凄くショックだが、仕方ないといえば仕方ない事だ。


俺は細剣を鞘に納め、相手に一礼してから通路へと向かって歩きだす。

緊張と高速で畳み掛けたせいで息が上がっている。俺は歩きながらゆっくりと深呼吸をし、心臓に手を当てて目を閉じる。


「ミル…見てたか?俺は勝ったぞ」


まるで死者への言葉のようになってしまったが、ミルはバリバリ生きてる。今ここにミルがいたら『勝手に殺さないで…』と無表情で怒るだろうな。


───────────


「勝負あり!!勝者、テンドウ・アキラ!!」


弟子であるアキラは会場の雰囲気に呑まれる事は無く、無事1回戦を突破した。


「よし…!」


実にアキラらしいトリッキーな動きで勝利を掴んだ事が嬉しくて、ボクは思わずそんな声を上げた。


「はえ~…凄い動きすんなぁ~」


隣にいるグリシャも実に間抜けな声で驚いている。

バトルロワイヤルの時はどうなるかと思ったけど、今はこうして調子を取り戻したから一安心だ。


「ミル殿のお弟子は珍しい動きをしますな。あれもミル殿がお教えに?」


「違う。ボクが教えたのは剣術と[終雪]だけ」


六剣の一角であり、聖剣に選ばれた剣士であるクエイ・フォッシルの質問にそう短く答える。彼は最年長で1番背が高い人だ。おまけに顔が渋い。


「オレはアイツの動き好きだぜェ!!漢らしく突っ込む姿が最高だッ!!」


「……そう」


この暑苦しい男も六剣であり、フラム家の当主であるエクス・フラム。嫌いじゃないけど…暑苦しいから苦手ではある人物だ。


「しかしまだ粗さも見える…そういう奴は鍛え甲斐がある…」


そう言ったのはレイヴ・フォールコン。この人物も六剣であり、時々『フフフ…!』と笑う変な人。でも聖剣に選ばれている人物でもある。


「六剣は変な人ばっかり…」


「あっはは、確かに癖が強い人は多いわね」


長いブロンドヘアーを風に靡かせながら同調したのはルミエール・ブライト。ボクと同じ女性剣士であり、ボク以上に速い剣術を扱う。


「今回の大会は荒れそうね」


「ん…今年は六剣の関係者が必ずいる…」


「誰が勝つか、楽しみね」


「ん…」


誰が勝つかは正直どうでもいい。ボクはアキラを応援する、それだけだ。

ボクは心の中でアキラの勝利を祈り、瞳を閉じた。


────────────


何とか1回戦を突破した俺は、心拍を整えて鋭気を養う。第2ブロックでは最後だった俺。そうなれば2回戦の最初はジェーンなのだが、またしても圧勝だった。


「第2ブロックではジェーンが1番強い、かな?」


皆強いは強いのだが、どうしてもミル基準になってしまう。異世界物ではよくある『師匠が強すぎて他が弱く見える』という現象があるが、これマジだった。



その後もちゃくちゃくと順番は巡り、いよいよ俺の2回戦が始まる。相手は30cm程のショートソードを二刀流で扱う剣士で、現世でも稀にいる奴だ。なので当然対策は出来る。なんせ剣道やってたんでね!!


──運と実力を兼ね備えた高速剣士!テンドウ・アキラ!!


そんなアナウンスと共に入場。観客は疎らな拍手で、あまり歓迎のムードでは無さそうだ。

ま、まぁ?俺はメンタル最強(自称)なので平気だけど。


「よろしく頼むよ」


「此方こそ」


今回は普通に挨拶してくれたので、俺は無視せずペコリと頭を下げる。


「では2回戦4試合目──初めっ!!」


審判の振り下ろされた手と共に動き出す両者。相手は2本の剣を巧みに扱い、連撃を繰り出す。それを俺は細剣と体を上手く動かして回避し、僅かな隙を見付けては突き、または蹴りを繰り出す。


「はぁ…!はぁ…!」


お互い決め手に欠ける戦い。両者速さ重視の戦い方であり、隙をスピードで埋めてしまうせいで決定打が無い。


『さて…どうするか』


相手のペースを乱す事が出来れば……いや、待てよ?いい方法がある。偉大なる【なろう】の先輩の力を使う。



「キンキンキンキンキンキンキンキンキンキン!!」


「っ!!?」


剣と剣がぶつかり合う金属音。

…を、自らの口で発する。その突然過ぎる言動に一瞬ペースを乱し、困惑の表情を浮かべる。

いいぞ、もっと困惑しろ…!ここから更に追い討ちだ。


「斬撃――斬撃――斬撃――。


   薙払――薙払――薙払――。


     刺突――刺突――刺突――。


 斬撃、斬撃、斬撃、斬撃、斬撃――薙払、薙払、薙払、薙払、薙払――刺突、刺突、刺突、刺突、刺突――。


         斬斬斬斬斬斬斬斬薙薙薙薙斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬突突斬斬斬斬斬薙薙薙斬斬斬斬斬斬斬斬突突突突突斬斬斬斬斬斬斬薙薙


 斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬刺刺刺刺刺刺刺刺刺刺刺刺斬斬斬斬斬斬斬斬斬薙斬薙斬薙斬薙斬薙斬薙斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬ッッッ!」


「や、やめろ!!」


攻撃を中断し、バックステップで下がった相手はそう叫ぶ。その目は恐怖…よりも狂人を見る目だ。


「このっ…狂人め…!」


「狂↑人↓?そう!私は【なろう】の狂気にいるのデス…!」


左手の指の全てを器用にピクピク動かし俺流の威嚇をかます。それを見た相手は更に表情を歪ませる。


『くくくっ…!精神攻撃は当たり前だからなぁ…!』


異世界に限らず、精神攻撃は基本中の基本。使わない方がバカだ。

困惑している隙に、俺は一気に駆け出した。


「くっ…!この野郎…!!」


「セリャッ!!」


俺の突然過ぎる突撃に、ほんの僅かに反応に遅れた相手。振られた双剣を体を反らして回避し、そのまま相手の右手を上へと蹴り上げる。


空に舞う相手の剣。剣1本になった相手に向かってトドメの[霧雪]を放った。

当然そのままでは刺してしまう。故に寸前で止め、審判の顔を見た。


「し、勝者!テンドウ・アキラ!!」


呆然とする観客をよそに、俺は高々と右拳を空に向かって勝利宣言をした。

九頭七尾先生、年中麦茶太郎先生リスペクト…です(目線反らし)


今さらですが、アキラ並びにミルが使っている細剣は、レイピアではございません。凄く細い…両刃の剣です。

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