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61話:鍛練

まさかいきなり2人もブックマークが増えるとは……しかも歴代最高のアクセス数を記録しましたし…本当にありがとうございます!

「お、おおぉ!!?今出来たんじゃないの!?」


「うん、今のが空気中の水分を氷結させる動きだよ」


ミルと稽古を続けて早1週間が経過し、俺は遂に[氷冠(ひょうかん)]の第1ステージである空気中の水分を氷結することに成功した。


「でも…小さくね?」


「……そうだね」


これは…コンビニとかで売ってるロックアイス並に小さい氷だな。あの日ミルが俺に放った氷塊なんて比べるのもアホらしいサイズ比だ。


「でも水分を凍らせたのは凄い事。アキラは覚えるのが早い」


「………ミルはどれくらいでここまでこれた?」


俺が少し震えた声でそう言うと、ミルは俺から目線を反らして指を2本の立てた。


「2日…!?」


「違う……………2刻で…出来た」


「………そう」


2刻、それは現世で言うと2時間を表す。俺が7日掛けてここまで来たにも関わらず、ミルは2時間で…?しかも『巨大な氷塊を作れた』とミルは補足した。圧倒的センスの差を見せつけられたな。


「あ…えと……アキラは[氷冠]だけを練習してた訳じゃない。3分の2はボクと打ち合いをしていた……だからその…」


やめてくださいしんでしまいます。

気を使わないで欲しい…もうグサグサ刺さってくから…ホント勘弁してください。


「………あ、そうだ…アキラ、実はもうすぐ剣の大会があるんだけど……出てみる?」


「剣の大会?なにそれ」


「この国には六剣の子孫がいる…ってのは前に話したよね。六剣が生まれた年から今も続く、剣のお祭りみたいなのがある……それがルミナス剣闘大会」


あー…異世界ではお約束の大会か……ってなると必然的になろう太郎のような奴、またはその仲間になるような奴が参加するだろう。めっちゃ大会レベル高くなる~…


「それってミルも出るの?」


「出ない。と言うより出れない。出れるのは20歳以下っていう規定があるんだけど……1度優勝した者は出られない」


サラッと言ったけど優勝してるじゃん。まぁミルレベルなら当然なんだろうが。もしミルが出るならまた戦いたかったんだけどな。


「それで…どう、かな…?」


「勿論出るよ!楽しそうだし」


新たな【なろう】系に会えるかもしれないし。………いや会いたくないな、モブ又はカモにされちゃうし。


「…!そっか、なら楽しみにしてる…!」


「お、おう…?どうした急に」


「弟子の頑張りを楽しみにしない師はいない」


やめてくれよ…簡単に負けられなくなるじゃんそんなの…。期待が高すぎる…俺がそんな強くないって誰よりも知ってる筈なんだがなぁ…


「剣闘大会が始まるのは丑刻……それまでお祭り…一緒に回らない?」


「おっ!祭りか、いいな。こっちはどんな感じなんだろう」


祭りなんて暫く行ってないな。最後に行ったのは中2の頃だったか。高校以降は恋人と行こうとか考えてたなぁ…そのせいで30歳まで恋愛経験が無いまま人生終了してしまった。


『あれ…?これ……俗にいう“デート“って…やつなんじゃないか…!?』


「…?どうしたの…?」


「あうぇ!!?なんでもない!ってそろそろ稽古再開しようよ!」


「ん…分かった」


────────────

「そこ、隙がある」


「ウガッ…!」


大会に備えて対人用の剣を鍛える。相変わらずミルの攻撃は鋭くて速い。上を防げば即下を。防いでも防いでもキリがない連擊。


何発もミルの攻撃を受けた俺の体は段々と鈍くなり、防ぐのが難しくなっていく。


「そんなんじゃ剣闘大会で負けちゃう…頑張って」


「つってもなぁ…!グッ──そんな、簡単じゃ!ないんだ、よねッ!!」


普段と何等変わりないペースで話しているミルに、俺は着いていくのでやっとだ。

覇気の無い口調だが、木剣から放たれる斬擊はとんでもねぇ程ヤバい。殺しに来てるのかと錯覚するレベルだ。


「はあぁぁぁ!!」


手首を超高速で動かし、木剣を特殊に動かす。そして生成された氷の礫を飛ばす。それはとても小さな氷で、[氷冠]とはとても言えないサイズだった。


「…!」


飛ばされた礫を完全に捉えているミルは、器用に木剣の腹で弾き返してきた。

俺は少しでも今ので隙が出来ればと願い、間を入れぬ追撃をしようと動いていたせいで返された礫に反応出来なかった。


「いてっ!──イ“タ“ッ“」


「あ……」


おでこに当たった礫でまず1回。次にミルの袈裟斬りで2回。更に追撃で右薙ぎで3回。合計3回の攻撃を僅か2秒でやられた。実戦なら死んでましたね。


「ごめん、つい……立てる…?」


「イタタ……あー平気平気。むしろ気持ちが良い程にやられたわ」


差し出された手を掴み、痛む横腹を擦りながら俺は立ち上がる。あの細腕でなんであんな威力が出るのか…コレガワカラナイ。


「っと………あーごめんミル、ちょっとお手洗い行きたい」


「ん、ならここで待ってる」


さっきから行きたいと思っていたので、俺はミルに断りを入れてから屋敷へと向かった。








「ヤバい漏れ…漏れ…──ないっ!!漏れねェのかよ!!一本取られ………あ?」


いつも通り一人でバカをやっていると、何処からか男の声が聞こえる。どこかで聞いた事のある声だ。


「……こっちか?」


俺は何となく気になって、声のする方へと足を運んだ。廊下を曲がった先にあるのは屋敷裏の訓練所…誰だろう。




「ハアッ!!はぁ…はぁ…」


『コルさんだったのか…』


訓練所から聞こえた声の正体はミルの兄であるコルさんだった。上着を脱いで上半身裸の状態で真剣を振っていた。目を凝らせば全身汗まみれ。それほど激しい稽古をしていたのが分かる。


「クソッ!何で届かねぇ…!アイツが届いて俺が届かないなんてありあり得ねぇ!!」


握り拳を自身の腿に叩き付けて苦しそうにそう言ったコル。その表情は焦りと屈辱、劣等感が見て取れた。やがてコルは大きなため息をした後に稽古を再開した。


「…俺も行くか」


俺も負けてられない。俺だって強い主人公のような人間になりたいんだ。その為ならいくらでも頑張れる。俺はコルに影響されてか、いつもより遥かに激しく稽古に励んだ。


コル・クリークスは弱くはありません。兄より優れた妹が存在していただけです。

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